ナ・リーグ優勝決定シリーズ(NLCS)第1戦は、ブルワーズの右腕ジェイコブ・ミジオロウスキー(24)とドジャースの左腕タリック・スクーバル(29)が先発する豪華な顔合わせとなる。どの角度から見ても、非常に楽しみな先発投手同士の対決だ。
ブルワーズは、2026年ナ・リーグのサイ・ヤング賞受賞が有力視されるジェイコブ・ミジオロウスキーを先発に立てる。先発投手として史上屈指の球速を誇り、今季は打者から最も安打を許しにくい投手として圧倒的な成績を残した。防御率1.80は、規定投球回に到達した先発投手として過去50年でも数えるほどしかない防御率2.00未満の数字だ。
対するドジャースは、ア・リーグのサイ・ヤング賞を2年連続で受賞したタリック・スクーバル。サイ・ヤング賞の連続受賞自体が極めて珍しく、今季もシーズン途中まで3年連続受賞を狙える成績だった。トレード期限にア・リーグからナ・リーグへ移籍したため、その対象から外れた。
スクーバルは過去3シーズンの投手WAR(控え選手と比べて何勝分の価値を生み出したかを示す総合指標)でMLBトップ。ドジャース移籍後も、ナ・リーグの投手ではWAR1位だった。
さらに、左肘の手術から驚異的な早さで復帰したことでも知られる。その手術の術は今や、スクーバルの名前にちなんで「Skubal Scope(スクーバル・スコープ)」と呼ばれている。
この先発対決は、実力だけでなく背景まで含めて見どころが多い。
まず、両者ともMLBを代表する投手だ。スタットキャストのxERA(予想防御率)では、今季の右腕先発でミジオロウスキーを上回る投手はゼロ。左腕でもスクーバルより上位に入った投手は1人しかいなかった。
さらに、両チームが置かれた状況も興味深い。ミジオロウスキーが率いるブルワーズは、昨季のNLCSでドジャースに4連敗して敗退。その雪辱を期すとともに、球団史上初のワールドシリーズ制覇を目指している。
一方のスクーバルは今オフにFAを迎える予定で、今季途中に大型トレードでドジャースへ加入した。大きな期待を背負う左腕が狙うの目標は、ドジャースをワールドシリーズ3連覇へ導くことだ。MLB史でもめったにない偉業が懸かっている。
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さらに因縁もある。ブルワーズはトレード期限前にスクーバル獲得へ動いたものの、最終的に最も好条件を提示する球団にはならなかった。その判断によって、まさに今回のようにポストシーズンでスクーバルと対戦するリスクを背負った。
「獲得しなくても投手陣は十分だった」で済む話でもない。もしブルワーズが敗退し、その大きな要因としてスクーバルに打線を封じ込められれば、当時の判断はウィスコンシン州で長く議論され続けるだろう。
しかも、この先発対決は一度だけとは限らない。シリーズが第5戦までもつれれば、ドジャースタジアムで再び両者が先発する可能性がある。
打者にとっては、厳しい戦いになりそうだ。
これほど注目度の高い先発対決が、過去のポストシーズンにどれほどあったのだろうか。
もちろん、メジャーデビューからまだ1年余りのミジオロウスキーを、輝かしい実績を残した殿堂入り投手たちと同列に語るには早い。それでも現在の投球内容に限れば、これ以上を望むのは難しいほど圧倒的だ。
この比較では、対戦時にどれだけ高いレベルで投げていたかも重要になる。スティーブ・カールトン氏やトム・シーバー氏は球史に残る名投手だが、30代後半から40代前半に入り、全盛期を過ぎてから実現した対決では意味合いが違う。長く偉大なキャリアを築いた実績と、その試合を迎えた時点で最高の投球をしているかは別の話だ。
では、どうやって比較するのか。その方法を説明する前に、まず結論から紹介しよう。
今回のミジオロウスキー対スクーバルは、過去55年のポストシーズンにおける先発投手同士の対決で上位1%に入る。
