ともにワールドシリーズ制覇経験がない2チームによる今シリーズ。開幕前から、どちらが勝っても歴史的な瞬間を目撃することになると分かっていた。
いずれにせよ、歴史的な瞬間を目撃することに変わりはない。ただ今、ブルワーズとレイズが狙っている歴史は、さらにまれなものだ。ブルワーズは7回戦制のリーグ優勝決定シリーズとワールドシリーズをともに4連勝で制する史上初のチームを目指す。一方のレイズには、0勝3敗から巻き返してワールドシリーズを制する史上初のチームとなる可能性が残されている。
言うまでもなく、27日夜(日本時間28日)にトロピカーナフィールドで行われる第4戦を前に、明らかにブルワーズが優位だ。シリーズ最初の2試合では本拠地でいずれも僅差で勝利し、第3戦では敵地トロピカーナフィールドで10-1と大勝。しかも1イニングで2死から8点を奪い、ワールドシリーズ新記録を樹立した。
「このクラブハウスでは、みんながお互いを大切に思っている」とブルワーズの二塁手ブライス・トゥラング(26)。
「仲間のために、できる限り全力で戦う。最後までやり切らないといけないし、相手にプレッシャーをかけ続けないといけない」
レイズが重圧を感じていることは間違いない。
「今は0勝3敗だけど、明日から始まる」とヤンディ・ディアス(35)は通訳を介して語った。
「まず明日の1試合に勝たないといけない。そこからだ」
7回戦制のポストシーズンで3勝0敗としたチームは、過去43例中42例(98%)でシリーズを制しており、そのうち33例は4連勝で決着した。今季のナ・リーグ優勝決定シリーズでブルワーズがドジャースに4連勝したケースも含まれる。0勝3敗から第7戦まで持ち込んだチームは過去2球団だけで逆転してシリーズを制した唯一の例は、ヤンキースとのア・リーグ優勝決定シリーズを戦った2004年のレッドソックスだ。ワールドシリーズに限れば、0勝3敗から第6戦まで進んだチームさえ過去にない。
今ワールドシリーズでは、ブルワーズの勢いだけでなく、レイズのミスも目立っている。特に守備では、本来のレイズらしさが影を潜めている。レイズは今季、ア・リーグ東地区を制してリーグ第1シードを獲得。地区シリーズでは宿敵ヤンキースに3連勝し、リーグ優勝決定シリーズでも1勝2敗からガーディアンズに逆転勝ちした。そのチームとは思えないミスが、今シリーズでは続いている。
「必ずしも僕たちが悪いプレーをしているだけだとは思わない」とレイズの主砲ジュニオール・カミネロ(23)は通訳を介して話した。
「ブルワーズを評価すべき部分が大きい。向こうが本当に素晴らしいプレーを続けている。さっきウィリアム・コントレラスにも『君に幸運を。このシリーズでの健闘を祈っているよ』と言った。でも今となっては『ちょっとやりすぎだよ』という感じかな。今はこういう状況だ。ブルワーズをたたえるしかないけど、僕たちにはなかなか流れが向いてこなかった」
レイズは第4戦でグリフィン・ジャックス(31)を先発に立てる。ブルワーズは試合開始の数時間前、ダスティン・メイ(29)の先発を発表した。後がないレイズは当然、総力戦で臨む。ただ、その点でもブルワーズには優位性がある。第3戦では主力リリーフ投手を1人も投入せずに済んだからだ。
歴史的な瞬間を目撃しようとミルウォーキーから飛んできたブルワーズファンは、第4戦でも大勢集まりそうだ。さらに増える可能性もある。そして、どちらに転んでも、今ワールドシリーズでは新たな歴史が生まれる。
試合日時と視聴方法
第4戦は27日午後8時(同28日午前9時)開始。米国ではFOX、FOX Deportesで全米中継され、FOX Oneでも配信される。
日本ではNHK BSが28日午前9時から生中継。SPOTV NOW、Lemino(SPOTVパック)、MLB.TVでもライブ配信される。J SPORTS3は同日午後6時から録画放送。
先発投手は?
