FA市場には常にリスクが伴うが、そのリターンがチームを一変させることもある。
それが、ブルージェイズがディラン・シースというエリート級の才能を持ちながら結果が安定しない投手に2億1000万ドル(約315億円)を投じる決断をした理由だ。
シースのように振れ幅の大きいスター選手はまだ多く残っており、以下に挙げる7人はその象徴的存在だ。リスクをとるか、リターンをとるか。各球団は頭を悩ませている。
ピート・アロンソ(一塁手)
ルーキーイヤーの2019年に53本塁打と鮮烈なデビューを飾って以来、MLB屈指のスラッガーとして活躍してきた。しかし近年は打撃成績の波が大きくなっている。規定到達者の中で、*wRC+は2022年(141)と2025年(141)は15位・8位と高水準だった一方、2023年(120)と2024年(121)はトップ30圏外。極端な変動幅ではないものの、打撃が最大の売りである選手としては懸念材料と言える。
※wRC+(weighted Runs Created)球場補正込みで打者の総合的な得点力を示す指標。100がリーグ平均で、数値が高いほど優秀。
コディ・ベリンジャー(外野手)
ジェットコースターのようなキャリアを送っている。2019年にナ・リーグMVPを受賞した一方、わずか3年後にはノンテンダーで解雇されるという浮き沈みも経験した。2021〜22年のwRC+が69だった時期を無視し、ドジャース放出後の直近3年間の成績だけに注目しても、不安要素は残る。平均的な成績(2024年:18本塁打、wRC+108)が本来の姿なのか、それとも2023年(26本塁打、135)や2025年(29本塁打、125)が本来の姿なのかは判断が難しい。
ボー・ビシェット(遊撃手)
負傷に苦しみながらも、2025年に復調(18本塁打、wRC+134)したことで、2024年の低迷(4本塁打、70)は見落とされがちだ。実際、7年間のキャリアの中で他の全てのシーズンではwRC+120以上と安定しているが、獲得を検討するチームが2024年の成績を無視することはできない。
ザック・ギャレン(先発投手)
最初の6シーズンで防御率3.29、FIP3.45、K/BB3.43を記録し、2022年(5位)と2023年(3位)にはサイ・ヤング賞投票でトップ5入り。しかし、2025年には大きく後退し、防御率4.83、FIP4.50、K/BB2.65と、いずれもキャリアワーストとなった。実績があるためFA市場で人気は高いだろうが、レッドソックスが昨オフのウォーカー・ビューラーで学んだように、“復活待ち”の投手が必ず成功するわけではない。
カイル・シュワーバー(DH)
過去4年間で187本塁打を放ち、大谷翔平と並んでMLB2位(1位はアーロン・ジャッジ)に位置している。しかし、本塁打以外の成績は波が大きい。2025年は圧巻の成績(56本塁打、wRC+152=MLB6位)を残し、ナ・リーグMVP投票で2位に入ったが、2022〜23年は計93本塁打を放ったものの、打率.207、出塁率.333、wRC+124と規定到達者中31位タイにとどまった。
エウヘニオ・スアレス(三塁手)
来シーズンで34歳になるスアレスは、市場でも指折りの好不調の波が大きい打者だ。2024年のダイヤモンドバックス最初の79試合ではwRC+67と酷く、DFAの噂すらあった。しかし、その後は見違えるように覚醒し、2024年7月1日〜2025年7月30日の184試合で60本塁打を放ち、wRC+151でMLB9位となった。しかしマリナーズ移籍後は再び失速。53試合で打率.189、出塁率.255、長打率.428、wRC+91に落ち込んだ。
デビン・ウィリアムズ(救援投手)
2020〜24年にかけてMLB屈指のリリーバーとして活躍したが、ヤンキース移籍後の2025年はその支配力を大きく失った。クローザーとして迎えたシーズンでは役割を守りきれず、防御率は4.79に終わった。ただし先進指標は決して悪くなく、予想打率・空振り率・チェイス率・奪三振率はいずれも上位5%に位置していた。終盤には本来の力を取り戻し、最後の19試合では防御率2.50、34奪三振と好投した。
