史上トップ5のプレッシャーを背負い投げる朗希

6週間でマイナーから一気に守護神へ

October 21st, 2025

約1カ月前、佐々木朗希(23)はワシントン州タコマで、キャリア2度目のマイナー3Aでのリリーフ登板に向けて肩を作っていた。六回から登板し、ゴロアウト2、1三振で打者3人を打ち取った。

シーズンの終盤の9月下旬にマイナーで中継ぎを務めたことは、近年まれに見る期待と注目を集め、ドジャースに加わった有望株が思い描いていた理想からは程遠かっただろう。

しかも、マイナーでも決して圧倒的な登板を続けていたわけでなかった。デーブ・ロバーツ監督は、佐々木のリハビリ登板の初期評価は決して高くないと明言していた。

「内容、球の力、ともにまだ物足りない。ボールの質をもう一段階上げる必要がある。3Aの打者相手なら、もっとできるはずだ」と、9月2日に5回2三振の内容を受けて、ロバーツ監督はコメントした。

これが、わずか6週間前のことだ。

その後、フォームの修正、救援への配置転換、そして不安定なドジャース救援陣が、状況を一気に変えた。メジャーでもマイナーでもほぼ実績ゼロの23歳の新人に対して、球団は「慎重な復帰」を図った。それは、直近25年のポストシーズンでトップ5に入るほど、重圧のかかる場面での救援だった。

大丈夫大丈夫、心配はいらない。君はワールドシリーズのクローザーだ。相手はマイナーリーグのチームではなく、カル・ローリーやブラディミール・ゲレーロJr.くらいしかいないよ。

なんて慎重で丁寧な復帰だろうか。

「重圧」を数値化する方法の一つに、レバレッジ・インデックス(LI)がある。得点差、イニング、アウト数、走者状況から各局面の重要度を評価する指標だ。簡単に言えば、大差の試合での2死走者無しの場面より、同点で満塁の方が重圧度が高い。

2000年以降、佐々木のようにポストシーズンで8イニング以上を投げた投手は200人以上いる。レバレッジ・インデックスで並べると、佐々木の登板局面は上から5番目。平均的状況の2.1倍のプレッシャーのかかる場面で投げていた計算になる。

21世紀の野球に詳しければ、その名前と年だけで物語が浮かぶだろう。

21世紀・ポストシーズンの最高レバレッジ・インデックス(1.00=平均)

  1. 2.64|ボビー・ジェンクス(2005年 ホワイトソックス)
  2. 2.32|エマヌエル・クラセ(2024年 ガーディアンズ)
  3. 2.22|ジャスティン・マスターソン(2008年 レッドソックス)
  4. 2.19|ブライアン・ウィルソン(2010年 ジャイアンツ)
  5. 2.15|佐々木朗希(2025年 ドジャース)※ほかに2001年ダイヤモンドバックスのキム・ビョンヒョンらと同率

(補足として、この期間で最下位だったのはブレント・ハニーウェル。昨年10月にドジャースの8回2/3で敗戦処理を務め、平均的状況よりも90%低い重圧度の場面で投げていた。データは目視の印象と一致する、という好例だ)

佐々木はNLCS第4戦で、4点リード、走者なしという比較的低レバレッジの登板があるまではジェンクスと並んでこのリストの頂点にいた。シリーズを締める九回が楽な訳はないが、数値上はそうなる。

繰り返すが、ほんの1カ月少し前まで、マイナーリーグで登板し、ほとんど誰からも注目されていなかった。それが今や、最大の試合の最大の場面で、最大級の打者たちに向かって投げている。

NLDS第2戦、九回に3人目の救援として登板した場面(ブレイク・トライネンとアレックス・ベシアが4-1のリードを2死一、三塁の1点差にまで詰められた)は、ポストシーズン史上でもトップ10に入る高レバレッジ、平均の7倍超の重圧度だった。(ちなみに、NLCS初戦で佐々木が5人中2人しか抑えられず、トライネンが火消し入った場面は、数少ないこれより重圧度が高い例の1つだ)

故ボビー・ジェンクスには、佐々木と通じる点がある。ジェンクスもまた、9月下旬になるまで九回のマウンドに立つことのなかった新人だった。さらに、近年屈指の強力先発陣の後を投げた点も似ている。ホワイトソックス先発陣がALCSで4試合連続完投を記録したため、ジェンクスは一度も登板せず、ワールドシリーズ開幕まで丸15日休むことができた。

佐々木はそこまでの休養は得られないが、NLCS終了からワールドシリーズ開幕まで丸1週間の間隔はある。

「ここまでの彼の振る舞いを見れば明らかだ」と、ロバーツはフィリーズとのNLDSの際に語った。

「大舞台にのまれる兆候は全くない。どれだけプレッシャーのかかる役割でも、私は全面的に信頼している」

それは数週間前、3Aの打者相手に通用するのかを案じていた時のロバーツの口調とは少し違う。佐々木は、ただロースターにいるだけではない。その日をしのぐためにいる訳でもない。近年見られなかったレベルの大一番で起用される、事実上の守護神なのだ。控えめに言っても、マイナー戦の行われていたタコマからは天と地ほどの差がある。