ペイトン・トールは現役引退後、間違いなくメディアの世界で活躍する。ただ、ボストン期待の左腕は今週末に24歳の誕生日を迎える。その日は、まだまだ先になりそうだ。
自然なユーモアと、全力で楽しむ姿勢。そこにグラウンド上の実力も加わるトールは、今の野球界が誇る、とびきり魅力的な存在の一人だ。
ブルワーズとレイズが対戦するワールドシリーズで、MLBの選手リポーターに選ばれたトール。その人選は、まさに大正解だった。
トールは22日のメディアデーと、23日の第1戦開始前に、その役割を果たした。
野球にたとえるなら、三者三振の快投だった。もっとも、タッチアウトにする際に相手を抱き締めたり、試合中に投球の合間にマウンドで腕立て伏せをしたりする選手だ。驚くことではないのかもしれない。
トールのメディア挑戦から、選りすぐりのハイライトを紹介しよう。
まずは、滑り台から
両リーグで指名打者制が採用されているため、トールがメジャーの試合でスライディングを披露する機会は、ほとんど訪れないかもしれない。身長6フィート6インチ(約1.98メートル)、体重250ポンド(約113キロ)の巨体を誇る左腕が、二塁打を放って二塁へ滑り込む姿は、きっと見応えがあったはずだ。その代わりと言ってはなんだが、アメリカンファミリーフィールドでバーニー・ブルワーの滑り台に挑戦した。
「やばい、うまく息ができない。緊張する。これ、コンテンツのためだよね?」とトールは笑顔で滑り台の上に立っていた。
そして思い切って滑り出すと、ジェットコースターに乗った子どものような悲鳴を上げた。実際、大きな子どものような人柄を考えれば、ぴったりの反応だった。
滑り終えたトールは、おなじみの豪快な笑い声を響かせた。
「大丈夫。無事だった。漏らさないですんだよ」
イェリッチをめぐる仕掛け
トールは予めテレビに向かって、これから行うイタズラを説明した。「クリスチャン・イェリッチが君の親友だって、みんなに伝えてみる。どんな反応をするか見てみよう」
最初の相手はギャレット・ミッチェル。驚いたように目を見開いた。
「それは特別だね。本当にうれしい」とミッチェルは笑顔で話した。
「この球団に入って以来、彼は僕が道を踏み外さないように支えてくれて、進むべき道や、プロ野球選手としてのあり方を教えてくれた。いろいろなことをじっくり話す時間も、たくさん過ごしてきた。だから、本当にうれしいよ」
次の相手は、チャド・パトリックだった。
「本当にそう言ったの?」とパトリックは尋ねた。
「いや、まあ、彼の言葉を間違って伝えたくはないからね」と、トールは濁した。
昨季、ボストンでトールとチームメートだったカイル・ハリソンは、信じていない様子だった。それでも、気さくに話に乗った。
「本当にそう言ったかは分からないけど、イェリは素晴らしい人だ。僕らの主将だし、みんな大好きだよ」とハリソンは話した。
ブライス・トゥラングとアーロン・アシュビーは、トールが伝えた「イェリッチの言葉」を聞くと、すっかりその気になった。
「彼は最高だよ。ロッカーも一緒なんだ。いつも話しているし、学ぶことが本当に多い人だ。グラウンドの中でも外でも、いろいろ学ぼうと質問してきた。僕がもっと若かった頃から、いつもよくしてくれた。本当にありがたい存在だよ」とトゥラングは話した。
「信じられないくらいうれしい褒め言葉だ。最初に僕の面倒を見てくれた選手の一人だった。MVP経験者がそうしてくれるのは、本当に特別なことだった。正式に主将と呼ばれる前から、彼は僕らの主将だった。このチームのすべてを体現してくれる、本当に特別な存在だよ」とアシュビーは話した。
そして、真相を明らかにする時が来た。
トールはイェリッチに、チームで一番の親友は誰かと尋ねた。
「正直、全員だよ」と主将は答えた。
その答えに、トールは満面の笑みを浮かべた。まるで自分の投球でレッドソックスをワールドシリーズへ導いたかのようだった。
「それ以上ない最高の答えだ。取材した全員に、あなたが親友だって伝えてきたから、完璧だよ」とトールは話した。
トール、テールゲートパーティーへ
試合前に駐車場で飲食を楽しむテールゲートパーティーは、主にアメリカンフットボールの文化だが、野球場でも行われる。その代表の一つが、アメリカンファミリーフィールドだ。そんなミルウォーキーで1982年以来となるワールドシリーズの試合を前に、盛り上がるファンと交流する機会を、トールが逃すはずはなかった。地元名物のブラートヴルストを食べると、早くもリーグ最高のテールゲートスポットだと結論付けた。
トールは、ビンの王冠の形をした大きなかぶり物を着けたファンの一団を見つけた。
「チーズヘッドは聞いたことがある。でも、”王冠ヘッド”は初めて聞いた。ここでは、それでいくわけ?」とトールはファンに話しかけた。相手がメジャーリーグの投手だと、ファンたちが気付いていたかは分からない。
同じウィスコンシン州のNFLチーム、パッカーズのファンは、チーズヘッドを被るのが伝統だ。「ブルワーズファンにも、自分たちだけのものが必要なんだ」と、トールと話していた男性の一人は答えた。
その特大の王冠をかぶったトールは、「結構今日、汗かいたでしょ?」と借りた男性に冗談を飛ばした。
野球ファンもSNS好きも、トールの次のメディア出演を待ち望んでいるだろう。
