ブルワーズは今季、レギュラーシーズンの勝利数を4年連続で伸ばしたほか、ナ・リーグ中地区でも4年連続の地区優勝を果たした。
ただ、打線の成績を表面的に見ると、2025年と2026年で大きな違いはない。
ミルウォーキーの打撃成績:2025年と2026年の比較
- 2025年: OPS .736/wRC+ 107/1試合平均得点 4.98
- 2026年: OPS .743/wRC+ 107/1試合平均得点 5.14
得点創出力をリーグ平均と比較する指標、wRC+で見ると、2025年と2026年のブルワーズ打線は同じ水準だった。しかし、ブルワーズにとって、前年と同じでは十分ではない。昨年10月のナ・リーグ優勝決定シリーズ(NLCS)ではドジャースに4連敗を喫し、打線が沈黙した。4試合を通じたOPSはわずか.384で、挙げた得点も合計4点。今季は、そこからの上積みが求められる。
今季の打線にも、ブルワーズらしい特徴は変わらず表れている。現代野球で主流となっている長打力重視のスタイルとは異なり、本塁打に頼る打線ではない。レギュラーシーズンの本塁打数がブルワーズより少なかったのはブルージェイズだけだった。フライを引っ張る割合はメジャー最少、ゴロの割合は最多。そして、スイング率も最も低かった。
ただし、一つだけ新しい変化がある。
ブルワーズの打者は今季、メジャーでも屈指の速いスイングを見せている点だ。
ここでいう「速いスイング」とは、バットスピードが時速75マイル(約121キロ)以上のスイングを指す。この基準は単なる便宜上の区切りではない。速いスイングとそれ以外では、打撃結果に大きな差がある。2026年、速いスイングから生まれた打球の打率は.308、長打率は.613だった。
スタットキャストがバットの動きを追跡するデータを取得し始めたのは、2023年のオールスターゲーム後だ。そのデータによると、チームとしてのブルワーズは、これまでで最も速くバットを振っている。追跡データがある期間で、速いスイングの割合が最も高かったチーム記録の上位5つは、すべて直近5か月のものだ。2025年から2026年にかけての速いスイングの割合の伸びも、ブルワーズの8.4ポイント増を上回ったのはレッズだけだった。
ブルワーズが昨季のブルージェイズのような打線に変わったわけではない。2025年のブルージェイズは、コンタクト重視の打撃スタイルを維持しながらバットスピードを大幅に向上させ、チーム全体の長打力を伸ばした。しかし、両チームのアプローチは大きく異なる。ブルージェイズは球団全体の方針としてバットスピードを重視したが、ブルワーズは別の考え方を取っている。
ブルワーズの野球運営部門責任者マット・アーノルドは、2024年にこう語っている。
「バットスピードと、ヒットを打つことには大きな違いがある。打者について考えるときは、その点を慎重に見なければならない」
さらに注目したいのは、ブルワーズが速くバットを振っているだけでなく、バットの芯でしっかりボールを捉えていることだ。
「スクエアアップ率」は、打者がバットの芯でボールを捉え、スイングスピードをどれだけ有効に生かしているかを示す指標だ。この数値でブルワーズを上回るのはドジャースだけ。ブルワーズのスクエアアップ率は33.7%となっている。
また、優れたバットスピードを伴う質の高いコンタクトは「ブラスト」と呼ばれる。ブルワーズはスイング1回あたりのブラスト数でメジャー全体のトップに立っている。下のグラフでは、スイングスピードが速く、ブラスト率も高い右上の領域に位置することが理想となる。
つまり、ブルワーズはスイングスピードを上げると同時に、バットの芯でボールを捉えることで、より速い打球を生み出している。
2025年のブルワーズは、平均打球速度が時速88.6マイル(約142.6キロ)でメジャー全体の下から3番目。ハードヒット率も39.3%で下から6番目だった。しかし今季は、ハードヒット率を前年から改善したわずか4球団の一つとなった。今季のハードヒット率は40.3%で、メジャー7位に位置している。
改善幅そのものは大きくない。ただし、今季はリーグ全体でハードヒット率が低下している。メジャー全体の数字は昨季の41.0%から38.7%に落ち込んだ。それに対して、ブルワーズは改善を果たした。
これが今季のブルワーズ打線に見られる変化だ。リーグ全体で打撃成績が低下するなか、スイングスピードを上げ、バットの芯でボールを捉えることで、より強い打球を生み出している。この変化は、10月のポストシーズンでもプラスに働く可能性がある。
では、なぜこうした変化が起きたのか?
