スクーバル、歴史に残る初完封

94球、13三振でマダックス達成

May 25th, 2025

「昨年のポストシーズンの記憶にはもう悩まされてはいない」

そう語るのはア・リーグ最強投手、タリク・スクーバルだ。彼にとっては悔しい経験も、更なる成長への糧でしかない。

「野球において失敗は、常に新たなモチベーションになる」と土曜日に語っていた。

そして日曜午前に行われたインディアンス戦(シリーズ最終戦)で、自身初の完封勝利を記録。2被安打、13三振、四球なしという圧巻の内容だった。

「(会場が)うるさすぎてピッチコムが聞こえなかったんだ」と語るほどの盛り上がりを見せた最終打席。キャッチャーのディロン・ディングラーをマウンドに呼び、音量を上げコミュニケーションを取り直した。

「音量を上げてマウンドに戻ったら、今度はみんな急に静かになってた」とスクーバルは笑う。「こっちは最大音量にしたんだけど、『これって打者にも聞こえてるんじゃないか?』って思ったよ」

しかし、仮に聞こえていたとしても結果は変わらなかっただろう。試合を締めくくった94球目は、なんと164.9キロ(102.6マイル)のストレート。ガブリエル・アリアスを空振り三振に仕留めた一球は、2008年の球速追跡開始以降、先発投手による九回の最速投球となった。

そんな、試合を締めくくった一球について、こう振り返った。

「自分は感情でプレーするタイプだし、球場のエネルギーに背中を押されるんだ。だからこそ、速くて力強い球が出る感触はあった。でも、正確にどこに行くか(コース)はちょっとわからなかった。でも自分みたいな選手にとっては、ああいう風に観客が総立ちになっている時は特別な瞬間が訪れるものだよ」

昨年のカイダー・モンテロ(ロッキーズ戦で96球完封)に続いて、タイガースの投手として2年連続の「マダックス」(※100球未満での完封試合の通称)達成者に。さらに、マダックス達成試合における13三振はMLB史上最多であり、これまでの記録(12三振)はカルロス・カラスコ(2014年)、クリフ・リー(2011年)、サンディ・コーファックス(1964年)が保持していた。

A.J.ヒンチ監督は、「彼がフルスロットルで投球すると、もはや限界なんてない」と賞賛。メジャーで初めて九回のマウンドに立ったスクーバルだったが、球数は94球と十分に許容範囲だった。

「球界全体として、投手の扱いに慎重になってきていて、投球数も、イニング数も減っている。しかし、今日は『エースの日』だった。だから送り出す判断に迷いはなかったよ」とヒンチ監督は語った。

スタンドの3万7031人のファンがスクーバルコールを送る中、彼は九回のマウンドへ向かった。

「正直、少し涙が出そうになったよ」とスクーバルは告白した。「心の中で思ったんだ。12歳の頃の自分がこの姿を想像できただろうかって。 こうしてファンに応援されて、あんな場面で投げられるなんて。本当に信じられない瞬間だった」

この勝利により、タイガースはガーディアンズによる4連戦スイープを阻止。圧倒的エースの存在がシリーズ全体の流れを左右するほどの影響力を持っていることを改めて印象づけた。

昨年のディビジョンシリーズ第2戦では、チームを勝ち越しへ導く好投を見せるも、第5戦ではグランドスラムを浴びて逆転負け。酸いも甘いも経験し、また一回り大きな選手へと成長した。

「もちろん、(第5戦で)レーン・トーマスに打たれた一発を思い返すことはある。ただ、悪夢ではない。あの打席を何度も頭の中で再現し、自分の考えとプロセスを見直した。その一球は狙ったところに行かなかったけど、そういうことはよくある」

五回まで、スクーバルは打者15人を連続でアウトに抑え、四回までわずか37球(ストライク31球)で5三振と、驚異的な効率で試合を支配した。五回にはトーマスとアリアスを159キロで連続三振。14人目の打者で初のスリーボールカウントに達したが、そこでも158キロの直球でマンザルドをフライアウトに仕留めた。

五回裏、タイガース打線がローガン・アレン相手に5得点を挙げ、スクーバルに十分すぎる援護を与えた。

六回にウィル・ウィルソンに右中間への二塁打を許し、今月2度目となる完全試合挑戦は、またしても六回先頭で途切れた。2週間前にはテキサスのジョシュ・スミスにその夢を断たれており、あと一歩が届かない展開が続く。

それでも、ウィルソン以外に得点圏へ打者を進ませないピッチングを披露。

「彼は球界で最高のピッチャーだ」試合後の敵将のその一言が、この日のスクーバルのピッチングを物語っている。