シルバースラッガー賞は、毎年ア・リーグとナ・リーグの各ポジションで最も優れた打撃成績を残した選手に贈られる。受賞者はMLB各球団の監督とコーチの投票で決まり、自球団の選手には投票できない。1980年に創設された同賞には、近年、新たな部門が加わった。2022年にはユーティリティー選手部門、2023年には最も優れた攻撃力を誇るチームを選出する部門が新設された。
2026年のシルバースラッガー賞の最終候補者が11月5日、ルイビルスラッガー社から発表された。受賞者は11月17日に発表される。今年の最終候補には、実績豊富なスター選手から台頭著しい若手まで、多彩な顔ぶれがそろった。
ア・リーグ
捕手
ディロン・ディングラー(28歳、タイガース)
カーター・ジェンセン(23歳、ロイヤルズ)
ディングラーは、8月上旬までタイガース打線をけん引する素晴らしいシーズンを送っていた。最初の106試合で26本塁打、OPS.877と好調だったが、その後は打撃が大幅に失速。残りの試合は打率.149、出塁率.195、長打率.203、わずか1本塁打にとどまった。それでも、シーズン全体では印象的な打撃成績を収め、27本塁打は最終候補のジェンセンと並び、ア・リーグの捕手で最多だった。
ジェンセンは、メジャーで初めてフルシーズンを戦い、27本塁打、OPS.790の好成績でシーズンを終えた。バレル率(打球速度と打球角度から長打になる可能性が高いと判定される打球の割合)は12.7%で、今季の規定打席到達者の中で上位約15%に入った。
一塁手
ピート・アロンソ(31歳、オリオールズ)
ウィルソン・コントレラス(34歳、レッドソックス)
アロンソにとって、オリオールズ移籍1年目はこれ以上ないほど充実したシーズンとなった。43本塁打、113打点はいずれもア・リーグ最多で、OPS+(球場特性を考慮し、リーグ平均を100とする打撃の総合指標)149は自己最高だった。また、xwOBA(打球速度や打球角度などから算出する予測出塁率).402と、MVP最有力候補のヨルダン・アルバレス(29)がマークした.442に次ぐア・リーグ2位だった。
捕手としてメジャーでのキャリアをスタートさせたコントレラスは、2025年にカージナルスで一塁手へ完全転向し、2026年開幕前にレッドソックスへトレードされた。移籍1年目の今季は27本塁打、OPS.901と自己最高のシーズンを送った。平均スイング速度77マイル(約124キロ)は規定打席到達者の上位約4%に入る驚異的な数字でスタットキャストの打撃ランバリュー(打撃による得点への貢献を数値化した指標)でもプラス41をマーク。アルバレスに次ぐア・リーグ2位だった。
二塁手
コディ・クレメンス(30歳、ツインズ)
チェイス・マイドロス(25歳、ホワイトソックス)
クレメンスもツインズで自己最高のシーズンを送った。27本塁打はア・リーグの二塁手で最多、7三塁打もリーグトップで、OPS.758と打撃で存在感を示した。2026年は数々の重要な場面で勝負強さを発揮し、特に7月30日のロイヤルズ戦では、3点を追う場面から逆転サヨナラ満塁本塁打を放つ劇的な活躍を見せた。
ホワイトソックスは今季、MLB最大のサプライズとなったチームだ。2024年にMLB史上最多の121敗を喫してからわずか2年でポストシーズン進出を達成し、マイドロスもその躍進に大きく貢献した。メジャー2年目の今季は16本塁打、OPS.765と打撃でも成長を示した。
遊撃手
ケビン・マクゴニグル(22歳、タイガース)
ボビー・ウィットJr.(26歳、ロイヤルズ)
ザック・ネト(25歳、エンゼルス)
マクゴニグルはメジャー1年目から素晴らしい活躍でア・リーグ新人王の有力候補にも挙げられている。リーグ最多の707打席に立ち、打率.278、出塁率.376、長打率.430、18本塁打の好成績。ボールゾーンの球に手を出す割合を示すチェイス率は19.6%で規定打席到達者の中で上位約2%の優秀な数字だった。四球率13.4%も上位約6%に入った。
