佐々木が救援へ回ったのは、翌年は先発へ戻すという前提があったためである。抑えとして3セーブ、計10回2/3を投げて自責点1の結果を残しても、その方針は変わらなかった。球質が大きく向上しただけでなく、強豪チーム相手に無失点を積み重ねる過程で、佐々木は明らかに自信を取り戻していた。右肩の負傷で苦しんだレギュラーシーズンを経て、長い努力がようやく実を結んだ。
「重要だったのは、朗希の投球フォームを取り戻すことだった」と、野球運営部門代表アンドリュー・フリードマンはワールドシリーズ第7戦後に語った。
「その点で大きな進歩があったと感じている。だからわれわれは佐々木をただの先発ではなく、非常に優秀な先発として見ている。今オフもその準備を続け、スプリングトレーニングで最高の状態に仕上げ、再び勝利に貢献してもらえるようにする」
明るい材料は?
最大の収穫は球速の復活だ。先発時代、99マイル(約159キロ)以上を記録した球はわずか8球だったが、9月24日の救援デビュー以降は46球も投げている。
球速が戻っただけでなく、フォーシームと決め球スプリットの制球も格段に改善された。先発時は22四球、24三振と苦しんでいたが、救援では四球率を14.3%→10%に改善し、奪三振率も15.6%→20%へ上昇させた。ストライクゾーンにストレートとスプリットを投げ分けられるようになったことで打者は狙いを絞りづらくなり、佐々木のスプリットは51.3%という驚異的な空振り率を記録した。
リリーフとしての投球内容は、昨オフに各球団が争奪戦を繰り広げた“あの佐々木朗希”そのものだった。自信と確信を持った投球はドジャースが求めてきた姿であり、来季に向けて明るい材料となる。
懸念材料は?
全体的にはポジティブな要素が多く、ポストシーズンを通して求められる結果を残した一方で、直球にはやや気になる点もあった。
ナ・リーグ地区シリーズまではフォーシームの平均球速が99〜100マイル(約159〜161キロ)だったが、リーグ優勝決定シリーズとワールドシリーズではわずかに落ち、最後の5試合では平均98マイル台前半(約158キロ)だった。また、11登板のうちフォーシームで複数の空振りを奪ったのはわずか2試合だけ。先発時より空振り率自体は(10.1%→20%)改善されたものの、やや気になる傾向ではある。
この球速低下が、ポストシーズンで最も負荷の高かった地区シリーズ(NLDS)第4戦(36球で3回完全投球)の直後であったことは偶然ではないだろう。そこから3日休んで迎えたナ・リーグ優勝決定シリーズ(NLCS)第1戦では平均98マイル(約158キロ)となり、ポストシーズン唯一の失点を許した。
未知数の領域
ここまで佐々木のポストシーズンでの投球をみてきたが、実際には「分かっていること」より「分からないこと」のほうが多いかもしれない。先発と救援では状況も負荷も大きく異なるため、今回は出てこなかった別の要因が影響する可能性は十分にある。
佐々木は新たな球種を試すかもしれない。肩のリハビリ中にカットボールに取り組み、メジャーの試合ではまだ投げていないが、マイナーでの調整登板では使用した。また、復帰後はスライダーを封印していた。
ドジャースの一員としてオフシーズンを丸々使って準備できるのも大きい。加入したのは今年1月で、スプリングトレーニングまでほとんど時間がなかったが、今年は数カ月をかけて準備できる。
救援での登板から得られる最も重要な結論は、「佐々木朗希の圧倒的な球質は依然として健在」ということだ。あとは、それを再び最大限に引き出せるかどうか。
