2026年のレギュラーシーズンが幕を閉じ、いよいよストーブリーグが本格化する。今オフのフリーエージェント(FA)市場には、球界を代表するスター選手たちが名を連ねる。なかでも最大の注目を集めるのが、左腕タリック・スクーバルだ。
選手プロフィール
- 選手名: タリック・スクーバル
- ポジション: 左投手
- 所属: ロサンゼルス・ドジャース
- 年齢: 29歳(2027年開幕時点)
- 2026年成績: 12勝7敗、防御率2.72、158回2/3、WHIP 0.96、186奪三振、ERA+ 155、fWAR 5.2
アーロン・ジャッジ、大谷翔平、フアン・ソト。この3人に共通するのは、それぞれの年のFA市場で圧倒的な目玉となり、その動向に野球界全体が注目した。今オフ、その主役の座に就くのがスクーバルだ。
ア・リーグのサイ・ヤング賞を2度受賞した左腕は、今季は左肘の手術で約6週間離脱したものの、6月半ばに復帰すると、以前と変わらぬ投球を見せた。トレード期限前にはドジャースへ移籍。新天地では10試合に先発し、防御率2.61を記録した。
今回のトレードで注目されたのは、スクーバルがクオリファイング・オファー(QO)の対象外だったことだ。ドラフト指名権の補償が必要なかったとはいえ、それがなくても、各球団がこのエースの獲得に動く理由は十分にあっただろう。
ポストシーズンでは、ブレーブスとのナ・リーグ地区シリーズ第1戦で6回1失点と好投し、勝利投手に。一方、ブルワーズとのナ・リーグ優勝決定シリーズ第1戦では、5回2失点で敗戦投手になった。
今オフのFA市場で、スクーバルは最高の投手というだけではない。選手全体を見渡しても、他を大きく引き離す存在だ。
2023年7月に屈筋腱の手術から復帰して以降、103試合に先発して50勝20敗、防御率2.47、fWAR 21.2を記録。メジャー最高の先発投手としての地位を確立してきた。
ただし、今オフは12月1日に現行の労使協定(CBA)の期限を迎えるため、球団と選手がどのような判断を下すのかにも注目が集まる。
スクーバルの獲得に乗り出す可能性がある球団と、契約の焦点を見ていく。
獲得候補となる球団
ドジャース
FA市場の大物獲得となれば、ドジャースが真っ先に候補として挙がる。スクーバルはドジャースで約3カ月間ともに戦い、互いを知る機会があった。今オフ、ドジャースでは9選手がFAとなる見込みだが、スクーバルに匹敵する存在はいない。
ポストシーズン敗退後、スクーバルは自身のFAについて明言を避けた。一方で、ドジャースについては好意的な言葉を口にしている。
「素晴らしい組織で、素晴らしいチームメートがいて、ファンも素晴らしい。胸にロサンゼルスの文字を掲げ、帽子にもそのロゴをつけてプレーできたことを光栄に思う」
この言葉だけで再契約を予測することはできないが、シーズン中に築いた関係は、ドジャースにとってひとつの強みになりそうだ。
タイガース
トレード期限前、タイガースはスクーバルを放出するという難しい決断を下した。しかし、本人はFAとなった後の古巣復帰について「戻りたい」と話している。
8月上旬に有望株3人とのトレードで放出したエースを、わずか数カ月後に大型契約で呼び戻せば、球界を驚かせることになる。
ただし、タイガースが獲得競争に加わり、他球団と激しい条件争いを繰り広げる可能性は高くなさそうだ。スクーバルが契約額を最優先する場合、タイガース復帰は難しくなるかもしれない。
メッツ
2年連続でポストシーズン進出を逃したメッツ。オーナーのスティーブ・コーエンと編成本部長のデビッド・スターンズが今オフどのような動きを見せるのか、予測するのは難しい。
