【メッツ3−15フィリーズ】フィラデルフィア/シチズンズバンクパーク、6月20日(日本時間21日)
ブライス・ハーパー(33)は三塁に到達することだけを考えていた。
メジャー初のサイクル安打達成に三塁打が必要だった。五回、左中間へライナーを放つと、打席から全力で飛び出した。
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ハーパーが三塁へ向かう動きを止めることは誰にもできなかった。そして、シュワーバーは分かっていた。
一塁走者だったシュワーバーは、ハーパーが打席に向かう前から考えを理解していた。三回に放った2本を含め、この試合で3本塁打していたシュワーバーは、ハーパーが歴史的快挙を達成する機会を妨げないように一塁コーチのパコ・フィゲロア(43)と作戦を練った。
シュワーバーは「パコ(フィゲロア・コーチ)に聞いた。『もし自分が本塁でアウトになりそうな場合、挟殺プレーに持ち込んでハーパーを三塁へ進ませたら、三塁打の記録になるか』と聞いた」と振り返る。
もちろん、答えはノーだ。ハーパーの記録は二塁打となる。そのため、シュワーバーは選択肢が1つしかないと分かっていた。
走ることだ。
シュワーバーは、長年にわたり三塁打やランニング本塁打を生み出してきた中堅左の傾斜したフェンスに言及し、「以前そのことについて話し合い、『モンティーズ・アングルを狙うべきだ』と伝えた。しかし、ハーパーは打席に入り、中間へ打球を放った。『もし(三塁コーチから)ストップのサインが出ても、無視して走り抜けるつもりだ』と考えた」と明かす。
幸いなことに、三塁を回るシュワバーに激しく腕を回したアンソニー・コントレラス三塁コーチ(42)ら全員が、ハーパーは二塁で止まらないと分かっていた。
シュワバーが無事に本塁を踏むと、二塁へ向かう途中でヘルメットを脱ぎ捨てたハーパーは三塁へ滑り込み、すぐに立ち上がって両腕を突き上げた。力強くガッツポーズをし、再び両腕を挙げた。
ハーパーはフィリーズの選手としてサイクル安打を達成した10人目の選手となり、2024年のウェストン・ウィルソン(31)以来の達成者となった。球団史上全体では11度目のサイクル安打となる(チャック・クラインが2度達成)。
ハーパーはこの偉業の位置づけについて「上位に入る。メジャーリーグのレベルでそれを達成できたことは間違いなく素晴らしい」と初サイクル安打に喜んだ。
ハーパーが「メジャーリーグのレベル」と強調した理由は、以前にもサイクル安打を達成しているからだ。2010年のNJCAA(全米短期大学体育協会)西部地区トーナメントでサザンネバダ大の選手としてサイクル安打を記録している。ハーパーはその翌日の夜にも再び達成しかけたが、その時は代わりに6打数6安打、4本塁打を記録するにとどまった。
15年間のメジャーリーグのキャリアでハーパーは何度も達成に近づいた。
試合時点で、三塁打が出ればサイクル安打達成という試合が21試合あった。そのうち10試合で、三塁打を放つ機会のある打席に立った。そのうち1試合では2度の機会があった。
しかし、過去のそうした機会では11打数1安打で、単打1本だった。
今回は阻まれることはなかった。
ハーパーは「何度か近づいたことはあった。しかし、それを達成できたこと、あの瞬間を味わえたことは本当に素晴らしい」と偉業を噛みしめた。
一方、シュワバーの全力疾走が見過ごされることはなかった。もっとも、ハーパーの指摘も的を射ていた。
シュワバーの3本塁打に言及し、ハーパーは「彼は今夜たくさんジョギングをした。だから、私のためにあのように三塁を全力で回ってくれたことに間違いなく感謝している。だが繰り返すが、彼は今夜少しジョギングをしていたから、あまり疲れていなかっただろう」と笑った。
サイクル安打の価値をさらに高める背景には、ハーパーが直近7試合で22打数1安打(打率.045)という状態でこの日の試合を迎えた事実がある。20打数以上で単打1本のみに終わった7試合の期間は、キャリアで3度目となる。1度目は約10年前の2016年9月13日から20日まで、2度目は2018年6月10日から18日までだった。
そのため、ハーパーはいくつかの変更を加えた。1つ目の変更点として、めったに行わないグラウンドでの早出打撃練習を実施した。
ハーパーは「本塁打を打とうとしていた。ただ楽しもうとしていた」と意図を明かした。
この珍しい打撃練習で本塁打を放っただけでなく、シチズンズバンクパークで打球がめったに届かない場所である3階席まで飛ばした。
2つ目の変更点はさらに思い切ったものだった。ハーパーは通常、試合前の室内練習場でのみ使用する「重量バット」を実際の試合で使用した。
ハーパーは「約1カ月前、ケビン・ロング打撃コーチに『試合でこのバットを振りたい』と伝えたが、実行しなかった。『もういい、今日やってやる』という心境になった」と経緯を説明した。
ハーパーは通常、「34/31.5」のバットを使用する。これは34インチ(約86センチ)、31.5オンス(約893グラム)を意味する。この試合では「34/35=長さ34インチ(約86センチ)、重さ35オンス(約992グラム)」のバットを使用しており、ハーパーは「常軌を逸している」と認めた。
次の試合でも再び使用すると言って間違いないだろうか。
ハーパーは「もちろんだ。確実に使う」と答えた。
