2024年シーズン前の冬、南カリフォルニア発トロント行きのプライベートジェットにエンゼルスからフリーエージェント(FA)になった大谷翔平(31)が乗っていると、SNSで大騒ぎになった日のことを覚えているだろうか。
結局、多くの人が追跡していたその機体に大谷は乗っておらず、実際に乗っていたのはリアリティ番組『シャーク・タンク』で知られる実業家ロバート・ハージャベックだった。
いま、大谷は本当にトロント行きだ。ディフェンディング・チャンピオンのドジャースとともに、24日(日本時間25日)にロジャースセンターで開幕する2025年のワールドシリーズへ向かう。ブルージェイズは大谷を獲得できなかったが、看板スターのブラディミール・ゲレーロJr.が引っ張った圧巻のポストシーズンと第7戦を決めたジョージ・スプリンガーの一振りに支えられ、マリナーズとの壮絶なア・リーグ優勝決定シリーズ(ALCS)で十分に打撃を見せつけ、32年ぶりのワールドシリーズ進出を勝ち取った。
「相手(ドジャース)には素晴らしい選手がいるのはわかっている。こっちにもいる。大事なのはフィールドの上で全てが決まるってことだ」とゲレーロJr.は語った。
ブルージェイズがこの舞台に立つのは1992、93年の連覇以来。一方ドジャースは、1998〜2000年のヤンキース以来となる連覇を狙っている。
今シリーズは、シーズン当初から「ワールドシリーズ以外は失敗」と定義してきたドジャースと、昨季の最下位から立ち直り、この10月でついに勝ち上がってきたブルージェイズという、鮮やかな対比の構図でもある。
ロジャースセンターは第7戦。待望の勝利の余熱で依然として沸いているはずだ。対するドジャースは、ナ・リーグ優勝決定シリーズ(NLCS)でブルワーズをきっちりスイープ(4連勝)した締めくくりとして、大谷が1試合3本塁打に加えて、先発投手として6回無失点、10三振を記録した“歴史的一夜”を語り草にしながらトロントへ乗り込む。
第1戦は重要だ。過去120回のワールドシリーズで第1戦の勝者が世界一になったは76回(63%)。さらにワイルドカード導入後(1995年以降)の30シリーズでは24回(80%)だ。
試合日程と視聴方法
第1戦は24日(日本時間25日)、カナダのロジャースセンターで午後8時(米東部時間=日本時間25日午前9時)にプレーボール予定。
先発投手は?
ドジャース:ブレイク・スネル(左腕)5勝4敗、防御率2.35
少なくともワールドシリーズの第1、2戦は、ナ・リーグ優勝決定シリーズ(NLCS)でブルワーズを封じた同じ先発ローテ。第1戦はスネル、第2戦は山本由伸(27)で臨む。
スネルはNLCS第1戦のブルワーズ戦で8回無失点、10三振、無四球、1安打、打者27人で抑える好投。今ポストシーズン通算では3勝0敗、防御率0.86(21回で自責点2)、28三振、5四球。
ブルージェイズ:21日時点では未定
20日、21日にようやく一息つくブルージェイズには、第1戦でいくつかの選択肢がある。ケビン・ゴーズマンはヤンキースとの地区シリーズ(ALDS)、マリナーズとのア・リーグ優勝決定シリーズ(ALCS)ともに第1戦で先発したが、第7戦では第5戦から中3日で救援登板した。その登板を高強度のブルペンデーとみなすこともできるが、ルーキー右腕イェサベージを第1戦に起用し、ゴーズマンを第2戦に回す案もある。
いずれの順番にしても、マックス・シャーザーが第3戦、シェーン・ビーバーが第4戦に登板する可能性がある。クリス・バシットもリリーフ起用が続いているとはいえ、比較的長いイニングを投げられる状態を維持しており、柔軟な選択が可能だ。
予想スタメン
ドジャース:
大谷とムーキー・ベッツの1、2番は固定だが、それ以降の打順は対戦相手との兼ね合いで多少の入れ替えがある見込み。NLDSでは日ごとにオーダーを組み替えていたが、NLCSでは4試合すべてで同じ9人を先発起用した。シリーズ終盤にはデーブ・ロバーツ監督がウィル・スミスを3番に、テオスカー・ヘルナンデスを6番に下げている。
- 大谷翔平(DH)
- ムーキー・ベッツ(遊撃)
- ウィル・スミス(捕手)
- フレディ・フリーマン(一塁)
- トミー・エドマン(二塁)
