過去3年のオフには、野球界で最高の打者が3年連続でフリーエージェント市場に出た、と言っていいだろう。2022-23はアーロン・ジャッジ、2023-24は大谷翔平、2024-25はフアン・ソトだ。いずれのオフも、「市場で最強の打者は誰か」をめぐって大きな異論はなかった。
今回は事情が少し違う。魅力的な打者は多いものの、久々に「誰がナンバーワンか」で見解が分かれる。
そこで今回の「打者パワーランキング(FA編)」を紹介したい。14人の投票者にこの市場に出ている最高の打者を順位付けしてもらった結果、「カイルがトップ」という点では意見が一致した。どちらの「カイル」か。
僅差でカイル・シュワーバーがカイル・タッカーを上回った。
- ※補足すると、これは打者パワーランキングなので、投票者は攻撃面の貢献のみ、特に2026年に期待される成績に焦点を当てて評価している。
- ※19日時点でまだFAの選手のみ対象。再契約が決まったジョシュ・ネイラー(マリナーズ)、クオリファイング・オファーを受諾したトレント・グリシャム(ヤンキース)とグレイバー・トーレス(タイガース)らは除外している。
以下が2025-26 フリーエージェント打者パワーランキングだ。
(1)カイル・シュワーバー
今季は守備に就く機会がほとんどなく、162試合中154試合でDHとして先発した。ただし、このランキングは純粋に攻撃面だけを評価する。フリーエージェントの中で最も優れた打撃成績を残したのはシュワーバーと言っていい。実際、リーグ全体で最高級の打撃シーズンに迫った。MVP初受賞を阻んだのは大谷ただ一人で、打点はメジャー最多の132打点、本塁打は56本で2位、長打率.563で4位、OPS+150(100が平均値)で6位だった。特筆すべきは、32歳にしてキャリア最高のシーズンを送ったこと。多くのFA選手が直面する一般的な年齢的な衰えを覆す可能性を示している。もっとも、近年ずっと打ち続けている。2021年以降の本塁打219本は、アーロン・ジャッジと大谷に次ぐ数字だ。
(2)カイル・タッカー
タッカーは過去5シーズンにわたり安定して卓越した打撃を続け、打率.277、出塁率.365、長打率.514(OPS+ 145)。この期間の規定到達打者で出塁率と長打率の両方でタッカーを上回るのは7人しかいない。1月に29歳になる若さを踏まえると、まだ未開拓の伸びしろが残っている。ここ2年は負傷もあり、2024年はOPS .993と自己最高だったが、78試合出場にとどまった。2025年も5月末時点でOPS .911と好調だったが、右手の微小な骨折が当初は見落とされ、プレーを続けた末に9月に負傷者リスト入りした。万全の体調でフルに戦えるシーズンが来れば、脅威になる。
(3)ピート・アロンソ
メジャー通算7シーズンで162試合換算の平均本塁打は42本。2020年を除く各フルシーズンで34本塁打以上を放っている。耐久性も高く、この期間の欠場は通算24試合のみ。2019年のデビュー以降、出場1008試合、712打点はいずれも最多、264本塁打は同期間で3位。2024年はメッツ再契約前のフルシーズンで自己最低の成績だったが、今季は長打率.524、OPS+144、38本塁打、126打点と巻き返し、今オフの2度目のFA挑戦はより好条件になる。
(4)ボー・ビシェット
ビシェットにとって幸運だったのは、フリーエージェント(FA)資格を得たタイミングが今オフだったことだ。昨季は負傷の影響で81試合の出場にとどまり、OPS .598と本来の実力を発揮できなかった。しかし今季は本来の打撃に復調し、打率.311、出塁率.357、長打率.483(OPS+129)を記録。これはそれまでの通算成績である打率.299、出塁率.340、長打率.487(OPS+126)とほぼ同等の数字だ。
さらに、3月に28歳になる若いFAであることもプラス材料となる。昨季の不振はあくまで例外と見なされ、各球団に安心感を与えるだろう。
(5)コディ・ベリンジャー