メッツにはノーラン・マクリーン、ザック・ソーントン、クリスチャン・スコットら若い投手がそろっている。そこにスクーバルを加え、投手陣の柱として据えられれば、チームにとって大きな戦力強化となる。
スターンズはこれまで、先発投手に長期・高額契約を提示することには慎重な姿勢を示してきた。しかし、スクーバルは並の先発投手ではない。フアン・ソトとの契約で球界史上最高額を実現したのに続き、今度は投手史上最高額の契約を提示するのだろうか。
カブス
今オフ、カブスは今永昇太、クレイ・ホームズ、ケビン・ゴーズマン、マシュー・ボイド、デビッド・ピーターソンらがFAとなる見込みで、先発投手の補強が重要な課題になる。
焦点は、スクーバル獲得に必要な金額を受け入れられるかどうかだ。契約規模は、球団史上最大の契約額の少なくとも2倍に達する可能性がある。
カブスがこれまでの投資基準を超え、球団史上例のない大型契約に踏み切るのか。そこが最大のポイントになる。
ブルージェイズ
ブルージェイズは近年、FA市場の大物獲得に積極的に動いてきた。大谷翔平、フアン・ソトの獲得にも乗り出しており、大型契約を狙ってきた実績がある。
昨オフにはディラン・シースとの契約をまとめ、先発投手の大物獲得に成功した。先発陣の補強が引き続き課題となるなか、スクーバルの獲得を検討する可能性はある。
フィリーズ
デーブ・ドンブロウスキー編成本部長は、FA市場で大規模な投資に前向きだ。スクーバル獲得に動く可能性は高くないものの、候補の一つとして挙げられる。
ザック・ウィーラーの契約はあと1年ある。一方、フィリーズには厚みのある先発陣がおり、スクーバルをローテーションの中心に据える場合、クリストファー・サンチェスやヘスス・ルザルドをトレードに出し、ほかの弱点を補う選択肢も考えられる。
スクーバルの代理人を務めるスコット・ボラスは、ブライス・ハーパー、ニック・カステヤノス、タイフアン・ウォーカーなどフィリーズとの契約にも関わってきた。さらに、ホアン・デュランとブライソン・ストットもボラスの顧客だ。フィリーズがスクーバルを獲得する可能性は高くないが、候補として残したい。
大型契約の懸念材料は「左肘」
投球内容に関して、スクーバルに明確な弱点を見つけるのは難しい。懸念材料があるとすれば左肘だ。
今季受けたナノスコープ手術は、比較的新しい手術法だ。大学時代にはトミー・ジョン手術を受け、2022年には屈筋腱の手術も経験している。こうした腕の負傷歴は、長期契約を検討する球団にとって無視できない要素となる。
獲得に動く球団は、将来にわたって健康を維持できるかというリスクも慎重に見極める必要がある。
球団幹部の見解は
ある球団幹部は、スクーバルの評価と契約時期について次のように語った。
「ここ数年でFA市場に出てくる先発投手のなかで、最も実力があることはまちがいない。契約がいつまとまるかが注目店だ。労使交渉をめぐる不透明感によって、大型契約を結べる球団が、フアン・ソトのときと同じような勢いで獲得に動かなくなる可能性もある。最大の焦点は、12月1日が契約交渉の期限となるのか否かだ」
交渉の行方を左右するのは実力や金額だけではなく、労使交渉の状況や契約をまとめるタイミングになる可能性がある。
山本由伸、シャーザー、バーランダーの記録を超えるか
投手の契約として、保証総額の史上最高記録を持つのは山本由伸だ。ドジャースと結んだ10年総額3億2500万ドル(約513億円)の契約が、その頂点に立っている。
一方、年平均額の最高記録は、マックス・シャーザーとジャスティン・バーランダーが並ぶ4333万ドル(約68億円)だ。スクーバルはこの2つの記録を上回る可能性がある。
総額で山本を超えるのか。それとも年平均額でシャーザー、バーランダーを上回るのか。あるいは、その両方を更新するのか。
