トレード期限がすぎた8月上旬、「どのチームが勝者で、どのチームが敗者だったのか」は毎シーズンの大きな関心ごとだ。
しかし、もう一つの重要な節目に再検証することは忘れられがちだ。本当に重要なのはまさにこれから、9月から10月へとカレンダーが変わる時である。
弱点を修正できたのか。ポストシーズン進出の可能性、あるいは10月を勝ち進む可能性を高められたのか。
トレード期限における最高の補強は、必ずしも最高の選手を獲得することとは限らない。チームの進路を最も大きく変えた補強こそが、最高の補強だ。
では、今年のトレード期限を本当に制したのはどのチームだったのだろうか。
注:成績はすべて17日(日本時間18日)の試合終了時点。
ガーディアンズ:補強によってプレーオフ、さらにはそれ以上のアドバンテージを獲得
ガーディアンズは、明らかに「買い手」と呼べるような立場ではなかった。トレード期限時点では、勝率5割をギリギリで上回っているだけだった。
2016年にアンドリュー・ミラーを獲得した時をのぞいて、ガーディアンズは基本的にトレード期限で慎重な姿勢を取ってきた。
今回は違った。
積極的に動いたことで、プレーオフ進出にとどまらず混戦のア・リーグで第1ラウンド免除を獲得する可能性さえ残されている。7月末以降、FanGraphs(ファングラフス)によるプレーオフ進出確率は34.6ポイント上昇して77.3%となり、上昇幅はMLBで3番目。ワールドシリーズ優勝確率も3.4ポイント上昇して5.4%となり、こちらも3番目に大きな伸びだった。
では、どのように戦力を向上させたのか。スーパースターを獲得したわけではない。チームの最低水準を引き上げたのだ。
クリーブランドの外野陣は、数年にわたって深刻な長打力不足に苦しんできた。2021~25年の外野手による合計本塁打(206本)と長打率(.362)の両方がMLB最下位。今季も8月2日までの合計本塁打はわずか40本、長打率は.352だった。
そこに加わったのが、エンゼルスから獲得したジョー・アデルだ。移籍後は6本塁打を放ち、wRC+107を記録。トレード期限後のガーディアンズ外野陣は打率.283、出塁率.358、長打率.433、17本塁打を記録し、MLB16位タイと平均的な水準まで改善した。
もう一つの弱点であった一塁も(fWARがMLB28位)、攻守両面で信頼できるナサニエル・ロウを獲得した。
フォスター・グリフィンも補強選手の一人だ。加入後は登板数が少なく、ナショナルズ時代と同じ成績を残してはいないが、安定した投球を継続している。先発ローテーションの層を厚くし、10月に向けた選択肢を増やした。
すべての補強選手がスターである必要はない。ガーディアンズはチームの最低水準を引き上げ、最大の弱点を取り除いた。そうした動きが、平凡だったチームをプレーオフ圏内へ押し上げる一助となった。
ドジャース:一番の大物を獲得し、10月の戦況を一変させる戦略への道を開いた
ドジャースのワールドシリーズ優勝確率は、トレード期限を経て劇的に上昇したわけではない。期限前後のいずれにおいてもプレーオフ進出は確実視されていた。ラスベガスのオッズや各種予測モデルの数値も概ね横ばいで推移しているが、これはもとより優勝候補筆頭(FanGraphsの試算ではメジャー最高の24.8%)に君臨しており、伸び代自体が限られていたためでもある。大谷翔平がコンディションに不安を抱えている点も影響している。
それでも、ドジャースは市場へ出回ること自体が極めて珍しい超一級の先発投手、タリク・スクーバルの獲得に成功した。スクーバルは9月に防御率1.80を記録するなど圧巻の投球を続けており、NanoScope(ナノスコープ)手術の影響に対する懸念もすでに払拭されている。
スクーバルを筆頭に、ブレイク・スネル、山本由伸を並べるプレーオフの先発ローテーションは、ワールドシリーズ3連覇という偉業を目指すドジャースに絶対的な優位性をもたらす。
過去に3連覇を達成したのはヤンキースとアスレチックスのみで、直近では1998〜2000年のヤンキースが最後だ。
ポストシーズンの戦いはレギュラーシーズンとは全くの別物。日程の余裕と一勝の重みにより、主力的投手にイニングを集中させることが可能になる。2001年のダイヤモンドバックスがその典型例だ。
マリナーズがシーズン116勝の大記録を打ち立てたこの年、アリゾナが世界一を奪取できたのは、ランディ・ジョンソンとカート・シリングの2大エースがポストシーズンの全イニングの58.2%を投げ抜いたからに他ならない(レギュラーシーズンでは34.6%)。ドジャースも昨秋、より多くの投手に分散させたものの、似たような戦略で見事に優勝を果たした。
彼らは10月の短期決戦で全く異なるアプローチを選んだ。そして今年、再びその切り札を切ることになる。
フィリーズ:直接的にも間接的にも勝者に
フィリーズも目立たないながら、トレード期限で最高の成果を得たチームの一つに数えられる。8月初め以降、FanGraphsによるプレーオフ進出確率は31ポイント上昇し、伸び幅はMLBで4番目。期限後は23勝13敗を記録している。
改善の一部は、補強による直接的な効果だ。
