2026年ワールドベースボールクラシック最高の瞬間9選

March 18th, 2026

ベネズエラが新たな王者に輝き、2026年ワールドベースボールクラシック(WBC)が幕を閉じた。

過去大会には、どれも象徴的なシーンがある。2017年はアダム・ジョーンズのジャンピングキャッチが、2023年は大谷翔平がマイク・トラウトを三振に仕留めた場面が強く印象に残っている。

では、2026年大会で記憶に残る選手、瞬間、ストーリーは何になるだろうか。ここではその候補9つを挙げる。

1. ベネズエラ、タンボーレスのリズムで優勝

試合前になるとベネズエラ代表はダグアウトに集まり、リリーフ投手エドゥアルド・バサルドが奏でるリズムに合わせて選手たちは円になって踊り、母国の誇りを表現していた。

ベネズエラ代表のオマー・ロペス監督は「今見ているもの、それが私たちだ。それが私たちの国であり、私たちそのものだ。これがウインターリーグであり、私たちの野球の楽しみ方だ」と語った。

「文化はそれぞれ違う。プエルトリコにはラ・プレナがあり、ドミニカにはメレンゲやバチャータなどがある。試合前に自分たちを表現する方法はいろいろある」

過去に優勝経験のあるドミニカ共和国、アメリカ、日本のいずれかが優勝すると予想する声が多かった。しかし実際に頂点に立ったのは、2009年以来準決勝にも進出していなかったベネズエラだった。優勝トロフィーを受け取った後、マイアミのローンデポパークに流れた音楽はもちろん、ベネズエラの人気バンド「タンボール・ウルバーノ」であった。

2. エスプレッソ・ベースボール

主にイタリア系アメリカ人で構成されたイタリア代表は、アメリカに勝利して4戦全勝でヒューストンプールを制し、史上初の準決勝進出を果たした。特に注目を集めたのが、ホームランのたびにダグアウトでエスプレッソを飲むパフォーマンスだ。

フランシスコ・セルベッリ監督は「イタリアといえばコーヒーだ」とコメント。その重要さを説明した。

「コーヒーは単に元気になるためのものではない。コーヒーを飲みながら仲間と話し、交流する。ライフスタイルであり、人と人をつなぐものだ」

優勝には届かなかったものの、その活躍はイタリア国内の野球発展に影響を与えるものとなった。新聞はチームの成功を報じ、政府関係者も野球について言及し、大会期間中には数百万人が試合を視聴した。

主将のビニー・パスクアンティーノは「僕たちは、(イタリアで野球をしている)みんなのためにプレーしている」と語った。

「20年後のワールドベースボールクラシックで、イタリア代表がイタリア語を話す、本当の意味でのイタリアの選手たちであふれるチームになっていることを願っている」

3. 大谷翔平はどこでも大谷翔平

日本は準々決勝で敗退し、大会史上初めて準決勝進出を逃した。しかし、史上最高の野球選手とも称される大谷翔平は、やはり今大会最大級の話題の一つだった。

大会初打席では初球を捉えて二塁打を放ち、次の打席では満塁本塁打を叩き込んだ。今大会ではDHとしての出場に限られていたものの、ドジャースでのシーズンに向けてオフ日にライブBPを行っていたことから、侍ジャパンのファンは、2023年決勝のようにリリーフで登板するのではないかという期待と憶測が常に付きまとっていた。

またクラブハウスでのリーダーとしての存在感も示した。若手選手たちがチームに溶け込めるよう配慮し、内向的な北山亘基にチームのホームランセレブレーションを考案する役割を任せた。その結果生まれたのが、三塁を回る際に行う「お茶点てパフォーマンス」だった。

4. 韓国代表、マイアミへ飛ぶ

韓国野球は2000年代初頭に世界を席巻した。2008年北京五輪で金メダルを獲得し、2009年WBCでは日本と延長戦の激闘を繰り広げた。今大会ではKBOのスター、MLBでプレーする韓国人選手、さらにアメリカ生まれの韓国系選手が融合し、「東京プールを勝ち抜いてマイアミ行きの飛行機に乗る」という目標を掲げて結束した。本塁打の際には両腕を飛行機の翼のように広げ、ダグアウトではマイアミを象徴する「M」のポーズで祝福した。

結果としてそれは成功だった。準々決勝でドミニカ共和国に敗れたものの、2009年以来となるプール突破は多くのファンにとって成功と受け止められた。

2008年の金メダル獲得に貢献したベテラン、リュ・ヒョンジンも2009年以来となる代表復帰を果たした。準々決勝のドミニカ共和国戦で登板した後、「モンスター」の愛称で知られる左腕は現役引退を発表した。