投手の実力を数値化する方法の一つが、ベースボールサバントの「Enhanced Game Score(強化版ゲームスコア)」だ。
もとになった「Game Score(ゲームスコア)」は、投球回、アウト、三振、四球、安打など通常の投手成績をもとに加点・減点して、1試合の投球内容を評価する指標。たとえば1998年にケリー・ウッド氏が20三振を記録した伝説的な試合は、ゲームスコアでは9イニングを投げた先発投手として史上最高の評価となっている。
Enhanced Game Scoreは、そこにMLBのシニア・データ・アーキテクト、トム・タンゴ氏による改良を加えたもの。さらに直近1000日間を対象とし、最近の登板ほど比重を高くして評価する。
データは1971年までさかのぼるため、ある時点で誰が最も優れた投手だったかだけでなく、その投手がいつ絶頂期を迎えたかも分かる。
この方式で史上最高の評価を受けた投手はペドロ・マルティネス氏。ピークは2001年5月31日だった。1999、2000年は今でも「史上最高の投手シーズン」を語る際に必ず名前が挙がるほど圧倒的。2001年も5月終了時点まで11先発で防御率1.44、121三振を記録していた。
マルティネス氏に続くの投手は、2016年のクレイトン・カーショー、1971年のビーダ・ブルー氏、1986年のドワイト・グッデン氏、1995年のグレッグ・マダックス氏。トム・シーバー氏をはじめ、ランディ・ジョンソン氏、ロジャー・クレメンス氏、スティーブ・カールトン氏ら歴代の名投手も上位に並ぶ。
この指標を使えば、投手のキャリアがどう推移したかも分かりやすい。たとえば今回の第1戦で先発するスクーバル、ミジオロウスキーとクリス・セールの推移を比べると、3人ともキャリア序盤から評価を大きく伸ばしている。
セールはレッドソックス時代の後半に負傷の影響で一度数字を落としたものの、ブレーブス移籍後に再びトップレベルへ戻った。そこまでの歩みは異なるが、現在のスクーバルとミジオロウスキーも、それに匹敵する高い評価を受けている。
この指標による現在のトップ5は、1位スクーバル、2位山本由伸(28)、3位クリス・セール、4位ミジオロウスキー、5位キャム・シュリットラー(25)となっている。
このランキングは、過去のどの時点でも算出できる。たとえば1990年8月15日時点では、1位ロジャー・クレメンス氏、2位オーレル・ハーシュハイザー氏、3位デーブ・スチュワート氏、4位ブレット・セイバーヘイゲン氏、5位フランク・バイオラ氏。1975年の同日は、1位トム・シーバー氏、2位アンディ・メサースミス氏、3位バート・ブライレブン氏、4位ドン・サットン氏、5位ジム・パーマー氏だった。
今季の開幕時点では、1位スクーバル、2位ザック・ウィーラー(36)、3位ポール・スキーンズ(24)、4位クリストファー・サンチェス(29)、5位セール。山本が僅差で続いていた。
ミジオロウスキーの開幕時点の順位が低かった理由には、前年までの実績がまだ少なかったからだ。2025年は66回を投げて防御率4.36。この指標は直近1000日間の成績を加重平均しており、2026年の投球内容を最も重く評価しながら、過去2年間の実績も反映する。そのため現在も4位にとどまっているが、今後も現在の投球を続ければ、近いうちに1位へ浮上する可能性は高い。
つまりNLCS第1戦は、現在のランキング1位スクーバルと4位ミジオロウスキーの対決となる。数字を見ても、「これ以上ない先発対決」という印象と一致する。
では、実際にこれほど豪華な顔合わせは過去にどれだけあったのか。
1971年以降、ポストシーズンで先発投手が登板した試合は約1500試合。その中で、この指標のトップ4に入る投手同士が対戦したケースはわずか13試合で、全体の約1%にすぎない。