球界屈指のコンタクト能力を持つルイス・アラエスが加わったのがその一つだ。二塁守備でもOAA+13、FRV+11と、自身最高のシーズンを送っている。
ただ、より興味深いのは間接的な効果だ。トレード当時に浮上したのが、再編された内野陣は、突然の変更でも機能するのかという疑問。結果として、それも大きな成功となった。
アラエスの加入により、ブライソン・ストットは三塁で素晴らしいプレーを見せており、アレク・ボームは一塁へ回った。
ブライス・ハーパーが外野に復帰したことで、打力の劣る外野手を先発メンバーから外せるようになった。
アラエスのトレードは、一つのロースター枠を改善しただけではない。四つの枠を変えたのだ。
フィリーズはトレード期限前、1試合平均4.35得点でMLB18位だったが、期限後は4.8得点で7位に上昇している。もちろん、この改善のすべてをトレードの効果とすることはできない。それでも得点力が大幅に向上する一方、守備率は期限前後でほぼ変化していない。総合的には明らかなプラスだ。
補強の価値は、獲得した選手本人だけにあるとは限らない。その加入によって、周囲の選手がどのように変わるかにも表れる。
他には、救援左腕ブルックス・ラリーも獲得した。安定感を欠いているものの、フルシーズンでは2021年以降、防御率が2.80を上回ったことがない。10月で貴重な戦力となる可能性は残っている。
パドレス:終盤へのつなぎ役を強化
パドレスが近年、将来の戦力をトレードに出しすぎているという主張には十分な根拠がある。ジェームズ・ウッド、CJ・エイブラムズ、レオ・デフリースらがその筆頭だ。
しかし、今季のプレーオフ進出をつかむには、今回のトレード期限で積極的に動く必要があった。
8月初め以降、FanGraphsによるプレーオフ進出確率は64.9ポイント上昇し、MLB最大の伸びを記録した。ワールドシリーズ優勝確率も2.6ポイント上昇し、伸び幅は4番目に大きい。
パドレスの投手陣は8月2日まで防御率4.16でMLB16位だったが、期限後は3.41で4位につけている。
球界屈指のブルペンへつなぐまでの投手陣が強化された。それは10月の戦いで大きな意味を持つ。
もちろん、将来の戦力を手放した代償が消えるわけではない。ただ、パドレスはすでに現在のロースターへすべてを懸けていた。そのため、今季のポストシーズンで勝つ可能性を最大化する判断には合理性があり、実際にそれを成し遂げた。
カブス:大改造
カブスの打力に疑いの余地はない。
期限前から得点力はMLB4位だったが、期限後は1試合平均5.9得点でトップ。ピート・クロウ=アームストロングの飛躍により、もともと優秀だった打線が最高峰の域に達した。
打線には、それほどの補強は必要なかった。必要だったのは投手陣だ。
優勝を争うチームがトレード期限に先発ローテーションの60%を入れ替えることは珍しい。だが、カブスは迷わなかった。クレイ・ホームズ、ケビン・ゴースマン、デービッド・ピーターソンを獲得し、試合終盤の選択肢としてライアン・ゼファーンも加えた。
その中で最も好成績を残しているのがホームズだ。7先発で39回を投げ、2勝3敗、防御率3.46を記録している。獲得した投手たちは、誰もが認めるエースではない。タリク・スクーバル級でもない。それでも失点を防ぐ力を改善して強力な打線を支え、カブスが10月を勝ち進む可能性を期限前より高めた。
ホームズとの交換で球団2位の有望株ジェファーソン・ロハスを手放した代償は大きい。それでもカブスには、以前とは異なる投手陣が必要だった。
ブレーブス:最大の掘り出し物を獲得
アトランタは最大の目玉選手を獲得したわけではない。しかし、タイラー・マーリーはトレード期限に獲得された選手の中で、最大の費用対効果をもたらしている。
ブレーブス加入後、18日の試合までに43回を投げ、防御率1.25、WHIP0.93、fWAR1.1を記録。そして、同日の試合でも6回を1失点に抑え、チームのポストシーズン進出決定に貢献した。
マーリーの加入により、アトランタはクリス・セールに次ぐ2番手の先発投手を手に入れた。ブレーブスのプレーオフ進出確率は比較的横ばいだが、10月を戦い抜くための戦力は以前より整っている。
では、ジャイアンツ時代から何が変わったのか。
マーリーが主に頼るのは今も約151〜154キロのフォーシームとスプリットだ。スプリットの割合を増やし、スライダーをほとんど封印した。球種配分をわずかに変えた形だ。
さらに、平均を大きく下回るジャイアンツの守備陣(OAA-13、FRV-15)から、平均以上のアトランタの守備陣(OAA+18、FRV+17)へ移ったことも影響しているかもしれない。
その変化によって自信が深まり、ストライクゾーン内への投球割合を数ポイント高められたと考えられる。
これらを総合すると、期限前補強を評価する上で重要なことが分かる。必ずしも選手に大幅な改造が必要なのではなく、環境を変えるだけでいい場合がある。
トレード期限の補強が成功したかどうかを判断する最良の基準は、8月に誰が大きな見出しを飾ったかではない。こうした成功例こそが、その答えとなる。
