メッツとレンジャーズによる、ブランドン・ニモとマーカス・セミエンの大型トレードは今後のトレード・FA市場にどのような影響を与えるのか? MLB.comのマーク・ファインサンド記者が4つの視点から分析した。
1. このトレードに影響されるFAは? 外野に空きが生まれたメッツは、カイル・タッカーやコディ・ベリンジャーを狙う?
ブランドン・ニモの放出により、メッツの外野には明確な空席が生まれた。もともとメッツはカイル・タッカー、あるいはコディ・ベリンジャーの獲得に動くと予想されていたため、このトレードによってその可能性がさらに高まったと言える。タッカー、ベリンジャーの両者にとっても、資金力のあるメッツが争奪戦に加わることは大きなプラスだ。
2. このトレードがレンジャーズの補強戦略に与える影響は?
レンジャーズは、制約ある予算内で戦力維持と若返りを同時に進めようとしており、今回のトレードで、向こう2年間の支出を減らすことに成功した。マーカス・セミエンは、今後2年間が2600万ドル(約40億円)で、その後の2028年(契約最終年)は年2000万ドル(約31億4000万円)の契約だった一方、ニモは2030年まで年2050万ドル(約32億1700万円)の契約。さらに、テキサスはこのトレードで500万ドル(8億8500万円)を受け取っており、財政的な負担を減らすことに成功した。
3. このトレードがメッツに与える影響は?アロンソの復帰に影響は出るか?
メッツのデービッド・スターンズ編成本部長は、失望の残る2025年を経てチームの中核を多少入れ替えたいと考えており、このトレードはまさにその目的に合致する。メッツは引き続きピート・アロンソとの再契約に関心を持っているため、このトレードがアロンソ残留の可能性に大きな影響を与えることはない。
セミエンを獲得したことで、この冬のメッツはロスター構築においてより柔軟性を得た。セミエンが二塁を守るため、タッカーやベリンジャーを獲得しなかった場合はマクニール、またはベンジーが左翼、さらに今後の動向次第では中堅を守る可能性がある。
セミエンは遊撃手フランシスコ・リンドーア、三塁手マーク・ビエントスと共に内野を構成する。ただしアロンソが退団した場合、ビエントスが一塁へ回る可能性があり、その場合はブレット・ベイティ、あるいは外部補強(アレックス・ブレグマン?)が三塁を埋める選択肢も生まれる。
一つだけ変わらないのはメッツが引き続き、投手補強を最優先事項としていることだ。
4. このような大型トレードが今オフのトレンドになるのか?
テイラー・ウォードとグレイソン・ロドリゲスのトレードに続いて早くも今オフ2つ目の大型トレードとなったが、これは大きな傾向というより、単にニーズが合致したチーム同士の取引が続いただけと見るべきだ。いずれも再建のためのトレードではないため、再建時にありがちな3対1、4対1のようなマイナー選手中心の大型トレードではなかった。
メッツは内野守備の改善を明確な目標としており、セミエンの加入はまさにそれに合致する。一方レンジャーズは出塁能力に優れた打者を探しており、ニモは過去2年でやや成績を落としているとはいえ、長年にわたりその能力を示してきた選手だ。いわゆる「昔ながらの純粋なトレード」は近年減っているが、今でもこのように成立することはある。
12年前にはタイガースがプリンス・フィルダーをレンジャーズへ放出し、代わりにイアン・キンズラーを獲得した。また2019年にはマーリンズがザック・ギャレンをダイヤモンドバックスへ放出し、対価としてジャズ・チザムJr.を受け取った。1対1のトレード自体は時折あるが、両球団が優勝を狙う状況でこれほどの規模の交換が成立するのは極めて稀である。オフシーズンは、各球団が自軍の「厚み」と「不足」を見極め、そのバランス調整をする時期であり、今回のようなトレードはそれにまさに合致する。
