キャム・シュリットラーは、速球をたくさん投げる。そのため、レッドソックスはア・リーグのワイルドカードシリーズ第1戦に向け、先週末にトラジェクトマシンを「使い倒した」と報じられた。
シュリットラーは、現代メジャーの潮流である異なる3つの速球を投げ分ける投手の代表格だ。レギュラーシーズンでは、フォーシーム、シンカー、カットボールの3球種が全投球の89.2%を占め、750球以上を投げた先発投手で最も高い割合だった。しかも速球の平均球速は94パーセンタイル、つまり上位約6%に入る。この速球中心の投球こそが、来月のア・リーグのサイ・ヤング賞受賞がほぼ確実視される理由だ。
しかし、レッドソックスにとって誤算だったのは、今のシュリットラーにはカーブがあることだ。その強力な4つ目の球種は、レイズとのア・リーグ地区シリーズの第2戦でも大きな鍵を握るだろう。
ポストシーズンの舞台で再びレッドソックスを翻弄したシュリットラーは、全117球の27%に当たる、32球のカーブを投じた。これまではメジャーで1試合にカーブを20球以上投げたことがなく、前例のない多投となった。過去5度のレッドソックス戦で投じたカーブは、合計で41球だった。
カーブに対する16スイングで8度の空振りを奪い、10奪三振のうち4つをカーブで記録した。カーブによる8度の空振りは、自身の1試合最多だった。
ここ数カ月のシュリットラーの安定した快投を追ってきた人なら、これはまったく新しい変化ではないと分かるだろう。MLB.comのデービッド・アドラー記者は8月、進化したシュリットラーのカーブを解説(英語記事)。鋭い縦の変化を保ちながら球速を上げ、パワーカーブになったと分析した。
レッドソックス戦でのカーブの平均球速は85.8マイル(約138.1キロ)。平均87.5マイル(約140.8キロ)を記録した8月ほどではないが、それでもシーズン序盤より明らかに速い。
進化するシュリットラーのカーブ
- 3・4月: 平均球速84.2マイル(約135.5キロ)/縦変化量48.8インチ(約124.0センチ)
- ポストシーズン: 平均球速85.8マイル(約138.1キロ)/縦変化量48.7インチ(約123.7センチ)
球種単体での純粋な「打ちにくさ」をモデルで評価する指標Stuff+によれば、オールスター後のシュリットラーのカーブは、球界屈指の評価を受けている。ただ、それが決定的な武器になる理由は、フォーシームとの組み合わせにある。
これはカーブに限った話ではなく、3つの速球が効果的なのも同じ理由だ。シンカーとカットボールは、手を離れた時点ではフォーシームと同じように見え、球速も近い。しかし、本塁に届くころには、それぞれまったく異なる動きを見せる。打者がタイミングを合わせるのは、ほとんど不可能だ。
一方、カーブはフォーシームと鏡写しのように、逆向きの回転をする。
時計の文字盤を思い浮かべてほしい。フォーシームの回転は「12時と1時の間」の方向で、バックスピンに加えてシュリットラーから見て右側への横回転も含まれている。一方、カーブの回転方向は、文字盤の反対側に当たる「7時と8時の間」だ。厳密に言えば完全に逆方向(180度=6時間)ではないものの、打者にとっては見分けるのが非常に難しい。
実際、直近のレッドソックス戦では、フォーシームに対するスイングの65%がボールの下を通っている。一方で、カーブに対しては67%のスイングがボールの上を通った。
以前のシュリットラーは、ほぼ速く鋭い球だけで打者を抑えていたため、打者はこうしたことを心配する必要がなかった。しかし、現在はそういう訳にはいかない。右腕はゾーン高めの速球と低めのカーブを組み合わせ、2球種の関係を最大限に生かすことで、打者の体勢を崩すスイングを何度も引き出すのだ。
では、なぜ前回の登板ではこれほど多投したのか?
レッドソックスはシュリットラーから打てない。そもそも球界屈指の投手とはそういうものだが、その苦戦ぶりは際立っている。プレーオフを含む初対戦から6度の先発で、防御率0.47。自責点が公式記録となった1913年以降、レッドソックス相手に記録された最も低い数字だ。
一方で、シュリットラーはレギュラーシーズンにレッドソックス相手に4度先発していた。打者たちは繰り返し対戦しており、週末を丸ごと使って、速球に備えていた。
こうした状況があるからこそ、投手は舞台裏で常に新たな球種を試し、磨いている。例えば、ブルワーズのオールスター右腕ジェイコブ・ミジオロウスキーは、6月以降チェンジアップを投げていない。それでも、10月に同じ打線と何度も対戦するなかで必要になった場合に備え、キャッチボールで投げ、ブルペン投球にも取り入れている。有効な武器を持ちながら、あえてほとんど使わずにいられる。それは最高の投手たちに許されるぜいたくであり、シュリットラーもその一人だ。
少し前に、本人もこの可能性をほのめかしていた。
「必要になったら、思い切ってもっと投げればいい、という感じかな。いつもそうする必要はないけど、きちんと操れるようにしておく方がいい。いざ使う必要が出てきたときに、ゾーンへ投げて空振りを取れるようにね」とシュリットラーは8月、MLB.comに話していた。
それは確かに、レッドソックスの意表を突いたようだった。
「見るのは今日の試合が初めてだった。僕たちの弱点を突かれ、対応できなかった」とウィルヤー・アブレイユ外野手は試合後に話した。
その弱点がまさにカーブだった。レギュラーシーズンで、カーブに対する打率がレッドソックスの.195を下回ったのはオリオールズだけ。長打の価値も適切に反映した出塁率の一種であるwOBAでも、カーブに対してはメジャーで2番目に低かった。
地区シリーズではどう使われるか?
レイズもレッドソックスと同じく、カーブを苦手としており、カーブに対するwOBA.262は、メジャーで5番目に低い。オールスター三塁手のジュニオール・カミネロは、カーブに対する長打率が.481で、球種別では2番目に低かった。カミネロがこれより長打力を発揮できなかった球種は、チェンジアップだけだ。
ただ、もう少し掘り下げる必要がある。シュリットラーのカーブを、ほかのカーブとひとくくりにはできない。右投手が投げる85マイル(約136.8キロ)以上のパワーカーブに絞ると、レイズのこの球に対する打撃ランバリューは-5で、レッドソックスと並んでメジャーで2番目に低い。
シュリットラーはレイズ相手の3度の先発で、カーブを計22球投げた。そのうち10球は、直近の対戦だった9月24日に投じたものだ。
シュリットラーは、カーブがなくても打者を圧倒できる。それでも、カーブは確かな武器であり、こうした投球の幅が最も価値を持つのが、この時期。出し惜しみはしないはずだ。