3年間で2度目となるア・リーグMVPの最終候補に選ばれたウィットJr.も、打撃で素晴らしいシーズンを送った。18本塁打、45盗塁、OPS.800の成績に加え、xBA(打球速度や打球角度などから算出する予測打率).302と、アルバレスの同.318に次ぐリーグ2位だった。また、xSLG(打球データに基づく予測長打率).504で実際の長打率.441を63ポイント上回った。この差は2026年の規定打席到達者の中で3番目に大きかった。ウィットJr.は3年連続のシルバースラッガー賞受賞を目指している。
ネトは3年連続で20本塁打を超え、今季は27本塁打、OPS.766の成績でシーズンを終えた。本塁打数はア・リーグの遊撃手で、コルソン・モンゴメリーの31本に次ぐ2位だった。
三塁手
ジュニオール・カミネロ(23歳、レイズ)
ミゲル・バルガス(26歳、ホワイトソックス)
カミネロは2年連続で40本塁打、100打点を突破し、今季は42本塁打、101打点の活躍でア・リーグMVPの最終候補にも選ばれた。平均バットスピード79.4マイル(時速約128キロ)はMLB全体でトップ。圧倒的なスイング速度を武器に、22歳で迎えた今季も素晴らしい成績で若きスターとして存在感を高めた。
バルガスは躍進したホワイトソックスで打撃が開花。33本塁打、OPS.837の好成績を残し、自身初のオールスター選出も勝ち取った。
外野手
ウィルヤー・アブレイユ(27歳、レッドソックス)
ランディ・アロザレーナ(31歳、マリナーズ)
コディ・ベリンジャー(31歳、ヤンキース)
ジャック・カグリオーン(23歳、ロイヤルズ)
チェイス・デローター(25歳、ガーディアンズ)
ライリー・グリーン(26歳、タイガース)
トリスタン・ピーターズ(26歳、ホワイトソックス)
チャンドラー・シンプソン(25歳、レイズ)
マイク・トラウト(35歳、エンゼルス)
ア・リーグの外野手部門でも、最終候補の大半が初受賞を目指している。アブレイユ、アロザレーナ、カグリオーン、デローター、ピーターズ、シンプソンの6人が受賞すれば、いずれも自身初となる。
アブレイユは右翼手として卓越した守備力を誇り、過去2年連続でア・リーグのゴールドグラブ賞を受賞している。今季は打撃でも自己最高のシーズンを送り、リーグ最多の38二塁打に加えて24本塁打を放った。アロザレーナは31歳で迎えた今季、3度目のオールスターに選出。113得点でア・リーグトップに立ち、OPS.865の好成績を挙げた。
デローターはOPS.820、ピーターズはOPS.774と、新人ながらシルバースラッガー賞の受賞を狙える活躍。一方、メジャー2年目のカグリオーンは23本塁打、長打率.494と持ち前の長打力を発揮した。
トラウトは通算10度目のシルバースラッガー賞受賞を目指す。実現すれば、マイク・ピアザ(10度)、バリー・ボンズ(12度)に次ぐ史上3人目の快挙となる。今季は過去10年間で最多の142試合に出場し、OPS.803と健在ぶりを示した。過去2度受賞しているベリンジャーも、17本塁打、OPS.768の活躍でオールスターに選ばれた。
一方、シンプソンが受賞すれば異例の快挙となる。俊足を武器に打率.306、ア・リーグ最多の46盗塁をマークしたものの、本塁打はゼロ。投手を除き、シーズン本塁打ゼロでシルバースラッガー賞を受賞した選手は過去に2人しかいない。1987年にナ・リーグ遊撃手部門で受賞したオジー・スミスと、1981年にナ・リーグ一塁手部門で受賞したピート・ローズだ。
DH
ヨルダン・アルバレス(29歳、アストロズ)
ベン・ライス(27歳、ヤンキース)
ア・リーグMVPの最有力候補とされるアルバレスは、今季初めてシーズン150試合以上に出場し、健康な状態で持てる実力を存分に発揮した。自己最多の42本塁打を放ち、打率.316、出塁率.432、長打率.601、109四球はいずれもMLBトップだった。
一方、ライスは好調だった2025年に続き、今季はさらに飛躍。41本塁打、OPS.897の活躍でヤンキース打線を支え、自身初のオールスターにも選ばれた。
ユーティリティー
サム・アントナッチ(23歳、ホワイトソックス)
エセキエル・デュラン(27歳、レンジャーズ)
ケビン・マクゴニグル(22歳、タイガース)