5. アメリカ代表、投手陣の充実

アメリカ代表は常に強力な打線を揃えてきた。特に今大会は1番から9番まで、過去最高とも言われる布陣を揃えた。しかし、これまで常に指摘されてきたのは、投手陣の層の薄さであった。

しかし今年は違った。ア・リーグとナ・リーグのサイ・ヤング賞受賞者であるタリク・スクーバルとポール・スキーンズが参加し、さらにジャイアンツのエースで2025年ナ・リーグ奪三振王のローガン・ウェブ、若手のノーラン・マクリーンがローテーションを形成した。結果として、ウェブは8回2/3で1失点と好投し、準々決勝のカナダ戦で印象的な投球を見せた。スキーンズも期待通りの投球で強力なドミニカ打線を封じ、マクリーンも決勝のベネズエラ戦でその能力を示した。

アメリカ代表は再び準優勝に終わったものの、スキーンズとウェブはともにオールトーナメントチームに選出された。

6. 電気技師、再び躍動

チェコ代表のオンジェイ・サトリアは、2023年大会で大谷翔平から三振を奪い、一躍話題となった。そして2026年には、さらに印象的な活躍を見せた。オーストラリア戦で3回2/3を無失点に抑えると、東京プール最終戦の日本戦で先発を任され、圧巻の投球。球速は80マイル(約129キロ)に届かないが、「ワーカー」と呼ぶチェンジアップと、釣りのリールを投げる動作に例えるカーブを武器に、前回王者を相手に4回2/3を無失点に抑え、代表としての最後の登板を締めくくった。

マウンドを降りる際にはスタンディングオベーションが送られた。その投球はピッチングが球速だけではなく、配球、制球、そしてスター集団に対しても自分の投球をする勇気こそが重要だと証明した。

サトリアは代表からは引退したが、投手としてのキャリアを終えるわけではない。電力会社ČEZグループで働きながら、週末にはエクストラリーガのアローズ・オストラヴァで投げ続ける予定だ。

7. ブラジルの“有名な息子たち”

代表を去る選手がいれば、新たなスター候補もいる。今大会のブラジル代表では“有名な父を持つ”2人の若手が輝いた。まず一人は、元ホワイトソックスのワールドシリーズ優勝投手ホセ・コントレラスの息子、ジョセフ・コントレラス。17歳と今大会最年少だった右腕は、満塁の場面でアーロン・ジャッジを5-4-3の併殺打に打ち取った

試合後、ジャッジはコントレラスを手放しで称賛した。

「自分があの年齢の時にはあんなことはできなかった。素晴らしいボールを持っているし、マウンドでも落ち着いていた。球速は100マイル(約161キロ)に達していたし、テレビで見てきたようなアメリカ代表の打者と対戦していた。本当にすごいと思う。あの場面で自分をコントロールし、大きなピンチを切り抜けた。素晴らしい球を持っている」

目立った若手は彼だけではない。マニー・ラミレスの息子であるルーカス・ラミレスも、ツーソン予選での活躍に続き本大会でも存在感を示し、アメリカ戦で2本塁打を放った。

8. “タグボート”ウィルキンソンの魔球「インビジボール」

”タグボート”の愛称を持つ、カナダ代表のマット・ウィルキンソンも、サトリア同様、決して剛腕ではないが大舞台で輝いた投手の一人だ。

速球は90マイル前半(約145キロ前後)ながら、独特なフォームと打者の手元での伸びから、その速球は「インビジボール(invisiball/消える球)」と呼ばれている。準々決勝のアメリカ戦で終盤に2点ビハインドの場面で登板すると、カル・ローリーとブライス・ハーパーから三振を奪い実力を証明した。試合には敗れたものの、これはカナダにとってWBC史上最高の成績であり、初めてグループステージを突破した大会となった。

9. ドミニカ共和国が本塁打記録を更新

ドミニカ共和国は2度目の優勝こそ逃したものの、WBC史上最も恐ろしい打線を擁していたと言っても過言ではない。打線の上位8人全員がMVP投票を受けるほどの層の厚さで、ポール・スキーンズという怪物とマッチアップするまでは、相手投手陣を打ち崩し続け、大会新記録となる15本塁打を記録した。

一つひとつの本塁打はド派手なセレブレーションとともに祝われ、まさに野球の祭典を象徴していた。バットは高く宙を舞い、選手たちは喜びを噛み締めながらゆっくりとベースを回り、ダグアウトは歓喜に包まれた。

フアン・ソトは「だからこそ、感情を前面に出す選手が多いんだ。彼らは国のためにプレーし、楽しんでいて、観客もそれを感じている。それがすべてを引き出してくれる」と語った。