ウィンターミーティングが開幕した。
週末から、早々と球団幹部や代理人たちが会場のフロリダ州オーランドに集まっていた。カイル・タッカー、カイル・シュワーバー、コディ・ベリンジャー、ピート・アロンソといったトップFA選手の話題が飛び交うだろう。
しかし、注目はそれだけではない。
自由契約選手が新契約を探し、球団がトレードの可能性を探る中、ロビーでは常に噂話が絶えない。ここからは、オフシーズン最大の1週間でチェックしておきたい5つのストーリーラインを紹介する。
注目の投手たち
まずディラン・シースが、ブルージェイズとの7年2億1000万ドル(約315億円)の契約で先発市場の幕開けを飾った。しかし、他にも多数の先発投手が市場に出ている。
フランバー・バルデス、今井達也、レンジャー・スアレス、マイケル・キング、ザック・ギャレンがリードする一方で、メリル・ケリー、ジャスティン・バーランダー、クリス・バシット、タイラー・マール、ザック・エフリン、ルーカス・ジオリト、ザック・リテルも市場に名を連ねている。
先発ローテーションを強化したい球団も多い。メッツ、カブス、オリオールズ、エンゼルス、タイガース、ヤンキース、レッドソックス、パドレス、ブレーブスなどがそれぞれ先発投手市場で動いている。
全球団がバルデス、今井、スアレス、キング級に大型契約を投じるわけではない。だが、先発候補の駒がこれだけ揃っていれば、各球団にとって「選び放題」の状況でもある。この1週間で何人かの投手が一気に市場から消えていく展開になりそうだ。
バックエンド争奪戦、加速へ
市場をにぎわせているのは、先発投手だけではない。後ろを任せられるインパクト投手も、条件次第で獲得可能だ。筆頭はメッツとの5年1億200万ドル(約153億円)の契約を途中破棄してFAとなったエドウィン・ディアス。今後のキャリアを丸ごと受け入れるような「同等レベル」の契約が必要になるだろう。
とはいえ、リリーバー市場も選択肢は豊富。すでにデビン・ウィリアムズ、ライアン・ヘルズリー、エミリオ・パガン、ライセル・イグレシアスが新契約を結んだが、ロベルト・スアレス、ピート・フェアバンクス、ケンリー・ジャンセン、タイラー・ロジャース、カイル・フィネガン、ルーク・ウィーバーなど、クローザー経験者がまだズラリと残っている。
毎年のことだが、リリーバー市場は「一人が動くと一気に動く」のが特徴。すでに4人の有力どころが契約を決めたことからも、その傾向は健在だ。30球団すべてが常に補強ポイントに挙げるブルペンだけに、ウィンターミーティング期間中も活発な動きが続きそうだ。
野手市場も本格化へ
今オフは打者もトップ選手が勢揃いだ。目玉はタッカー、シュワーバー、アロンソ、ベリンジャー、ブレグマンの5人で、いずれも複数球団から熱い視線を浴びている。さらに、日本の村上宗隆、岡本和真の2人、そして韓国の金河成(キム・ハソン)らアジア勢も大きな注目を集めている。
最初に動く可能性があるのはシュワーバーだ。ただ、フィリーズ残留が既定路線かどうかは不透明だ。関係者によれば交渉は進んでおらず、メッツ、レッドソックス、オリオールズ、レッズなど複数球団も獲得レースに参戦している。
ブルージェイズはタッカー獲りに本腰を入れ、先週にはフロリダのキャンプ施設に招いて「接待」訪問を実施。タッカーはウィンターミーティング期間中の決断は見込まれていないが、ビシェット残留も狙うトロントが攻めのオファーを投じれば、流れが一気に変わる可能性もある。ベリンジャーは「タッカー次第」の面もあり、タッカーに動きがあれば、その余波で交渉が進む可能性が高い。
その一方で、いわゆるセカンドグループの野手たち、ホルヘ・ポランコ、ハリソン・ベイダー、ルイス・アライズ、エウヘニオ・スアレス、金河成(キム・ハソン)、J.T.リアルミュートらは、早期決着を狙って動く可能性も十分ある。
今オフはすでにトレードが次々と成立。これまでに6件の移籍が決まり、そのうち3件は大型トレードだった。
メッツとレンジャーズはブランドン・ニモとマーカス・セミエンを電撃トレード。オリオールズはグレイソン・ロドリゲスを放出し、エンゼルスからテイラー・ウォードを獲得。カージナルスはソニー・グレイをレッドソックスへ送り出した。
こうした動きは、今後の「トレードラッシュ」の前触れとも言えそうだ。まだ多くの選手が市場に残っており、中には「移籍濃厚」とみられる選手もいる。
最注目は、ナショナルズの左腕でオールスターのマッケンジー・ゴア。球団保有権が2年残っており、価値は抜群。そのほかにも、カージナルスのブレンダン・ドノバン、ガーディアンズのスティーブン・クワン、マーリンズのエドワード・カブレラ、レッドソックスのジャレン・デュランなど、複数年コントロール下にある人気選手が並ぶ。
そして、市場最大の名前がタイガースのタリク・スクーバル。ア・リーグのサイ・ヤング賞2度の実力者だ。タイガースは放出必須ではないものの、FAまで残り1年ということもあり、今オフからトレード期限まで「可能性は常にある」状態となる。
ベテラン勢にも動きが出そうだ。カージナルスはノーラン・アレナドとウィルソン・コントレラス、ブルワーズはフレディ・ペラルタ、マーリンズはサンディ・アルカンタラ、フィリーズはニック・カステヤノスが候補に挙がる。
ツインズもジョー・ライアン、パブロ・ロペス、バイロン・バクストンと3人の有力候補を抱えるが、関係者によれば「3人を残しつつ、周辺補強で2026年の地区優勝を狙う」方針が濃厚のようだ。
代理人ボラスはどう動く!?
毎年の恒例行事となっているが、FA市場にはスコット・ボラス氏のクライアントが数多く並ぶ。ボラス氏といえば、代理人としてオフシーズンの深い時期まで交渉を長引かせることで知られている。
しかし実際にはオフ序盤で契約をまとめるケースもあり、ウィンターミーティング期間中に決まることも珍しくない。今オフ最大の契約を勝ち取ったシースも、ボラス氏のクライアントだ。
2019年のサンディエゴで開催されたウィンターミーティングでは、ゲリット・コール、スティーブン・ストラスバーグ、アンソニー・レンドンという3人のボラスクライアントが、3日連続で「9桁契約」を締結。総額は8億1400万ドル(約1220億円)に達した。今年も再現なるか。
今オフのボラス勢は、レンジャー・スアレス、今井、ギャレン、アロンソ、ブレグマン、ベリンジャー、岡本、キム、ニック・マルティネス、シャーザーら。オーランドの会場で、連日話題をさらう可能性は十分だ。
