「松井秀喜ほどチームメートから愛され、リスペクトされた選手はいないと思う」
ヤンキースを長年取材してきたMLB.comのブライアン・ホーク記者と、ニューヨークポストのジョン・ヘイマン記者。長年、ヤンキースを見つめてきた2人の番記者は、巨人の新監督に就任した松井秀喜氏の人柄を振り返り、その「人望の厚さ」を口をそろえて語る。
デレク・ジーターはかつて、松井氏を一緒にプレーした中で最も好きなチームメートの一人に挙げたという。ホーク記者は「ジーターのような選手からそう評価されるのは、とても大きな称賛だ」と話す。
ヘイマン記者も、松井氏について「オープンで親しみやすく、いつも笑顔で、誰に対しても時間を割いてくれた。私が日本語を話せなくても気さくに接してくれて、楽しそうに取材を受けてくれた」と振り返る。グラウンドでの実績に加え、周囲への接し方や仕事に向き合う姿勢も、チームメートや現地記者から信頼を集めた理由だった。
ホーク記者が松井氏について語る際、強調するのは責任感の強さとプロ意識だ。
「フライを追って手首を骨折し、連続試合出場が途切れた際、松井氏はチームに謝罪したんだ」
自らの負傷をチームに迷惑をかけたこととして受け止めた姿に、松井氏の責任感の強さが表れていた。
ホーク記者は、松井氏を究極のプロフェッショナルであり、勝負にこだわる競争者と評価する。その姿勢を象徴するのが、2009年のワールドシリーズだ。フィリーズとの第6戦で6打点を挙げ、シリーズMVPに輝いた。大舞台で結果を残す勝負強さは、松井氏のキャリアを語るうえで欠かせない。
松井氏がヤンキースの一員として築いた絆を示す出来事がある。
2010年、エンゼルスに移籍していた松井氏が、ヤンキースタジアムでワールドシリーズの優勝リングを受け取ったときのことだ。ホーク記者は、ヤンキースのユニホームが並ぶ中に、エンゼルスの赤い帽子をかぶった松井氏がいた光景を覚えている。
「所属チームは変わっても、かつての仲間たちとのつながりは変わらなかったし、ヤンキースの全員が集まった光景は、松井氏がヤンキースで築いた絆を物語っていた」とホーク氏は楽しそうに振り返る。
松井氏は監督就任会見で、ヤンキース時代の恩師、ジョー・トーリ元監督の名前を挙げている。
ヘイマン記者は、トーリ氏の優れた点として、クラブハウスをまとめる力に加え、試合中の判断や選手起用を挙げる。「どのタイミングで起用するのか。そして、どうすればチームの力を最大限に引き出せるのか。そうした判断力にも優れた監督だった」と評価する。
一方、ホーク記者は、トーリ氏と松井氏の間にあった信頼関係を指摘する。トーリ氏はジーター、アンディ・ペティット、ホルヘ・ポサダ、松井氏ら経験豊富な選手たちを信頼し、過度に干渉することなく、それぞれを一人前のプロとして扱っていた。
松井氏も、打順や役割が変わっても不満を示すことなく、チームの勝利を優先してきた。監督にとって、そうした選手は大きな支えになる。ホーク記者は「選手を信頼し、大人として尊重するトーリ氏の姿勢が、松井氏自身の監督としての考え方にも生かされるのではないか。楽しみだね」と期待を寄せた。
2009年のワールドシリーズMVPから、巨人を率いる指揮官へ。ヤンキースで過ごした日々は、松井氏に輝かしい実績をもたらしただけでなく、名将のもとでチームを率いるための学ぶ時間にもなっていた。その経験を、巨人という新たな舞台でどう生かしていくのか。監督・松井秀喜の采配にどう表れるのか注目される。