ベリンジャーはどんな打者か。その答えは2019年のナ・リーグMVP以降、毎年のように変化してきた。現時点の答えは前向きだ。ヤンキース移籍1年目の今季は、打率.272、出塁率.334、長打率.480(OPS+125)、29本塁打、98打点、13盗塁と、MVPシーズン以来で2番目に良い打撃成績を残した。ただし、不確実性も存在する。今季のOPS .909のうち、29本塁打のうち18本は、左打者に有利とされるヤンキースタジアムで記録している点で、ヤンキース以外のチームでは注意が必要だ。
(6)アレックス・ブレグマン
アロンソと同様、ブレグマンは2年連続で今オフの市場に出ており、今回はより良い契約を狙っている。その見込みは高いはずだった。実際、5月下旬には打率.299、出塁率.385、長打率.553と、アストロズ時代の初期にMVP候補と評価された時期を思わせる内容だった。しかし、その時期に右大腿四頭筋(太もも前側)を痛めて数週間欠場。復帰後63試合は打率.250、出塁率.338、長打率.386と控えめな成績にとどまった。それでも突出した選球眼とコンタクト能力を備えるブレグマンは、32歳のシーズンに入る選手として多くの球団にとって魅力的である。
(7)村上宗隆
今オフの市場で最大の“不確定要素”かもしれない。ポスティング交渉期間は米東部時間12月22日午後5時(日本時間23日午前7時)まで。村上はまだ25歳で、日本での大きな実績と将来性がある一方、MLBでコンタクト面の課題がどう出るかという疑問も残る。ヤクルト時代の2022年の異次元の成績(長打率.710、56本塁打)は天井の高さを示し、負傷で出場が限られた2025年(長打率.663、56試合で22本塁打)もそれを裏づける。1年後にこのリストを振り返ったとき、村上をトップにすべきだったと思うかもしれないし、トップ10の圏外と見るかもしれないし、その間かもしれない。どのように推移するか、非常に興味深い。
(8)エウヘニオ・スアレス
もしこのランキングをダイヤモンドバックスがスアレスをマリナーズへトレードした7月末時点で作成していたなら、スアレスはもっと上位にランクインしたのは間違いない。当時は106試合で長打率.576、36本塁打と、2024年後半の爆発からほぼ1年にわたり強力な打撃を維持していた。しかし、7月に34歳になったスアレスは、シアトル復帰後に大きく苦しみ、レギュラーシーズンは打率.189、OPS .682、ポストシーズンも打率.213、OPS .700にとどまった。とはいえ、2026年に極端な好不調の中間あたりに落ち着いたとしても、長打力を求める打線にしっかりとインパクトを加えられる打者だ。
(9)岡本和真
村上と同様に、岡本は日本で輝かしい実績を積み上げ、2025年は負傷で出場が限られた後、今オフにポスティングされた。ただし、共通点はそこまでだろう。
岡本は29歳の右打者で、派手さはやや劣る(それでも十分に優れている)が、より安定した実績を持つ。2018〜23年に6年連続で30本塁打以上、今季は出場69試合にとどまりながらも15本塁打、OPS 1.014を残した。ポテンシャルの上限は村上ほど高くないかもしれないが、2026年に米球界へスムーズに適応できる可能性は高いと見られる。
(10)ホルヘ・ポランコ
2025年のポランコの成績推移は目まぐるしかった。両打ちの打者は3〜4月に打率.384、出塁率.418、長打率.808(OPS 1.226)、9月も打率.329、出塁率.380、長打率.634(OPS 1.014)とジャッジ級の数字を並べる一方、その間の期間はOPS .678にとどまった。とはいえ、2024年のシアトル1年目が厳しかったあとで、2025年はOPS .821、26本塁打と大きく持ち直した。今後について32歳の先行きは読みづらいが、少なくともこの2カ月の爆発は十分な期待材料になる。
投票者: Chris Begley, Jason Catania, Scott Chiusano, Daniel Feldman, Doug Gausepohl, Brent Maguire, Travis Miller, Brian Murphy, Arturo Pardavila, Andrew Simon, David Venn, Zac Vierra, Tom Vourtsis, Andy Werle
