トレード期限前最後の登板で1000K達成のスクーバル「今、この瞬間を大切にしたい」

July 29th, 2026

タイガース9-10オリオールズ】デトロイト/コメリカパーク、7月29日(日本時間30日)

タリク・スクーバルは本人の言葉を借りれば、「今この瞬間に集中する」ことに努めている。来週のトレード期限や、その先に何が起こるかは考えないようにしている。この日のオリオールズ戦でも、これがタイガースでの最後の先発になるかもしれないという思いを、マウンドには持ち込みたくなかった。

しかし、先頭打者テイラー・ウォードからチェンジアップで空振りを奪い、登板最初の打者で通算1000奪三振を達成すると、少し感情がこみ上げてきた。試合は延長12回までもつれ、スクーバルが6回2/3を好投したことも、節目の記録も、遠い出来事のように感じられた。それでも、さまざまな感情が入り交じった一日を振り返らずにはいられなかった。

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「達成した瞬間に、他とは違う感覚になる記録もある。なぜかは分からないけど、これはどの記録よりも特別に感じた。初めてシーズン200奪三振に到達したときも特別だったけど、理由は自分でもよく分からない。記録が近づくにつれて、『これはすごいことだな』と思うようになった」とスクーバルは話した。

「こういう瞬間にはこれまでのキャリアを振り返って少し懐かしい気持ちになる。19歳の自分に、将来メジャーで1000人から三振を奪うと言っても、信じてもらえなかったと思う。そういう一つ一つが特別なんだ。大したことではないかもしれない。隣にいる選手(ジャスティン・バーランダー)は3500三振を奪っているからね。それでも、自分にとっては特別なことだ」

スクーバルは857回で1000奪三振に到達し、マックス・シャーザー(944回2/3)を上回って、タイガースの球団史上最速となった。左投手では、アロルディス・チャップマン(602回1/3)、殿堂入りのビリー・ワグナー(757回2/3)、元タイガースのロビー・レイ(810回)、ブレイク・スネル(872回)に次いで、メジャー史上5番目の早さだ。

それほどの早さで到達したにもかかわらず、スクーバルにとっては長い年月が流れたように感じられる。メジャー初奪三振を記録したのは、2020年8月18日にシカゴで行われたホワイトソックス戦。当時は現在よりも細身で、ドラフト9巡目指名からトップクラスの有望株へと成長したばかりだった。チェンジアップを持たなくても好投できる投手だったが、すでに4点を失って迎えた二回の最後に空振り三振を奪った。

「エロイ・ヒメネスに投げた、真ん中から内角寄りのスライダーだった」とスクーバルは振り返る。

「良い日ではなかった。正直、忘れてしまいたいようなデビュー戦だった。2020年はほとんどがそんな感じだった。でも同時に、多くのことを学んだ。何度も打ちのめされたけど、それが自分の糧になった。失敗したときや逆境に置かれたときは、成長する機会になる。自分はそこからうまく立ち直れたと思う」

新型コロナウイルスのパンデミック中にデビューしたスクーバルは、タイガースでの最初の数試合を無観客の中で先発した。それ以来、大勢のファンの前で投げられることに感謝してきた。1000奪三振を達成し、観客が立ち上がって拍手を送ると、スクーバルは帽子を取ってファンへ拍手を返した。

「今、この瞬間を大切にしたい。自分ではどうにもできないことが、周囲でたくさん起きている。いつも目の前のことに集中しようとしている。ファンがああして立ち上がり、大きな拍手を送ってくれるのは特別なことだ。これからも決して当たり前にはならないし、ずっと感謝してきた。ファンにも同じように感じてもらえていたらうれしい。自分がこのチームと街にすべてを捧げてきたと感じてもらえていたらいい。本当にそうしてきたからね」とスクーバルは話した。

スクーバルは、球団史上17人目となる通算1000奪三振を達成した。タイガースではこれまで、殿堂入りしているジャック・モリス(1980奪三振)、ハル・ニューハウザー(1770)、ジム・バニング(1406)をはじめ、将来の殿堂入りが有力視されるバーランダー(2374)とシャーザー(1081)、長年にわたって殿堂入り候補に挙がってきたミッキー・ロリッチ(2679)らが大台に到達している。

スクーバルが思い出を語れば語るほど、別れに向けて心の準備をしているようにも聞こえた。スクーバルが投げている間のタイガースは”無双状態”で、残り7アウトの時点で7-0とリードしていた。しかし、その後はブルペンが9点を連続で失い、借金7に沈んでいる理由も同時に浮き彫りとなった。

タイガースは31日(日本時間8月1日)から、西海岸の3都市を巡る遠征に出る。次に本拠地で試合を行うのは8月11日だ。その夜、スクーバルを含めてタイガースがどのようなメンバーになっているのかは、誰にも分からない。この日がスクーバルにとってタイガースでの最後の登板になるのなら、ファンもチームも、記憶に残る一日にしたいと願っていた。スクーバルの投球も、その後に起きたことも含め、確かに忘れられない試合となった。別れの場ではなかったとしても、互いに感謝を伝え合う機会にはなった。

「本当に素晴らしい道のりだった。何一つ変えたいとは思わない。これまでの物語も人生も、そのすべてが今の自分をつくってくれた。それに感謝している。少し感傷的になっているよね。こういうふうに考えるのは、あまり好きではない。これから先も、まだたくさんのことが待っていてほしい。それでも、素晴らしいことだと思う」とスクーバルは語った。