ナ・リーグ地区シリーズ(NLDS=5回戦制)の最初の4試合すべてで、初回にカブス打線に本塁打を許したブルワーズは、運命の第5戦で新たな策に出る。それが、オールスター守護神、トレバー・メギルの先発起用だ。
メギルはオープナーとしての登板経験がない訳ではないが、正守護神となってからはこれが初めて。昨年、デビン・ウィリアムズの負傷離脱に伴い、代役でクローザーを務めると、そのまま地位を確立。今季は右前腕屈筋の張りで終盤に離脱しながらも防御率2.49、30セーブを記録した。レギュラーシーズン最終戦のレッズ戦で1イニングを投げて復帰し、そのまま地区シリーズのメンバー入り。メギルの離脱中に抑えを務めたアブナー・ウリベも、十分に休養を取り第5戦での出番に備えている。
「投手コーチ陣と私、そしてGMのマット・アーノルドで会議室に集まってあらゆる可能性を検討し、最終的にメギルで行くことに決めた。いずれにしても、彼は今日登板する予定だったからね」とパット・マーフィー監督は語った。
マーフィー監督は、今季97勝を挙げたブルワーズがクラブハウスのTシャツにも掲げていたスローガンのひとつ「友情の力」について触れた。これは、オールスターゲームの時に、チーム好調の要因を聞かれた際のコメントで、それ以来チームの合言葉になっている。
「彼(メギル)が最初にその言葉を発したんだ。だから、彼で試合を始めるのがふさわしいと思ったんだよ」とマーフィー監督は語る。
メギルはすでに今シリーズで2度登板しており、第2戦では八回に2打者を完璧に抑え、7-3の勝利に貢献。一方で、第4戦では五回に登板するも、1安打1四球で1アウトしか奪えずに降板した。
「くじ引きで誰が選ばれても同じ気持ちだったと思う。チームの誰もが全力で役割を果たすからね」と外野手サル・フレーリックは語った。「でもトレバーが先発するのは本当にうれしい。1年を通してマウンドで闘志むき出しの“闘犬”のようだった。彼の投球を信じて守るだけだよ。何が起こっても、僕らが彼を守るから大丈夫さ」
ブルワーズが初回から警戒を強めるのも当然だ。カブスはポストシーズン史上初めて、同一シリーズ4試合連続で初回に本塁打を放っている。
カブスのオープナーは左腕ドリュー・ポメランツ。2019年途中にジャイアンツからトレードで加入し、同年のワイルドカードゲームでは6人連続で打ち取り、ジョシュ・ヘイダーがリードを守れなかったあの“5年連続初戦敗退”の始まりとなった試合でも好投している。なお、ポメランツはレギュラーシーズンから数えて23者連続アウト中と絶好調で第5戦に臨む。
「両チームとも、このシリーズで初回がどれだけ重要かを理解している」とカブスのクレイグ・カウンセル監督は語った。
敵地リグレーフィールドでシリーズ決着のチャンスを2度逃したブルワーズは、ホームに戻って仕切り直しを狙う。
「第5戦とか第7戦みたいな(勝てば突破、負ければ敗退の)試合は、まさに夢の舞台だよ。特にホームなら、感情や観客の声援に乗るのは悪いことじゃない。ただ、同時に自分の役割を果たすために集中を保つことが大事。でも、最高の雰囲気になるのは間違いないね」とフレーリックは語った。
ちなみに、両監督とも前日10日(日本時間11日)に行われた、マリナーズとタイガーズの延長15回まで続いた死闘を、最後まで観戦したという。カウンセル監督は「どんな想定外の展開にも備えるべきだという良い教訓になった」と話し、マーフィー監督も息子たちと観戦しながら別の教訓を見出した。
「今日の試合へヒントにもなったよ。あの試合では、結果を求めすぎて1球1球に集中できていない選手がいた。言うのは簡単だけど、こういう試合で最悪なのは負けることじゃない。集中できず、正しいメンタルで臨めなかったと後悔することだ」とマーフィー監督は語る。
「後悔は敗北よりも重い。いいプレーをしても負けることはある。だからこそ、自分のベストの状態で、全力を出すことが大事なんだ」
