この日、レイズのクラブハウスには、アニメをテーマにした用具が数多く並んでいた。プレーヤーズ・ウィークエンドに合わせ、選手たちは子どもの頃に好きだったものをそれぞれに表現した。
アニメ『トムとジェリー』のファンとして知られるヤンディ・ディアスは、片方にトム、もう片方にジェリーを描いたスパイクを用意。ライアン・ビレイドはテキサスで育った自身のルーツを表現した複数のバットを披露し、そのなかには『キング・オブ・ザ・ヒル』仕様の一本もあった。チャンドラー・シンプソンのバットには、もちろん、黄色い文字で『ザ・シンプソンズ』のデザインが施されていた。
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しかし、アニメ界のレジェンドにスパイクをデザインしてもらった数少ない1人が、リッチー・パラシオスだ。
パラシオスのスパイクを発案したのは、ヤードリー・スミス。1987年に『トレイシー・ウルマン・ショー』内の短編として放送が始まった長寿アニメで、当初からリサ・シンプソンの声を務めている。
「素晴らしい仕事をしてくれた。履くのがもったいないくらいだけど、実際に履くつもりだ。自分にとって特別なものを身につけることができてすごくうれしい」とパラシオスはクラブハウスで語った。
この特注スパイクの価値を理解するには、まず両者の個人的なつながりを知る必要がある。
29歳のパラシオスと62歳のスミスを引き合わせたのは、パラシオスの親友の一人であるダイヤモンドバックスの投手ドレイ・ジェイムソンだった。レイズの二塁手は1月、スミスが新たに始めたポッドキャスト「Guard the Yard」のインタビューに出演。そのエピソードは2日前に公開された。
パラシオスは、インタビューに向けたスミスの入念な準備に感銘を受けた。「最高だった」という会話をきっかけに、意外な友情が芽生え、今季序盤にレイズがロサンゼルスを訪れた際には、一緒に夕食も取った。
「初めて一緒に座って話したときと変わらず、彼は周囲を明るく照らす存在だ、会った瞬間に、『ねえ、あの人と友達になってもいい?』と思わせるような人だ」とスミスは後日公開された動画で語っていた。
シーズン開幕当初、スミスはパラシオスへサプライズを贈っていた。ロングアイランドに拠点を置くルーシア・フットウェア社のアンソニー・デルーシアが製作した一足のスパイクだ。デルーシアは何年も前から、パラシオスの特注用具を手がけている。
スミスがデザインを考案し、デルーシアが形にした。完成品は、スミスが『ザ・シンプソンズ』で築いてきた歴史と、パラシオスの個性を見事に融合させたものとなった。
片方のスパイクには「家賃は毎日が支払日」と記されている。パラシオスが大学時代に叔父から聞いた教えで、現在も頻繁に口にする言葉だ。
もう片方には“Gratitude. Fortitude. Joy.”(感謝。不屈の精神。喜び)という3つの言葉が入っている。これは、スミスがパラシオスのことを表現する際に使う言葉だという。
「うれしかった。胸がいっぱいになったよ」とパラシオスは語った。
それぞれのスパイクの反対側には、スミスが演じるリサ・シンプソンが異なるデザインで描かれている。一つは空中を飛ぶリサで、スミスは「彼女の精神を本当に美しく表現している」と説明した。もう一つは、シーズン4第13話「セルマの選択」で、リサが「リザード・クイーン」として現れる姿だ。
その絵の上には「I am … built different(自分は……他とは違う)」と記されている。これはパラシオスと弟ジョシュア・パラシオスが、衣料品や地域貢献活動に用いているブランド「Built Different」にちなんだものだ。
片方のかかとには、『ザ・シンプソンズ』を象徴する黄色でパラシオスの背番号1が描かれており、もう片方には、濡れた野球ボールが描かれている。ニューヨークでの幼少期に、ドミニカ共和国出身のトレーナーと水にぬれたソフトボールを打っていたという、ポッドキャストで語った思い出にちなんでいる。
パラシオスは今週末に使用する予定の『ザ・シンプソンズ』仕様のバットも用意している。バレル部分には自身の名前が入っており、グリップの近くには3つ目のエイが描かれている。(アニメに登場する有名な3つ目の魚に由来していると見られる)グリップエンドの底面には、当然ながらリサ・シンプソンの絵と並んで背番号1が入っている。
「子どもの頃は、目いっぱい個性を出して自分を表現し、自分たちにとって意味のあるものを身につけるのが大好きだった。だからリーグ全体でそれができる週末が設けられているのは最高だ」とパラシオスは語った。
「この伝統をいつまでも続けてほしい。選手たちは子どもの頃に好きだったものや、財団、寄付活動など、自分たちが取り組める素晴らしい活動を紹介できる。その一員になれてうれしい」
