災害を乗り越え、レイズが本拠地で迎える18年ぶりのWS

October 25th, 2026

2024年秋、フロリダ州のメキシコ湾岸をハリケーンが相次いで襲った。その2つ目となるミルトンがタンパベイ地域に迫る中、ケン・ウェルチは市の緊急対策センターに詰めていた。市の担当者たちとともに、約20台のモニターで状況を見守っていた。

そのうちの一つに、トロピカーナフィールドを捉えたカメラの映像があった。激しい雨の中、強風がレイズの長年の本拠地から白い屋根を引き剝がしていく。テフロン加工されたガラス繊維の膜材は、一部が下の観客席に落ち、ほかは周辺の道路に飛び散った。ドーム内部は風雨にさらされた。相次ぐハリケーンがもたらした惨状を象徴する、衝撃的で胸の痛む光景だった。

「現実とは思えなかった。ひどい天候で、雨が降り続いていた。ホラー映画かSF映画の一場面のようだった。世界が崩壊した後の光景みたいだった」と、2022年1月からセントピーターズバーグ市長を務めるウェルチは、MLB.comの電話取材で振り返った。

デビルレイズが球団創設初年度の1998年に本拠地として使い始めた時点で、トロピカーナフィールドは既に時代遅れだった。がらんとした巨大な内部の空間や天井付近の通路は、槍玉に挙げられた。平均を下回る観客動員数は、それに拍車をかけた。これらを解決するために、レイズは長年、長期的に腰を据えられる本拠地を探してきたが、ハリケーンの影響で、前オーナーグループは最終的に同じ敷地での新球場建設計画から撤退した。

だが、終わりではなかった。

ハリケーン・ミルトンの襲来から2年と17日。レイズの新オーナーグループが、2029年にタンパに新球場を開く計画を進める中、トロピカーナフィールドで、18年ぶりにワールドシリーズが開催される。

「ハリケーンから球場の修復まで、この1年を振り返ると、地域社会が経験してきたことを本当に象徴していると思う。多くの人が家を失い、住まいや地域を再建し、暮らしを立て直さなければならなかった」と、レイズのケン・バビーCEOは語った。

「だからこそ、地元の野球チームを通してその歩みを目にし、街が力を発揮する姿を見て、さらに今季の球界最高のホーム成績を祝える。すべてが、この地域のレジリエンスにふさわしい出来事だ」

ウェルチも同じ言葉を使い、トロピカーナフィールドを「レジリエンスの素晴らしい象徴」と呼んだ。市は契約上、球場を修復する義務を負っており、市議会も事業費として6000万ドル近く(約94億2000万円)を承認した。ただ、一時はレイズの幹部が、その金額では修復できず、今季の復帰にも間に合わないと考え、計画に難色を示していた。

それでも、市の開発行政に携わるベス・ヘレンディーンと、市の建築家ラウル・キンタナの指揮の下、修復が実現。4月6日、トロピカーナフィールドに野球が帰ってきた。その日、バビーは球場の復活を「アメリカの見事な復活物語」と表現した。グラウンド上でのレイズの巻き返しも予感させる言葉だったのかもしれない。

「予定通り、しかも予算を下回る費用で完成させ、2026年シーズンに間に合わせてくれた。その後の展開は、みんなが知る通りだ。素晴らしい物語だよ」とウェルチは話した。

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26日(日本時間27日)、ワールドシリーズ第3戦でブルワーズを迎えるレイズが、この球場をきっかけに巻き返すことができれば、物語はさらに忘れ難いものとなる。レイズがワールドシリーズの白星を本拠地で挙げたのは2008年のフィリーズとの第2戦のみ。2020年のワールドシリーズは、中立地であるアーリントンのグローブライフフィールドで行われた。

今シリーズで0勝2敗と追い込まれたレイズは、このドームであと3晩を過ごしたいと願っている。

レギュラーシーズンのレイズには、確かに「ドームの地の利」があった。ホームではミルウォーキーと並ぶ55勝26敗を記録。それがポストシーズンでは、さらに大きな力となっている。この10月、本拠地の人工芝では4勝1敗。上層階の観客席も開放し、5試合で平均3万7697人を集めている。

レイズのケビン・キャッシュ監督と選手たちは、この10月に球場で受けたファンの後押しを絶賛している。キャッシュはタンパベイの声援を「このポストシーズンで、どこにも負けない」と表現。2008年のワールドシリーズを父親と観戦したウェルチも、ヤンキースとのア・リーグ地区シリーズほど大きな歓声を、この球場で聞いた経験は「一度もない」と語った。

「雰囲気が違う。トロピカーナフィールドは、もうヤンキースのものじゃない。20年前には見られなかった光景かもしれないが、今は確かに見られる。とウェルチは話した。

「球場として晩年を迎えているけれど、今のトロピカーナフィールドは、かつてないほど素晴らしい。タンパベイのファンが心を一つにする場所になっている」

「サンシャインシティー」と呼ばれる街と、この2年間で乗り越えてきた苦難に注目が集まる中、レイズは今週も同じような熱気を期待している。

「ファンは素晴らしい応援を続けてくれた。ワールドシリーズでも、引き続きその力が必要だ。グラウンド上のチームと同じように、ファンも大舞台で力を発揮してくれた。来週はカウベルが鳴り響き、ファンが総立ちで声を張り上げ、トロピカーナフィールドが熱狂に包まれると期待している。2008年以来のワールドシリーズ開催に向けて、本拠地に帰ってくるチームを迎えてくれるはずだ」とバビーは語った。