JAPANのホーム用ユニホームでローンデポパークのマウンドで投げた大谷翔平(31、ドジャース)をみて、疑念が生まれた。いや、期待感よみがえった、という表現が適切かもしれない。
大谷はワールドベースボールクラシック(WBC)で投手として、本当に登板しないのだろうか?
もしかして、投げるのではないだろうか?
今大会はDH専任と公表されている。しかし、ドジャースの先発投手として開幕以降、ローテーションをまわるために大会期間中も投手調整を併行しなければいけない。投球練習のスケジュールは、大谷とドジャースのプランだろう。3月12日(日本時間13日)、ライブBPに登板。4イニングを想定して、59球。1次ラウンドの東京滞在中は、神宮球場を貸し切ってライブBPを行うなど、「ドジャースの投手・大谷」として、順調に球数と投球強度を上げている。
だからこそ、思う。WBCで投げられる状態になるならば、投げない選択肢が二刀流選手にあるのか?
公式練習後、大谷は会見に出席。日米韓、ドミニカ共和国、ベネズエラの各国メディアからの質問に答えた。
今大会で投手として登板することは、本当にないのか?
その問いに大谷は迷いなく答えた。
「今のところはないですね。それが球団との約束でもありますし、快く送り出してくれた球団に対しての誠意じゃないかなという部分はあります」
つまり、昨年からロバーツ監督がウインターミーティングなど公の場で発言している「大谷はWBCで投げないでほしい」という考えは、球団の総意。大谷が熱望するWBCへの出場は、ドジャースとしては「DHのみ」が条件だった、と考えられる。だからこそ「約束」を守り「誠意」を示す。大谷と球団に信頼関係があるからこそ、何度も話し合いを重ねて、両者が納得した。
「オフェンス面でしっかりとまずは貢献できればいいと思いますし、もちろんケガ人が何人出るかというのは全く予想できないことではあるので(可能性が)全くのゼロということは何事においても言いたくはないですけど、現状だと(投手出場は)ないんじゃないかな、と思っています」
「今のところ/現状では」と前置きがありながらも完全否定した。それでも期待してしまう。決勝戦で侍ジャパンが1点リードで迎える九回。準決勝、決勝で投手は使い果たしている。あるいは、球数のルールで投げることができない投手がいる。そこで「ピッチャー、大谷」。2大会連続で優勝のマウンドにいる姿を想像してしまう。
もちろん、大谷がドジャースとの「約束」を守らないとか「誠意」を示さない、ということがいいたいわけではない。そもそも野手登録のため、登板することはWBCの大会ルール上、現状では不可能だ。ただし、『事前に許可がある場合』なら投げることができる。ルールには『事前』が何日前か、試合開始の何時間前か、細かい条件は明記されていない。準決勝の後に申請すれば間に合うのか。それは不明だ。
そして、今大会で話題になっている保険問題もある。大谷はキャンプで「保険の兼ね合いのフィジカルはやってもう通っているので問題ない」と発言したが、保険適応の承認が「投手出場を含む」の内容だったかは定かではない。もちろん、万が一、大谷がWBCでの投手を直訴した場合、侍ジャパンはごく限られた時間でドジャースを説得する、という難題がある。
<1イニング、20球まで>
仮にそんな条件ならば、ドジャースは投球を許可してくれないだろうか。保険問題もクリアできるかもいしれない。そんな“妄想”を巡らせ、日本の準々決勝までの日々を過ごしている。
少なくとも大谷は投げられるコンディションにある。可能であるならば投手としても出場したい(はずだ。理由はこちらを参照)。
大谷が発言した「今のところは」という表現は、裏を返せば『先のことは、まだ分からない』といえなくもない。つまり“あるかも”と行間を読むのは、曲解だろうか。
12日のライブBPでは、中村、坂本、若月の捕手3人全員が大谷の球を受けた。さらに井端監督は神宮球場でのライブBPもローンデポパークでの投球も直に視察している。マウンドに立つ背番号16をみながら「投手・大谷」起用のイメージは、果たしてゼロだっただろうか。
「僕が投げなくても素晴らしいピッチャーがいますし、それは東京ラウンドで見てきて、そこに対してはすごく僕自身も自信を持っている」
大谷が後輩をたたえるように次世代を担う才能が侍ジャパンにいる。これからの球界を背負う若手に託したい。そんな思いもあるのではないだろうか。
私の妄想が実現するかはさておき、日本代表は準々決勝に臨む。ベネズエラ代表の先発は、レンジャー・スアレス投手(30、レッドソックス)。大谷は対戦成績がポストシーズンを含め6打数1安打(二塁打)、2三振。
「チームとしては見たことないピッチャーが出てきたりとか、やったことのないバッターとやる。そこに早くアジャストできるかどうかが一番、お互いにとって難しいところでもあり、勝利の鍵を握るポイントなのかなと思っています」
登板の可能性はまだ考えない。今は、ベネズエラ投手陣の攻略に集中する。
