<イギリス1ー9アメリカ>米国ヒューストン・ダイキンパーク 3月7日(日本時間8日)
タリック・スクーバルが、ワールドベースボールクラシック(WBC)で再び米国代表として登板する可能性を残している。
本来は、プール戦でイギリス戦での先発後、タイガースへ戻り、レギュラーシーズンへ向けた調整を続ける。それが既定路線だった。しかし、米国の9―1の勝利で代表デビューを果たした後、スクーバルの考えは揺れている。まだ決断には至っていないが、祖国のために一度マウンドに立ったことで、もう一度投げたいという思いが芽生えている。
「これまでのキャリアの中でも、かなり難しい決断の一つになりそうだ」と試合後に語った。
2026年ワールドベースボールクラシック
今後については、タイガースや代理人、家族とも話し合う必要があるとし、「ここ数日のうちに決めるつもりだ」としている。それでも、米国代表のクラブハウスの雰囲気や、満員のスタンドが作り出す熱狂的な空気を体感したことで、思っていた以上にチームを離れがたくなっている。
「ちょっと考えが変わった。アメリカ人であることを誇りに思うし、あそこで投げて競い合えるのは特別なことだ。自分が子どものころからの夢のようなゲームを続けられるのも、多くの人の犠牲があるから。どうするかは考える」
イギリス戦では3回を投げて1失点。立ち上がりで先頭打者のネイト・イートンに初球を本塁打されたが、その後は立て直して5三振を記録した。球数は41球、直球の平均球速は97マイル弱(約156キロ)。相手のスイングの半分で空振りを奪うなど、内容は上々だった。
本人も「球のキレは良かったし、腕の状態も問題ない」と手応えを口にする。春先のこの時期でも、最高レベルの緊張感の中で投げることを楽しんでいるという。
本来なら、この1試合で代表での役割を終え、2連勝スタートの米国を後にタイガースへ戻るはずだった。だが、登板前に抱いていた思いと、登板後の今の気持ちは、すでに同じではなくなっている。
「こんな感情が湧いてくるとも、考え方が変わるとも思っていなかった。先発して、そのままキャンプに戻るつもりでかなり固まっていた。でも、今は状況が変わっているのは確か。だから、いろいろ話し合って自分にとってのプランを考えたい。正直、どうなるかはまだ分からない」
スクーバルが“もしかしたらもう一度投げるかもしれない”という憶測は、試合中のテレビ中継でのインタビューから広がった。中継でケン・ローゼンタールが「米国代表としてもう一度登板する可能性はあるのか」と尋ねると、スクーバルは笑いながらこう答えた。
「それは今は難しい質問だね。今は答えないでおくよ」
試合中は(再登板は)現実味が薄い話のようにも思えたが、試合後にはその可能性が現実的に感じられるようになった。WBC制覇を目指す米国代表にとって、サイ・ヤング賞投手であるスクーバルとポール・スキーンズの両エースを、できるだけ長くチームに留めておきたいのは当然だ。
スクーバルは現在、世界でも屈指の支配力を誇る投手の一人で、2025年シーズンは241三振を記録し、防御率2.21でア・リーグトップ。
ただし29歳の左腕は、2026年のフリーエージェントを前にした“契約最終年”に入る大事な時期で、キャリアを左右する大きな判断が伴う。
本人も、登板後は感情が高ぶりすぎており、米国代表に残るのか、それともスプリングトレーニングに戻るのか、すぐに結論を出せる状態ではないと認めた。
「今は決断できる精神状態じゃない」
気持ちが落ち着き、当初の予定通りタイガースへ戻ることになり、この登板が米国代表で唯一のものになったとしても、それでも価値のある経験だったと言えるだろう。胸に「USA」の文字を背負ってマウンドに立つことができたのだからだ。
それでも、数時間前には存在しなかった“小さな可能性”が今は確かに生まれている。難しい判断と向き合うスクーバルを、米国代表のチームメートたちも終始支えている。
「みんな本当に理解してくれている。自分の状況をちゃんと分かってくれているし、特別なケースだと思う。いろいろな人と話したけれど、そもそもここに来たこと自体をすごく応援してくれていて、本当に感謝している。ただ、難しいよ。こういう環境で、このチームと一緒に戦うと、簡単には離れられないんだ」
