2026年のワールドシリーズは、「スイープにしては……白熱したシリーズ」になりかけていた。
しかし今や、そんなただし書きは必要ない。文句なしに白熱したシリーズとなっている。
レイズは延長12回裏の鮮やかな反撃によって、28日(日本時間29日)夜、トロピカーナフィールドで行われる第5戦に持ち込んだ。最初の4試合のうち3試合が1点差で決着した7回戦制のワールドシリーズ。第4戦で4-3と勝ったレイズが、シリーズの流れを変えられるか注目される。
ブルワーズは依然として球団初の世界一まであと1勝。しかし、レイズが今シリーズ初勝利をつかんだ劇的な展開を考えれば、選手たちの心理に大きな変化が生まれた可能性もある。ブルワーズの強さに風穴を開け、自分たちが持つ本来の強みを再認識したからだ。
「もう失うものなんてありません。だから、グラウンドに出て全力で戦い、勝つためにできることは何でもやるだけです」と外野手のジョニー・デルーカ(28)は力を込めた。
もちろん、失うものもある。ただ、デルーカの言葉にも一理ある。数字上はまだ敗退が決まっていなかったとはいえ、レイズは事実上、絶体絶命の状況に追い込まれていた。2004年にはレッドソックスがヤンキースとのア・リーグ優勝決定シリーズで3連敗から4連勝し、逆転でシリーズを制した。しかし、ワールドシリーズでは3連敗から逆転優勝したチームはおろか、第6戦まで持ち込んだチームすら過去にない。
それでもレイズには、前例のない逆転を本気で狙う大胆さがある。延長12回表、ブルワーズの新人遊撃手クーパー・プラット(22)に勝ち越しソロを浴び、敗退寸前に追い込まれた。延長12回裏に一つのアウトも奪われずに2点を挙げ、逆転サヨナラ勝ち。その劇的な反撃が、チームに新たな活力を与えた。
球団史上初の世界一を狙うブルワーズにとっても、レイズの逆転勝ちは少なからず重圧となる。第4戦では優勝を祝うシャンパンの香りが漂い始めるほど頂点に近づいていた。しかし、もう1試合落とせば、シリーズの雰囲気が一変しかねないと分かっている。
ブルワーズのパット・マーフィー監督(67)は、厳しい戦いを覚悟している。
「選手たちは簡単にはいかないと理解していると思います。厳しい戦いです。相手はア・リーグで最も強いチームです。シーズンを通じてそれを証明し、今日も勝負どころで力を発揮しました。簡単ではありません。これほど大きな目標を達成するには、逆境も乗り越えなければならないんです」
ブルワーズには、依然として数字のうえで大きな優位がある。さらに、「ミズ」がいる。ナ・リーグのサイ・ヤング賞初受賞が有力視される若きエース、ジェイコブ・ミジオロウスキー(24)が第5戦に先発し、球団史に名を刻む機会を迎える。一方のレイズは、第1戦に先発したニック・マルティネス(36)を第4戦で救援起用したため、投手陣のやりくりを迫られている。
レイズのケビン・キャッシュ監督(48)は、投手陣の総力戦を見据えている。
「ワールドシリーズ第5戦ですから、ほとんどの投手が1イニング以上投げられると言うでしょう」
どちらのチームにも肩入れしないファンにとって、第5戦は願ってもない一戦だ。ここまで勝敗ではブルワーズが圧倒的にリードしてきたが、試合内容は見応え十分。ブルワーズが大勝した唯一の試合では、2死から8点を奪う歴史的な猛攻があった。それ以外の試合はいずれも僅差の決着となり、一つひとつの采配やプレーの精度が勝敗を左右した。
似たスタイルで戦う両チームの競り合いは、十分に見る価値がある。その対決をさらに楽しめることになった。
試合時間と視聴方法
ワールドシリーズ第5戦は米東部時間28日午後8時(日本時間29日午前9時)開始。
日本ではNHK BSが29日午前9時から生中継し、J SPORTS 3が同日午後6時から録画放送する。SPOTV NOW、Amazon Prime Video内のSPOTV NOWチャンネル、Lemino(SPOTVパック)、MLB.TVでもライブ配信される。
