【ブルージェイズ13-7ヤンキース】トロント/ロジャースセンター、10月5日(日本時間6日)
2025年10月5日、トロントに1人のスターが誕生した。
ア・リーグ地区シリーズ(ALDS)のブルージェイズとヤンキースの第2戦。ブルージェイズの先発、トレイ・イェサベージが5回1/3を無安打、11三振という圧巻の投球で勝利に貢献した。ジョン・シュナイダー監督がマウンドに近づき、降板を告げると、観客席からはその好投を称える歓声とともにブーイングが起こった。それほどまでに、22歳の右腕の投球は魅力的だった。
打線は、ブラディミール・ゲレーロJr.の満塁弾、ドールトン・バーショの2本塁打を含む5本塁打と爆発。四回までに11点を奪ってイェサベージを援護し、早々に試合を終わらせた。
イェサベージの投球はまさに記憶と記録に残る内容になった。達成した記録は以下の通り。
・ポストシーズンにおけるブルージェイズ投手の奪三振記録を更新(これまでの最多は8、デービッド・プライス、フアン・グズマン、デーブ・スティーブが記録)
・22歳69日での2桁奪三振は、ポストシーズン史上2番目の若さ(最年少は1975年ナ・リーグ優勝決定シリーズ第3戦で14奪三振を記録したジョン・カンデラリア)
・4回終了時点での10奪三振は、ポストシーズン史上最多タイ(2019年ナ・リーグ優勝決定シリーズ第4戦のパトリック・コービンと並ぶ)
前日の会見で、イェサベージは「この舞台でプレーするために生まれてきた」と落ち着いた表情で答えた。そこには傲慢さはなく、興奮から発せられた言葉でもなかった。ただ、淡々と、彼は自分自身を信じていたのだ。
その大物っぷりは初回から見られた。
先頭のトレント・グリシャムを1-2で追い込むと、グリシャムはタイムをかけ、打席を外した。多くの投手が姿勢をリセットするタイミング。しかし、イェサベージは微動だにせず、まるで「好きなだけ時間を使えば良い」と言わんばかりに、グラブを構えたままだった。
そして、グリシャムが打席に戻ると、代名詞のスプリットを投じた。バットは空を切った。
マウンド、そして相手打線だけでなく、球場全体を支配したイェサベージ。降板の際は、スタンディングオベーションで送られた。そんなブルージェイズ最年少のポストシーズン先発投手は、半年前に1Aでプロ初登板を迎えたばかりのルーキーである。
マイナーでは2A、3Aなどそれぞれのカテゴリで圧倒的な投球を見せ、瞬く間にメジャーへの階段を駆け上った。わずか1年で球団の全レベルを経験した右腕は「もう球団中の人を知ってるよ」と笑う。
9月中旬にメジャーに昇格すると、初登板初先発で5回9三振。好投を続け、ポストシーズンの2戦目を任せられるまでに成長した。そして、その大舞台で、己が持つ可能性と実力を文句なしに発揮した。
