【解説】なぜ小笠原慎之介は巨人に移籍したのか、古巣・中日復帰が実現しなかった背景

3:31 AM UTC

ナショナルズ傘下2Aハリスバーグに所属していた小笠原慎之介(28)の巨人入団が17日、発表された。移籍先決定のポイントは単純な本人の希望だけではなく、ナショナルズ側の金銭的な事情が大きかった。ファン感情としては、ポスティングで移籍して、2年未満なのにどうして古巣に戻らないのか、という思いもあるだろう。

しかし、仮に小笠原が戻りたいと希望しても戻れなかった事情があるとしたら、どうだろうか。

小笠原は2025年1月、ナショナルズと2年総額350万ドル(約5億6000万円)で契約した。今季の年俸は200万ドル(約3億2000万円)。昨オフにメジャー契約を外れ、マイナー契約となった後も、ナショナルズに支払い義務はある。

つまりナショナルズは、小笠原がマイナーに在籍していても、今季年俸を全額支払う必要があった。ただし、別球団が残りの年俸を肩代わりする条件を提示すれば、ナショナルズは保有権を手放すメリットがある。

シーズン残り日数から概算すると、小笠原の今季年俸の残額は約110万ドル(約1億7000万円)前後と推定される。実際の金銭条件は公表されていないが、この残額の一部、または大部分を移籍先の球団が負担することが、事実上の移籍金に近い意味を持った可能性がある。

では、なぜ移籍先は巨人だったのか。

端的にいえば、巨人とナショナルズの間で条件がまとまったからだ。巨人は小笠原を必要とし、ナショナルズが求める金銭的条件を受け入れられる資金力もあった。本人の意向やチーム事情も当然あるが、前提としてナショナルズが保有権を手放す条件に合意しなければ、移籍は成立しない。球界関係者によれば「巨人は、残りの年俸分を全額払ってでも今すぐ獲得したい、というオファーをしていたようです」と明かす。

小笠原は18日の入団会見で巨人を選んだ決め手について「理由は、ジャイアンツの熱意がとても熱くて、ということが一番の理由です」と明かした(サンケイスポーツより)。もちろん、巨人の誠意が小笠原の感情に響いたことは確かだろう。加えて、その「熱意」は資金力とも言い換えられる。ナショナルズには移籍金として、一定額(具体的な額は不明)を支払い、ビジネスとしての取引を成立させた。

一方で、古巣・中日への復帰が実現しなかった背景にも、ビジネス上の判断があったとみられる。

小笠原はポスティングシステムで中日からナショナルズへ移籍し、その際に中日が受け取った譲渡金は70万ドル(約1億1200万円)だった。仮にナショナルズが今回、残り年俸を基準に100万ドル(1億6000万円)超の負担を求めた場合、中日にとっては、受け取った譲渡金を上回る金額を支払って呼び戻す計算になる。赤字だ。それでは、球団経営上は納得することが難しい。中日は小笠原を東海大相模高校からドラフト1位で獲得し、育成した。球団の編成幹部には、左腕に思い入れや情のある人物も多くいるだろう。しかし、ここでは感情論は抜きにして、ビジネスに徹しなければならない。

シーズン後であれば、小笠原は移籍金ナシ。よりフラットな獲得競争の中で移籍先を選べた可能性がある。しかし、シーズン途中だった今回は、ナショナルズが金銭的負担を軽くできる相手を探すビジネスとしての取引を模索した。その条件を満たしたチームが巨人だった。これらビジネス要素の強さが、小笠原の移籍劇における「なぜ中日(を含む他球団)ではなく、巨人?」の答えだ。