鈴木は今季、過去の評価を覆すように右翼守備で評価を急激に高めた。4月には「ケガをしたことで1歩目の大切さや、スタートを切る前の準備段階の予備動作が自分なりに良くなってきている」と話していた。WBC(ワールドベースボールクラシック)での右膝負傷から復帰後、守備範囲と送球の両面でプラスを積み上げた。
【鈴木が上回った主な指標】
・FRV(フィールディング・ラン・バリュー=守備全体の貢献を得点価値に換算):鈴木+8、キャロル+4
・DRS(平均的な野手より何点分の失点を防いだかを推定):鈴木+14、キャロル+12
・送球FRV(送球による得点価値):鈴木+4、キャロル-6
一方、キャロルにも明確な優位性があった。
【キャロルが上回った主な指標】
・OAA(平均より何個アウトを増やしたか):キャロル+10、鈴木+5
・最終SDI(複数の守備データを組み合わせた総合指標):キャロル9.6、鈴木8.7
・右翼出場:キャロル152試合、鈴木111試合
・右翼守備イニング:キャロル1314回1/3、鈴木972回2/3
・刺殺(主にフライやライナーを捕球してアウトにした回数):キャロル351、鈴木232
キャロルは鈴木より41試合、341回2/3多く右翼を守りながら、OAA+10を記録。351刺殺もメジャー右翼手最多。守備範囲だけでなく、シーズンを通じて右翼を守り続けた「守備量」でも明確な優位性があった。
一方、鈴木はWBCで負傷した右膝の影響で開幕から12試合を欠場し、4月10日の復帰後もしばらくDHを挟みながら守備機会を増やした。さらに6月13日のジャイアンツ戦(サンフランシスコ)で同じ右膝に再び違和感を訴え、その後は6月末までの先発13試合中12試合でDHを務めた。キャロルとの約342イニングの守備量の差には、こうした負傷による影響もあった。
キャロルのOAA+10、351刺殺はいずれもメジャー右翼手トップ。さらにOAAは3年連続で2桁を記録している。広い守備範囲を単年だけでなく複数年にわたって発揮した能力もアピールポイントだった。
ゴールドグラブ賞は守備指標の順位だけで決まらない。各球団の監督、コーチによる投票が選考の75%を占め、SDIが約25%加算される。自軍選手には投票できず、投票内容は非公開だ。
最終SDIでもキャロルが鈴木を0.9ポイント上回った。さらに守備範囲、守備量、3年続く安定した評価もあった。投票内訳が公開されないため断定はできないが、キャロルの継続した守備の安定感が“印象点”として監督、コーチからの得票に影響した可能性が高いのではないだろうか。
鈴木はFRV、DRS、送球でキャロルを上回り、受賞しても不思議ではないシーズンだった。一方、キャロルにもOAA、最終SDI、守備量と継続的な守備の安定感いう明確な優位性があった。
鈴木の落選は守備評価が低かった結果ではない。今季を含む過去数年は『キャロルは守備範囲が広く、安定した守備力』というイメージを各球団に植え付けた。一方で鈴木は今後、今季基準の守備力を続けることがキーポントになる。
今季大幅に改善した守備を継続できれば、来季以降にゴールドグラブ賞獲得のチャンスはある。日本選手で同賞を獲得した選手はイチローのみ。誠也には来季、日本選手として17年ぶり2人目の快挙へ期待がかかる。
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