来年に向けて復活の兆し?大谷翔平の2026年最後のHRを深掘り

12:06 AM UTC

大谷翔平は、ほぼ2カ月にわたり、長打力でチャンドラー・シンプソンの後塵を拝した。シンプソンを下げる訳ではないが、本来なら起こるはずのないことだ。

ただ、膝も腕も痛めていれば、MVPを4度獲得するほどの選手でも、スイングに狂いが生じることはある。大谷のスイングは、完全に歯車がかみ合わなくなっていた。

8月19日から10月14日、つまりナ・リーグ優勝決定シリーズ(NLCS)第3戦までの間に、メジャーでは345人が少なくとも1本の本塁打を放った。しかし、大谷はその中にいなかった。

最高の選手が、精彩を欠いたままシーズンを終える。速球に追い付けず、強い打球を飛ばせず、顔をしかめながらプレーする。2027年に向けて、ドジャースの大きな不安材料になるはずだった。しかし、あの一振りがその見方を変えるかもしれない。

結果的にドジャースの今季最終戦となったNLCS第4戦で、大谷のスイングがついに戻った。たった一振りだったが、大きな意味を持っていた。ブルワーズのダスティン・メイから放った、8月18日以来の本塁打。しかも、強烈な一発だった。

来季に向けた大谷の打撃の状態を、たった一振りからどこまで読み取れるだろうか。少なくとも、プレーオフの大半で見せていた姿より、本来の状態にはずっと近いと考えられる。その理由を挙げていこう。

打球の強さ:113.1マイル(約182キロ)

この本塁打の打球速度は、今ポストシーズンで2番目に速かった。大谷自身にとっても、シーズン前半以来の速さ、つまり、負傷によってパワーが失われる前の水準だ。今回のNLCSでの一発を上回る打球速度の本塁打は、6月20日までさかのぼる。本来の状態の大谷なら、こうした球界屈指の打球速度にも難なく到達できる。

打球の方向:引っ張った一打

大谷は本来、どの方向にも驚異的な飛距離を出せる打者だ。一部の打者のように、本塁打を打つために引っ張ることに依存していない。ドジャースの選手でたとえるなら、ムーキー・ベッツよりもフレディ・フリーマンに近いと言える。では、この本塁打を右中間へたたき込んだことに、なぜ意味があるのか。それはこの一打まで、引っ張った方向へ強い打球をまったく飛ばせていなかったからだ。だが、頼らないというだけで、引っ張る力がない訳では当然ない。大谷には一流の引っ張る力がある。昨年のプレーオフで見せた「史上最高の試合」が、その証拠だ。その力が消えているということは、何かがおかしいことを意味する。

NLCS第4戦を迎えるまで、大谷はプレーオフの全打者で逆方向への打球割合が最も高く、ブライス・トゥラング、スティーブン・クワン、シンプソンらを上回っていた。世界一のブルワーズを見れば分かるように、逆方向へ打つこと自体は悪くない。ただ、大谷にとって、そこまで逆方向に偏る状態は望ましくない。しかも、その大半が弱い打球か、打ち上げた打球だった。大谷のような打者にとって、逆方向への弱い打球は悪い兆候だ。力強く引っ張る姿を見られたことは、好材料となる。

打った球:95.1マイル(約153キロ)のカットボール

プレーオフの大半で、大谷はどの球にも追いつけていなかった。マイク・ペトリエロが不振を分析した際に指摘したように、スイングのタイミングが合っておらず、10月はドジャース在籍中のどの月よりも、速球に振り遅れる割合が高かった。実際、その問題は不振が始まった8月までさかのぼる。8月19日からNLCS第3戦まで、95マイル(約152.9キロ)以上の投球に対する打率は.067で、3分の1の割合で三振していた。だからこそ、内角低めの95マイル(約152.9キロ)を超える球にバットの芯を合わせ、引っ張って本塁打にした今回のスイングは、大きな意味がある。

捉えた位置:本塁の前縁より2インチ(約5.1センチ)前

これは、振り遅れや逆方向への弱い打球と密接に関係している。不調時の大谷はボールを呼び込みすぎていた。好調な時でも、もともと引き付けて打つタイプで、それでも逆方向へ強い打球を飛ばせる一流のバットスピードを持っており、それが、あらゆる方向へ飛ばせる希少なパワーに繋がっている。だが、2026年のポストシーズンでは、NLCS第4戦を迎えるまで、打球を捉える位置が本塁の前縁から9インチ(約22.9センチ)以上、キャッチャーの方まで下がっていた。

流石の大谷でも、これは極端すぎる。ドジャース在籍中のどの月よりも深く、プレーオフの全打者でも最も深い位置だった。そこまで引き付けると、強打に必要なバットスピードや、スイングの縦方向の角度を生み出すのはほとんど不可能だ。では、あの本塁打ではどうだったか。大谷は、本塁の前縁より2インチ(約5.1センチ)前方で捉えた。前で捉えることで、バットの芯が最高速度に達するまでの時間を確保できる。さらに、適切な角度で上昇するスイング軌道上で球を捉え、空中へ強く打ち出せる。そうして、あの大きな一発が生まれた。

バットスピード――81.7マイル(約131.5キロ)

前述の説明を裏付ける証拠が、バットスピードだ。タイミングと捉える位置が改善したことで、大谷は一流の水準となる81.7マイル(約131.5キロ)を計測した。スタットキャストでは、75マイル(約120.7キロ)以上を「速いスイング」と定義している。つまり、80マイル(約128.7キロ)を超えるスイングは「超速いスイング」と言えるだろう。NLCSでの本塁打の際のバットスピードは、本塁打としては約4カ月前の6月22日以来の速さだった。これほどのバットスピードで球を捉える姿を見れば、スイングがあるべき状態に戻っていると分かる。

おそらく、1本の本塁打を深読みしすぎているだろう。
それでも、あの一発は来年の復活を告げる予兆だったはずだ。MVP級の大谷が、戻ってくる。