試合開始1時10分の予定のドジャース対ナショナルズ戦は、11時くらいから雨が降り出し、早々と遅延が発表された。
外に出るのもためらうような土砂降りの中、ブルペン捕手とともにグラウンドに姿を現したのは、大谷翔平。ナショナルズの警備スタッフも思わず目を丸くし、「この雨なのに?」と驚きを隠せない様子だった。
キャッチボールから遠投、そして平地での投球を約15分。雨脚が弱まる気配はない。
通常は試合前の練習にゲストパスを持った観客がグラウンドに入り、守備や打撃練習を見守るが、さすがにこの雨なので、誰もいないよね、と思いきや、ずぶ濡れで大谷の練習を見守る家族が。
ドジャースの帽子をかぶった少年とその両親が傘も刺さずに、練習を食い入るように見つめていた。バージニアビーチ在住のコクランさん家族。8歳のケインくんは地元Tidewater Drillers でショートを守る野球少年だ。ドジャースファンの息子の願いを叶えるために、家族で観戦に訪れていた。
ジョーさんとケインくんはパーカーのフードをかぶっていたけれど、リンジーさんは雨をまともに受けていた。1秒も早くこの場を立ち去りたそうだったけれど、「ドジャースの選手の練習が見たい」という息子の願いを聞き入れて、大谷の練習が終わるのを待っていた。それはそれはかわいそうなくらいずぶ濡れだった。ちなみにずぶ濡れになった兄Averyさん、姉Presleyさんは屋根のある場所に避難していた(ある意味、賢い判断だと思う)。
練習を終えた大谷は、普段ならそのままダグアウトへ戻るが、この日は違った。雨の中で見守り続けていたケインくんのもとへ駆け寄り、写真に応じると、手にしていたボールをそっと手渡した。
突然の出来事ににっこり笑顔のケインくん。リンジーさんが感極まって涙を浮かべ、ジョーさんは、はやる気持ちを抑えながら冷静にシャッターを切っていた。
「全部が最高だった」
ケインくんのうれしそうな表情に、ずぶ濡れの家族全員が幸せになり、雨の一日が、忘れられない思い出へと変わった。
ちなみにグラウンドに入れるゲストパスは、お母さんが知り合いを通じて入手したもの。ケインくんはお母さんに感謝すると共に、これから家のお手伝いも積極的にすると約束していたことも付け加えたい。
さらに、ジョーさんは初回に右翼席に飛んできたテオスカー・ヘルナンデスのファールボールを捕球するというおまけもあった。