米国ではFOXとスペイン語放送のFOX Deportesが全国中継し、FOX Oneでも配信される。対象の有料テレビ事業者の契約認証を利用すれば、MLB.TVでも視聴できる。
先発投手
ブルワーズ:右腕ジェイコブ・ミジオロウスキー(24)
注目データ:2026年レギュラーシーズンの防御率1.80、252三振、WHIP 0.80、被打率.157はいずれもMLBトップ。
ブルワーズのマーフィー監督によると、ミジオロウスキーは第4戦終盤にブルペンで待機していたものの、救援で登板させる予定はなかった。第5戦にもつれた場合、中4日の休養で先発する機会を失う危険を冒すべき状況ではないと判断した。結果として、ミジオロウスキーはその第5戦に先発する。
「敵地での1点リードを守るために、その選択をして失敗するわけにはいきません。仮に延長13回に3点リードしていたら、判断が少し違ったかもしれません。それでも、おそらく登板させなかったでしょう」
ミジオロウスキーは今ポストシーズン、パドレス、ドジャース、レイズとの各シリーズ第1戦に先発して1勝0敗、防御率2.70。ワールドシリーズ第1戦では5回4安打1失点に抑えた。第5戦には中4日で臨む。
レイズ:右腕ドリュー・ラスムッセン(31)
注目データ:2024年に複数イニングを投げる救援投手やオープナーを務めて以来、初めての中3日での登板。
レイズはレギュラーシーズン終了時に先発ローテーションを担っていた5投手全員を、ここ4日間で起用した。第2戦ではラスムッセン、第3戦ではフレディ・ペラルタ投手(30)、第4戦ではグリフィン・ジャックス投手(31)が先発し、ニック・マルティネス投手(36)は救援で2回、左腕イアン・シーモア投手(27)は救援で1回を投げた。第5戦を任せられる、十分な休養を取った先発投手がいない状況だ。
ラスムッセンには負傷歴があり、球団も通常より長い登板間隔を優先してきたため、中3日での再登板は考えにくかった。しかし、レイズは米東部時間28日午後(同29日)、ミルウォーキーでの第6戦開催を目指す第5戦にラスムッセンが先発すると発表した。今季、ラスムッセンがかつて「通常」とされた中4日での先発は7度だけ。球団が第1戦にマルティネスを先発させ、ラスムッセンを第2戦に回した理由の一つでもある。
第5戦をブルペンデーとして扱い、ラスムッセンに1、2イニングだけ投げさせ、レイズが勝った場合には第6戦にも先発させるのだろうか。ケビン・キャッシュ監督(48)の起用法が注目される。
スタメン
ブルワーズ: 第4戦でフリーリックの打順を上げ、ミッチェルを下げたブルワーズは、第5戦もこの並びを維持する。ラスムッセンと対戦した第2戦を含め、最初の3試合とは異なる打順となる。
- ジャクソン・チューリオ(22)、左翼
- ジェイク・バウアーズ(31)、一塁
- クリスチャン・イェリッチ(34)、DH
- ウィリアム・コントレラス(28)、捕手
- ブライス・トゥラング(26)、二塁
- サル・フリーリック(26)、右翼
- クーパー・プラット(22)、遊撃
- ギャレット・ミッチェル(28)、中堅
- デービッド・ハミルトン(29)、三塁
レイズ: ウィリアムソンは第1戦でミジオロウスキーに3打数無安打だったが、第4戦でサヨナラ打を放ち、第5戦では先発メンバーに入った。ただし、ナ・リーグのサイ・ヤング賞最有力候補を攻略できるかどうかは、上位打線の「ビッグ3」の働きにかかっているとみられる。
- ヤンディ・ディアス(35)、DH
- ジョナサン・アランダ(28)、一塁
- ジュニオール・カミネロ(23)、三塁
- リアム・ヒックス(27)、捕手
- ジョニー・デルーカ(28)、中堅
- チャンドラー・シンプソン(25)、左翼
- ベン・ウィリアムソン(25)、二塁
- ライアン・ビレード(27)、右翼
- テイラー・ウォールズ(30)、遊撃
先発投手の後、継投は?