アントナッチはメジャー1年目から活躍し、打率.277、出塁率.370の好成績。リーグ最多の29死球も高い出塁率につながった。守備では左翼手として121試合、二塁手として32試合に出場した。
デュランは今季、自己最多の17本塁打を放ち、守備では投手と捕手を除くすべてのポジションでプレーした。また、ア・リーグ新人王候補のマクゴニグルも遊撃手だけでなく、タイガースの三塁手として94試合に出場し、複数のポジションでチームに貢献した。
最優秀攻撃チーム賞
アストロズ
レイズ
ツインズ
ホワイトソックス
アルバレスを中心とするアストロズは、今季MLB最多の226本塁打を放った。一方、レイズはチーム打率.258でア・リーグトップ。野球では得点力が勝敗を左右する重要な要素となるが、ホワイトソックスは776得点でリーグ最多だった。ツインズもヤンキースと並ぶ739得点で、リーグ2位に入った。
ナ・リーグ
捕手
ハンター・グッドマン(27歳、ロッキーズ)
ガブリエル・モレノ(26歳、ダイヤモンドバックス)
今季のナ・リーグでグッドマンの41本塁打を上回った選手は2人だけだった。カブスのピート・クロウ=アームストロングとフィリーズのカイル・シュワーバーで、いずれも45本塁打を放った。さらに驚くべきことに、グッドマンは打者有利とされる本拠地クアーズフィールドで16本塁打だったのに対し、敵地では25本塁打と上回った。2年連続のシルバースラッガー賞受賞を目指している。
モレノは今季、ダイヤモンドバックスで打撃が開花。打率.311、OPS.874の活躍で、2012年のバスター・ポージー以来、捕手として14年ぶりとなる首位打者に輝いた。bWAR(代替可能な選手と比較した総合的な勝利貢献度を示す、ベースボール・リファレンス算出の指標)も6.7でナ・リーグ4位だった。
一塁手
ジェイク・バウアーズ(31歳、ブルワーズ)
アレック・バーレソン(27歳、カージナルス)
ラファエル・デバース(30歳、ジャイアンツ)
マット・オルソン(32歳、ブレーブス)
バウアーズは、ワールドシリーズを制したブルワーズでポストシーズンに素晴らしい活躍。世界中の野球ファンにその名を知らしめた。特にナ・リーグ優勝決定シリーズ(NLCS)ではMVPを受賞。しかし、ポストシーズンでの活躍以前から、レギュラーシーズンでも自己最高の成績を残しており、26本塁打、OPS.874と打線を支えた。
バーレソンは今季、MLB最多の116打点を挙げ、2年連続のシルバースラッガー賞受賞を目指す。通算3度目の受賞を狙うデバースは、5月に打撃が絶好調となると、その後も勢いを維持。37本塁打、長打率.525でいずれも2021年以来の自己最高の数字をマークした。オルソンも41本塁打、長打率.502と持ち前の長打力を発揮した。
二塁手
ブランドン・ラウ(32歳、パイレーツ)
ブライス・トゥラング(26歳、ブルワーズ)
ラウはMLBでも過小評価されがちなスター選手の一人だが、パイレーツ移籍1年目の2026年も優れた打撃力を発揮した。32歳の二塁手は35本塁打、96打点、OPS.824と、今季も打線の主力として活躍した。
トゥラングは2026年、レギュラーシーズンとポストシーズンの両方で大活躍した。レギュラーシーズンでは21本塁打、100打点、OPS.816の好成績でナ・リーグMVPの最終候補に選ばれ、ポストシーズンでもブルワーズの球団初となるワールドシリーズ制覇に貢献。ポストシーズンでは1本塁打、OPS.817と勝負強い打撃だった。
遊撃手
CJ・エイブラムズ(26歳、ナショナルズ)
エリー・デラクルーズ(24歳、レッズ)
オットー・ロペス(28歳、マーリンズ)
エイブラムズは2026年に長打力が開花し、自己最多の33本塁打を放った。ナショナルズ打線はMLB屈指の攻撃力を発揮し、エイブラムズも106打点と活躍。自身2度目のオールスターにも選ばれた。デラクルーズは2025年に負傷を抱えながらプレーしたが、今季は健康な状態で自己最高のシーズンを送り、30本塁打、30盗塁の「30-30」を達成した。ロペスもマーリンズで打撃が飛躍的に向上し、打率.305、MLB最多の191安打と活躍した。
三塁手