しかも、そのうち1試合は先週行われたばかりだった。ナ・リーグ地区シリーズ(NLDS)で山本とセールが投げ合った一戦で、トップ4同士の対決は6年ぶりだった。
過去の顔ぶれを見ても、トップ4同士の対決はごく限られている。今回のスクーバル対ミジオロウスキーも、その特別な一戦に加わる。
1971年以降、ポストシーズンで実現したトップ4入り先発投手同士の対決
- 1981年NLDS フェルナンド・バレンズエラ(ドジャース)vs.ノーラン・ライアン(アストロズ)
- 1985年NLCS バレンズエラ(ドジャース)vs.ジョン・テューダー(カージナルス)
- 1986年NLCS ドワイト・グッデン(メッツ)vs.マイク・スコット(アストロズ)
- 1986年ワールドシリーズ グッデン(メッツ)vs.ロジャー・クレメンス(レッドソックス)
- 1990年ALCS デーブ・スチュワート(アスレチックス)vs.クレメンス(レッドソックス)=2度
- 2014年NLDS クレイトン・カーショー(ドジャース)vs.アダム・ウェインライト(カージナルス)
- 2016年NLDS カーショー(ドジャース)vs.マックス・シャーザー(ナショナルズ)
- 2016年NLDS ジェイク・アリエッタ(カブス)vs.マディソン・バムガーナー(ジャイアンツ)
- 2018年ALCS ジャスティン・バーランダー(アストロズ)vs.クリス・セール(レッドソックス)
- 2019年ワールドシリーズ ゲリット・コール(アストロズ)vs.シャーザー(ナショナルズ)
- 2020年ア・リーグ・ワイルドカードシリーズ コール(ヤンキース)vs.シェーン・ビーバー(ガーディアンズ)
- 2026年NLDS セール(ブレーブス)vs.山本由伸(ドジャース)
これだけだ。今回の対決以前に該当する顔合わせは、以上で全てとなる。
では、なぜ1991年から2013年まで該当する対決がなかったのか。惜しいケースはいくつかあった。
2001年にはランディ・ジョンソン氏とグレッグ・マダックス氏が、両者のポストシーズンで唯一対戦した。ただ、全盛期を過ぎつつあったマダックス氏は当時トップ5圏外。マダックス氏はペドロ・マルティネス氏、ロジャー・クレメンス氏とポストシーズンで対戦せず、ジョンソン氏とマルティネス氏の対決も実現しなかった。
この期間で最も近かった例は2010年。ランキング5位のティム・リンスカム氏が、1位ロイ・ハラデー氏、2位クリフ・リー氏とそれぞれ対戦した。あと一歩だった。
では、先発2人の順位を平均して比較するとどうなるか。
今回のスクーバル対ミジオロウスキーは、1971年以降に行われた約1500試合のポストシーズン先発対決で、歴代3位タイの豪華カードとなる。
歴代1位は1986年NLCS第1戦。ランキング1位のグッデン氏と2位のスコット氏が対戦した。1位と2位が直接投げ合った唯一のケースだ。グッデン氏は1985年、スコット氏は1986年にサイ・ヤング賞を受賞。試合もスコット氏が14三振を奪って完封し、1-0で決着する投手戦となった。
次点は1990年ALCS第4戦。1位クレメンス氏と3位スチュワート氏が対戦した。スチュワート氏は8回1失点と好投した一方、クレメンス氏は二回にストライクゾーンを巡って抗議し、退場となった。
そして3位タイに入るのが今回だ。スクーバル対ミジオロウスキー。1位対4位、あるいは2位対3位という過去の数試合と肩を並べる。
「これ以上ない先発対決」と感じるなら、その印象は正しい。実際、過去を振り返っても、これを上回る顔合わせはほとんどない。
100勝チーム同士がNLCSで対戦するだけでも珍しい。昨季NLCSの再戦であり、2018年以降では3度目の顔合わせでもある。そして何より、これほどの先発投手同士がポストシーズンで直接ぶつかる機会は滅多にない。
しかも今後1週間で、同じ対決をもう一度見られる可能性まである。