レイズ: 敗れればシーズン終了となるため、投手陣の総力戦だ。第5戦前、キャッシュ監督は必要ならマルティネスを起用できると報道陣に説明した。ただし、ほかの先発投手であるペラルタとジャックスの登板は考えにくく、シーモアも第4戦で1回32球を投げた。抑えのブライアン・ベーカー(31)は2024年以来初めて2イニングを投げたが、球数は21球にとどまった。しかも、その前は1週間以上登板していなかった。
もっとも、シーズンの行方が懸かる一戦だ。第5戦に勝てば翌29日(同30日)は休養日(移動日)となり、投手陣を休ませられる。右腕コール・サルサー(36)、左腕スティーブン・マッツ(35)とギャレット・クレビンジャー(32)は第4戦で登板せず、最も休養を取れている。キャッシュ監督は起用法は未定としながらも、「大半の投手」は1イニング以上投げられると見込んでいる。
注目すべき負傷者
ブルワーズ: ワールドシリーズ開幕前、最大の懸念材料だったブランドン・ウッドラフ(33)は、第3戦で最後の3アウトを奪い、その不安を払拭した。必要なら第4戦の登板にも備えると話していただけに、第5戦でも登板を申し出る可能性がある。
レイズ: 第4戦のサヨナラ勝ち直前、カミネロが左足を負傷し、足を引きずりながら退いた場面では、チームに緊張が走った。しかし翌28日(同29日)、第5戦の先発ラインアップに名を連ねた。先発左腕シェーン・マクラナハン(29)は今ポストシーズンの登板を見送ることが決まっているが、来春には復帰できる見通し。そのほかに新たな負傷情報はない。
好調な選手、不調な選手は?
ブルワーズ: チューリオのワールドシリーズ最初の4試合での10安打は、1928年のベーブ・ルース(享年53)と並ぶ最多記録だ。第4戦でも2安打を放ち、23歳未満の選手によるポストシーズン通算最多安打記録も更新。通算24試合で31安打とし、アンドリュー・ジョーンズ(49)が45試合で記録した30安打を上回った。プラットは優勝が決まる可能性のあったワールドシリーズの一戦で4安打を放った史上初の新人となった。延長12回表の勝ち越し本塁打も含まれる。今ポストシーズンは打率.333、OPS.829を記録している。
レイズ: シンプソンは第4戦で3安打を放ち、打線に変化をもたらす存在であることを改めて示した。ヒックスも決勝につながる反撃での重要な単打を含む2安打。ポストシーズン序盤の不振から、打撃に復調の兆しがある。ディアスは第3戦で2安打、第4戦でも1安打1四球をマークし、2試合連続無安打から立ち直った。ブルワーズの強力な投手陣に苦しむ打者はまだ多いが、第4戦の劇的な勝利で選手たちの意識も変わるかもしれない。
ファンが知っておきたい、そのほかの情報
- レイズは、ワールドシリーズで3連敗から第5戦に持ち込んだ史上5チーム目となった。過去には2024年のヤンキース、1970年のレッズ、1937年のジャイアンツ、1910年のカブスが第4戦で勝ったが、いずれも第5戦で敗れ、第6戦には進めなかった。
- ブルワーズは、ワールドシリーズで一度も優勝していない現存5球団の一つ。ほかの4球団はマリナーズ、パドレス、レイズ、ロッキーズだ。あと1勝すれば、この一覧から抜ける。
- レイズは過去2度のワールドシリーズでも、いずれも第5戦に敗れている。2008年はフィラデルフィアでフィリーズに敗れてシリーズ敗退が決定。2020年も第5戦を落とし、シリーズ成績は2勝3敗となった。
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