アレックス・ブレグマン(32歳、カブス)
マックス・マンシー(36歳、ドジャース)
2019年のア・リーグMVP投票で2位に入ったブレグマンは、それ以来となる自己最高の長打力を発揮した。カブス移籍1年目の今季は28本塁打、長打率.464と活躍し、2019年以来となる自身2度目のシルバースラッガー賞受賞を目指す。
一方、マンシーは通算243本塁打を誇りながら、シルバースラッガー賞はまだ獲得していない。2026年は29本塁打、OPS.837の活躍で、自身3度目のオールスターにも選出された。
外野手
コービン・キャロル(26歳、ダイヤモンドバックス)
ジャクソン・チューリオ(22歳、ブルワーズ)
ピート・クロウ=アームストロング(24歳、カブス)
鈴木誠也(32歳、カブス)
フェルナンド・タティスJr.(27歳、パドレス)
ジョーダン・ウォーカー(24歳、カージナルス)
ジェームズ・ウッド(24歳、ナショナルズ)
ナ・リーグの外野手部門でも、初受賞を目指す選手が多い。チューリオ、クロウ=アームストロング、鈴木、ウォーカー、ウッドの5人が受賞すれば、いずれも自身初となる。
チューリオはブルワーズのワールドシリーズ制覇に貢献し、ポストシーズンでも素晴らしい活躍だったが、レギュラーシーズンでも自己最高のシーズンを送った。25本塁打、長打率.487と打撃で成長を示し、23歳になるまでに3度の「20本塁打・20盗塁」を達成したMLB史上初の選手となった。
クロウ=アームストロングは歴史的なシーズンを送り、ナ・リーグMVPの最有力候補とされている。同僚の鈴木もOPS.841と活躍し、26本塁打で4年連続の20本塁打以上を達成した。将来を嘱望されながら2024~25年に苦しんだウォーカーは、今季29本塁打、102打点と大きく飛躍。ウッドも腹斜筋の負傷で欠場期間があったものの、30本塁打、OPS.891の好成績でシーズンを終えた。
DH
大谷翔平(32歳、ドジャース)
カイル・シュワーバー(33歳、フィリーズ)
大谷は2026年、負傷の影響で成績を落としたものの、依然としてDH部門のトップに君臨している。MVPとシルバースラッガー賞をそれぞれ4度受賞している大谷は、今季も30本塁打、長打率.512と活躍。通算300本塁打の節目にも到達した。
通算2度目のシルバースラッガー賞を目指すシュワーバーは、45本塁打でクロウ=アームストロングと並び、MLB本塁打王に輝いた。2022年には46本塁打、2025年には56本塁打でナ・リーグ本塁打王を獲得しているが、MLB全体での本塁打王は今回が初めてだった。
ユーティリティー
ジェイク・バウアーズ(31歳、ブルワーズ)
サル・スチュワート(22歳、レッズ)
フェルナンド・タティスJr.(27歳、パドレス)
バウアーズは今季、一塁手として119試合に出場しただけでなく、左右の両翼でも計46試合に出場した。ナ・リーグ新人王の最終候補に選ばれたスチュワートは、32本塁打を放つ一方、守備では一塁と三塁を中心に、二塁でもプレーした。また、キャリア序盤に遊撃手から右翼手への転向に成功したタティスJr.は、2026年に右翼だけでなく二塁も守った。
最優秀攻撃チーム賞
ブルワーズ
カブス
ドジャース
ナショナルズ
ブルワーズは、まさに「自分たちのやり方」でワールドシリーズを制覇した。その特徴は得点の奪い方に顕著に表れている。ナ・リーグ優勝決定シリーズ(NLCS)では7本塁打を放ってドジャースをスイープしたが、基本的には長打力よりも選球眼と好機での勝負強さを武器とする打線だった。今季のチーム本塁打154本を下回った球団は、152本のブルージェイズだけ。それでもチーム打率.258はレイズと並んでMLBトップだった。
クロウ=アームストロングを中心とするカブスは、220本塁打でナ・リーグ最多、チームOPS.767はMLBトップだった。ドジャースもOPS.762でカブスに次ぐMLB2位。一方、ナショナルズのチーム長打率は.423でカブスの同.428、ドジャースの同.424に迫る数字だった。
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