ブルワーズは、どのようにしてここまで変わったのだろうか。
打撃コーチのエリック・タイゼンは、フィラデルフィアのシチズンズ・バンク・パークでMLB.comの取材に応じ、こう説明した。
「バットスピードは、目標というより、取り組みの結果として表れるものだと思う。そこにはさまざまな要素が関わっている」
一つには、選手の顔ぶれがある。外野手のギャレット・ミッチェルと一塁手のジェイク・バウアーズは、規定打席に到達した打者のなかで、メジャーでもトップ15に入るバットスピードを誇る。2人が2026年に記録した打席数は、合計で2025年を800以上上回った。
また、ブルワーズは2月に三塁手のケイレブ・ダービンをレッドソックスにトレードした。ダービンはナ・リーグ新人王の最終候補に選ばれた選手だが、バットスピードはパーセンタイルで下位6%に位置していた。
ただし、変化は選手の入れ替えだけによるものではない。チームに残った選手たちも、以前より頻繁に速いスイングを繰り出すようになっている。
ブルワーズの主な打者における速いスイングの割合の変化(2025年から2026年)
- ジョーイ・オルティス:24.2% → 33.3%(9.1ポイント増)
- ジャクソン・チョーリオ:39.9% → 46.5%(6.6ポイント増)
- ウィリアム・コントレラス:34.9% → 37.1%(2.2ポイント増)
速くバットを振ること自体が、球団の方針というわけではない。重視しているのは、どの球にスイングするかを適切に判断することだ。
タイゼンはこう説明する。
「より良い球を振れば、バットスピードも上がる。チーム全体として、うちの打線はその点をうまくできていると思う。打つのに適した球を選ぶことは、より良いスイングを生み出し、バットを速く振ることにもつながる。球を見極めることが、私たちの取り組みの土台で、打つのに適した球が来れば、ほかの要素も自然とうまくかみ合ってくる」
今季、ブルワーズの打者が1打席あたりに見た球数は平均3.97球。オリオールズと並び、メジャー最多だった。その背景には、ブルワーズがスイングを控えていることがある。チームのスイング率は43.9%。短縮シーズンを除けば、2019年のエンゼルス以来、最も低い数字となった。
重要なのは、ストライクゾーンの外の球を追いかけないことだけではない。ゾーン内の球に対しても、振る球を選んでいる。ブルワーズは3年連続で、ストライクゾーン内の球に対するスイング率がメジャー最低だった。
ストライクゾーンに入っているからといって、必ずしも打ちやすい球とは限らない。だからこそ、どの球に手を出すかという判断は複雑で、細かな見極めが必要になる。
タイゼンは、球を見送ることにも意味があると話す。
「見送ることも、判断力を高めるための練習の一部。何かを上達させるには、その動作を繰り返す必要があり、その過程で居心地の悪さを感じることも受け入れなければならない」
打者が強い打球を打てる球に対してスイングするとき、それは自分の力を最大限に発揮する「Aスイング」になりやすい。そして、そのスイングは速い。タイゼンは、ブルワーズの打者が以前より強く振れるようになったのは、スイングする球の選び方が改善したためだと考えている。
細かな部分に関わる話だが、選手ごとのデータにも変化は表れている。
例えば、ジョーイ・オルティスだ。コービン・バーンズとのトレードでブルワーズがオリオールズから獲得した選手の一人だが、2025年から2026年までの2シーズンを通じて、規定打席に到達した打者のなかで下から4番目の打撃成績にとどまっていた。
それが今季は、wRC+ 103を記録し、リーグ平均を上回る打者となった。大きな改善だ。
オルティスのスイング率自体は、それほど変わっていない。ただし、スイングする球の選び方が変わった可能性がある。例えば、ストライクゾーンの中央から高めに来る球に対して、以前より頻繁にスイングするようになった。高めの球を打つのが得意なオルティスにとって、これは理にかなった変化だ。
オルティスは「自分の得意な球には積極的にいきたい。バットスピードについては、特に意識しない。そうした数値について考えることもない。自分が気にしているのは、強い打球を打てているか、良いスイングができているか、そして打つべき球を振れているか、ということ」と話す。
ジャクソン・チョーリオも同様だ。22歳のチョーリオは2026年、自己最高となるwRC+ 130を記録した。今季、チョーリオよりもスイング率を大きく下げた規定打席到達打者はわずか6人。そのなかには、カブスのピート・クロウ=アームストロングやレイズのジュニオール・カミネロも含まれる。いずれも、メジャー屈指の打者だ。
大切なのは、ただ辛抱強く待つことではない。待ちすぎず、打つべき球を見極めることだ。
タイゼンはこう語る。
「自分が狙う球、そして打つのに適した球に対して積極的にいくことが大切です。チーム全体で、それを優先事項として共有している。選手たちはその方針をしっかり守り、粘り強く取り組んでくれている。打つのに適した球が来れば、自分の力を最大限に発揮できると分かっている」
言うほど簡単なことではない。ポストシーズンでは、打ちやすい球が来る機会も限られるため、さらに難しくなる。それでも、ブルワーズは自分たちの打撃方針を貫いている。
自分の力を最大限に発揮できる「Aスイング」を、これまで以上に多く繰り出す。その積み重ねが、これから数週間の戦いで違いを生むかもしれない。
