スモールベースボール復活?バントがMLBで増えている理由とは

4:02 AM UTC

現代野球の球速、回転数、変化量を見て、ある結論にたどり着いているのはレイズのケビン・キャッシュ監督だけではない。

「球界全体として、打つというのは本当に難しいということを学びつつあるんだと思う」とキャッシュ監督は語った。

その難しさゆえに、レイズを含む多くのチームは“ある選択”を取らざるを得なくなっている。

バントだ。

今季は、ABSチャレンジシステムの導入、歴史的なルーキーの活躍、不振チームの監督交代など、すでに多くの話題にあふれている。しかしその裏で、消えかけていたプレーが予想外の復活を遂げている。

「バントは本当に武器になる」とホワイトソックスのウィル・ベナブル監督は語った。

実際、4日(日本時間5日)時点でのバントヒット率は2015年以来最高、送りバント試行率も2021年以来最高となっている。なお2021年は、大谷翔平以外の投手もまだ普通に打席に立っていた最後の年だった。

※送りバント試行(Sac Att)は成功した送りバントだけでなく失敗したものも含む。途中でバントをやめて通常のスイングに切り替えた場合は含まれない。

バント技術はここ数十年で衰退してきた。長打を重視する流れと、「簡単にアウトを献上すること」を嫌う分析的思考がその背景にあった。
2011年公開の映画『マネーボール』での、ブラッド・ピット演じるアスレチックスのビリー・ビーンGMのセリフがそれを物語っている。
「三塁手が下がっていてもですか?」と選手が聞くと「どんな状況でもバントは禁止だ」とビーンGMは言い切る。
長年のデータ分析によって、送りバントは得点期待値を下げるケースが多く、生産性を損なうプレーであることが明らかになっていた(ベースボールサバントの新機能「Game Strategy Explorer」でも、送りバントを含む各戦術の平均的な結果を確認できる)。

さらに、2020年の短縮シーズンから両リーグでDH制が導入され、2022年に正式採用されると、投手が打席に立たなくなり、送りバントはさらに減少した。2022年にはブレーブスがシーズン終了直前の161試合目まで送りバントに一度も成功していなかった。

しかし、投球の進化がリーグ全体の出塁率を下げ、さらに2023年のルール改正によるベース拡大と牽制の制限が俊足選手を後押ししたことで、打者たちは再び“バント”を武器にし始めている。

「結局はチームにどんな人材がいるかによる部分も大きい。でも、今の投手たちがそれだけ優れているということでもある。こちらも工夫しないといけないし、試合を動かせる場面を生かさなければならない」とレイズ打撃コーチのチャド・モトーラは語った。

レイズは今週時点で、メジャー最多の送りバント数を記録していた。

送りバント数ランキング(2026年・4日時点)

レイズ:13
ブルワーズ:12
ホワイトソックス:10
アスレチックス:9
ダイヤモンドバックス:8
ロッキーズ:8
カージナルス:8

そして、この中の5球団はバントヒット数でもトップ5を占めている。

バントヒット数ランキング(2026年・4日時点)

ブルワーズ:12
ホワイトソックス:11
ダイヤモンドバックス:10
レイズ:8
ロッキーズ:7

ファングラフスによる2026年の推定年俸総額で13位のダイヤモンドバックスを除けば、これらのチームはすべてMLB全体で下位半分の低予算球団である。

これは偶然ではない。現代野球においては、長打力のある打者の獲得には大金が必要で、バントヒットや機動力は、低予算のチームが得点を奪うための有効な手段となっている。

「バントは本当に価値がある。特に自分たちのようなチームにとっては、少しでも有利な状況を作り続けることが重要なんだ」とホワイトソックスのルーキー外野手トリスタン・ピーターズは語った。

ピーターズは今週時点で5本のバントヒットを記録しており、メジャートップのデービッド・ハミルトン(ブルワーズ)に1本差だった。ハミルトンは5.8打席に1本というペースでバントヒットを記録しており、このままいけば今季29本に到達する計算になる。これは2008年にツインズのカルロス・ゴメスが30本を記録して以来最多となる。

一方、カージナルスの中堅手ビクター・スコット二世は極端なペースで送りバントを決めている。打席の6.8%で送りバントを試み、すでに7本成功。21世紀において、シーズン100打席以上で打席の6%以上で送りバントを試みた選手は、2012年のエンゼルス捕手ボビー・ウィルソン(6.5%)だけだった。

こうした個人の数字がシーズンを通して続くかは分からないが、複数のチームがバントを積極的に取り入れていることは明らかだ。

その効果が特に表れたのが、4月10〜12日にトロピカーナフィールドで行われたレイズ対ヤンキースのシリーズだった。

レイズは推定年俸総額27位、長打率22位。一方、ヤンキースは年俸総額3位、長打率2位。まさに対照的な両チームの対戦で、レイズのスモールベースボールがブロンクス・ボンバーズを翻弄した。

初戦ではテイラー・ウォールズの送りバントが追加点につながった。第2戦では、ウォールズと俊足のチャンドラー・シンプソンによる完璧なセーフティーバント2本を足掛かりに、延長10回に2点を奪った。

第3戦では八回裏、ジェイク・フレイリーが送りバントで二塁へ進むと、その三塁まで進み、スクイズで生還した。

レイズはこのシリーズをスイープ。すべての試合が1〜2点差の接戦だった。つまり、バントによるわずかな違いが、大きな意味を持ったのである。

「大事なのは繰り返しと状況判断だ。守備位置を理解して、相手が空けているスペースがあるなら、そこを突くべきだ」とシンプソンは語った。

ダイヤモンドバックスのトーリー・ロブロ監督は、自軍が長年バントを重視してきた理由について、「バント守備が苦手なチームがあるから」と語る。

「うまく使えて自信もつけば、右打者の打率向上にもつながる。バントヒットだけでなく、三塁手を前に引き出すことで通常ならアウトになる打球もヒットになるからだ」と説明した。

今のMLBでは力で制圧するタイプの投球が主流となっており、この流れはバントを簡単にしているわけではない。むしろ実際のバント成功は以前より難しくなっているとも言える。だからこそ、現在バントを武器にしているチームは相当な準備をしていることが分かる。

一方で、ブルワーズのパット・マーフィー監督は、球速上昇が逆にバントの機会を生んでいる面もあると指摘した。

「今は大柄な投手が多い。(投げた後に)急いで体勢を低くして打球を処理し、送球先を確認して正確に投げるのは簡単ではない」とマーフィー監督は語った。

ブルワーズは先月のブルージェイズ戦で、七回に3連続バントで勝ち越し点を奪った。四球でのランナーが送りバントで二塁へ進むと、セーフティーバントで三塁へ進塁、さらに本塁前へのスクイズで生還させた。

「メジャーだと、こういうプレーはあまり見なくなる。でも、まだ十分通用するんだ」とブリュワーズ先発ブランドン・スプロートは語った。

気温が上がり、得点も増えてくれば、今のバントペースは落ち着くかもしれない。それでも現時点では、バントはまだ“死んだ戦術”ではなかったことがはっきりしている。

MLB.comのアダム・ベリー、スコット・メルキン、アダム・マカルビーがこの記事の制作に協力しています。