- テオスカー・ヘルナンデス(右翼)
- マックス・マンシー(三塁)
- キケ・ヘルナンデス(左翼)
- アンディ・パヘス(中堅)
ブルージェイズ:もしボー・ビシェットがワールドシリーズで復帰すれば(本人は出場を明言している)、打線の構成は大きく変わる。その場合、DH起用となる可能性が高く、ジョージ・スプリンガーがコーナー外野に回る見込みだ。さらに第1戦ではブレイク・スネルが先発するため、左投手対策のオーダーになると予想される。
- ジョージ・スプリンガー(右翼)
- デービス・シュナイダー(左翼)
- ブラディミール・ゲレーロJr.(一塁)
- ボー・ビシェット(DH)
- アレハンドロ・カーク(捕手)
- アーニー・クレメント(三塁)
- ドールトン・バーショ(中堅)
- アイザイア・カイナー=ファレファ(二塁)
- アンドレス・ヒメネス(遊撃)
リリーフ投手陣の見通し
ドジャース:
佐々木朗希(23)がブルペン転向後に圧巻の投球を続け、守護神として定着している。つなぐ中継ぎの構成もほぼ固定されており、アレックス・ベシアが火消し役、アンソニー・バンダ、ブレイク・トライネン、エメット・シーアンが勝負どころで登板している。
ブルージェイズ:
ジェフ・ホフマンはポストシーズンに入り、クローザーとして安定感を発揮し、ワールドシリーズでも終盤を締める存在になりそうだ。ALCS第6、7戦では2イニングを投げる起用にも応え、シュナイダー監督の信頼を得ている。ルイス・バーランドはポストシーズン11試合中10試合に登板しており、どの回に投げるかがポイント。セランソニー・ドミンゲスもセットアッパーとして起用されている。変数は左腕ブレンドン・リトルで、ALCS第5戦では乱調だったものの、左投手は必要。ブレイドン・フィッシャーやヤリエル・ロドリゲスがより重要な場面を任される可能性もあり、クリス・バシットとエリック・ラウアーがロングリリーフ候補だ。
負傷情報
ドジャース:
ウィル・スミスは右手のひびを抱えながらもNLDSでスタメン復帰して以降、すべての試合で先発出場している。トミー・エドマンは右足首の状態は引き続き注意が必要。今季は2度負傷者リスト入りしている。救援右腕タナー・スコットは、下半身の膿瘍処置から十分に回復したとみられ、ワールドシリーズのロースター入り候補に挙がっている。
ブルージェイズ:
ボー・ビシェットの左膝の負傷がシリーズ前の最大の焦点だ。本人は「準備はできている」と話しているが、走塁練習で問題なく動けるかをチームが確認する必要がある。
アンソニー・サンタンダーはALCS中に背中を痛めてロースターを外れており、ワールドシリーズには出場できない。もう1人の気がかりはジョージ・スプリンガーだが、ALCS第5戦で右膝蓋骨に時速96マイル(約155キロ)の速球を受けたものの、第7戦で3点本塁打を放った姿から見ても問題はなさそうだ。
好調・不調の選手は?
ドジャース:大谷は歴史的な“1試合3本塁打&6回無失点10三振”の個人パフォーマンスを足がかりに、スランプを脱せるかが焦点。トミー・エドマン(15打数5安打)とウィル・スミス(15打数6安打)もNLCSで好調だった。
一方、アンディ・パヘスは今ポストシーズン35打数3安打。打撃では結果が出ていないが、エドマンが足首の不安を抱えている事情もあり、中堅のレギュラーでは代替案が乏しいため先発起用は続く見込みだ。
ブルージェイズ:いま最も熱い打者はゲレーロJr.。ポストシーズンで打率.442、6本塁打、OPS1.440、6四球、3三振。ドジャースは投手起用全体をゲレーロJr.中心に組み立てる必要がある。スプリンガーも好調で、クレメントは打率.429と、このシリーズで最も過小評価されている打者かもしれない。カークの打撃にもう少し上積みがほしいが、ここまでの流れでは贅沢な注文と言える。ALDS以降、打線は全体として機能しており、シュナイダー監督の仕事は「正しい順番で名前を書く」ことだけだ。どの組み合わせもこれまで奏功している。
ファンが知っておきたいこと
・ブルージェイズのワールドシリーズ出場は1993年以来、32年ぶり。その年の第6戦、ジョー・カーターのサヨナラ本塁打は今なお語り継がれる名場面だ。