ブルワーズ:右腕ダスティン・メイ(29)
注目データ:カージナルス所属時の3月29日、今季開幕3戦目のレイズ戦で10安打6失点
ブルワーズは第3戦で大差をつけた九回、ブランドン・ウッドラフを登板させた。その起用もあり、第4戦の先発はメイに傾いた。今ポストシーズン開幕時点で、チーム唯一のワールドシリーズ経験者でもある。右腕は本来なら調整で投球する予定だった第2戦で1回を無失点。ドジャース所属時の2020年ワールドシリーズでは2試合に救援登板し、レイズとのシリーズを4勝2敗で制して優勝に貢献した。
レイズ:右腕グリフィン・ジャックス(31)
注目データ:直近6登板、計24回で防御率1.88
ジャックスにとって今ポストシーズン3試合目の登板となる。地区シリーズでは救援待機し、第3戦で2イニングだけ登板した。リーグ優勝決定シリーズ第3戦では先発を務め、4回3失点。ワールドシリーズ開幕後は緊急時に備えて救援待機していたが、第4戦で今シリーズ初登板を迎える。
レギュラーシーズン終盤のジャックスは絶好調だった。最後の4先発では18回を投げ、9安打3四球、15三振でわずか1失点。レイズも4試合すべてに勝った。ヤンキースタジアムでは1失点したものの、対戦した8打者の半数に当たる4人から三振を奪った。12日前のガーディアンズ戦では4回3失点。1イニングで3点を失う苦しい内容だった。
先発メンバー
ブルワーズ: ブルワーズは第3戦で歴史的大勝を含め、今ワールドシリーズ最初の3試合で同じ先発メンバーを組んだ。第4戦では1カ所だけ変更。サル・フリーリッフが8番から6番に上がり、ギャレット・ミッチェルと打順を入れ替えた。
- ジャクソン・チューリオ(22)、左翼
- ジェイク・バウアーズ(31)、一塁
- クリスチャン・イェリッチ(34)、DH
- ウィリアム・コントレラス(28)、捕手
- ブライス・トゥラング(26)、二塁
- サル・フリーリッフ(26)、右翼
- クーパー・プラット(22)、遊撃
- ギャレット・ミッチェル(28)、中堅
- デービッド・ハミルトン(29)、三塁
レイズ: レイズはブルワーズがメイの先発を発表する前に打順を決定。第3戦で右打者を極端に多く並べた打線から、より通常の構成に戻した。
- ヤンディ・ディアス(35)、DH
- ジョナサン・アランダ(28)、一塁
- ジュニオール・カミネロ(23)、三塁
- リアム・ヒックス(27)、捕手
- ジョニー・デルーカ(28)、中堅
- チャンドラー・シンプソン(25)、左翼
- ライアン・ビラーデ(27)、右翼
- リッチー・パラシオス(29)、二塁
- テイラー・ウォールズ(30)、遊撃
先発降板後、継投は?
ブルワーズ: 第3戦を迎えるまで、ブルワーズは今ポストシーズン最初の90イニングのうち66イニングで、終了時点の点差が1点以内だった。点差が2点を超えたのも、わずか4イニング。接戦が続いたため主力救援投手の登板負担は大きく、アーロン・アシュビー(28)はチーム最多の15回2/3を投げている。
レイズ: シーズン終了が懸かる一戦だけに、総力戦となる。ケビン・キャッシュ監督(48)はジャックスが少しでも崩れれば早めに交代させ、今シリーズで苦戦が続く救援投手陣を相手打者との相性に応じてつぎ込むとみられる。
第1戦に登板したベテラン先発のニック・マルティネス(36)は、複数イニングを任せる選択肢になる。守護神ブライアン・ベーカー(31)も1回を超えて投げる可能性がある。第2戦に先発したドリュー・ラスムッセン(31)は過去の負傷歴を考えると、起用される可能性は高くなさそうだ。
ただし、第4戦で負ければレイズのシーズンは終わる。あらゆる投手起用が考えられる。
注目すべき負傷者
ブルワーズ: ワールドシリーズ開幕前、ブルワーズにとって最大の懸念材料はウッドラフだった。その右腕は第3戦で最後の3アウトを奪い、不安を払拭した。7月4日以来となる実戦登板で、十分な調整期間もほとんどなかっただけに、通常なら連投は考えにくい。ただ、ここまで予想外の展開が続く中、どんな可能性も完全には否定できない。
レイズ: 先発左腕シェーン・マクラナハン(29)は今ポストシーズンの登板を見送ることが決まった。ただし来春には復帰できる見込み。ほかに新たな負傷者はいない。
好調な選手、不調な選手は?
ブルワーズ: チューリオは第3戦で五回までに4安打。1982年ワールドシリーズ第1戦のポール・モリター(70)、2011年第3戦のアルバート・プホルス(46)に続く、ワールドシリーズ1試合5安打の史上3人目まであと1本だった。今ワールドシリーズでは14打数8安打、3盗塁、4得点。
コントレラスも打撃で打率.419、出塁率.490、長打率.651と好調なうえ、捕手として際立つ働きを続けている。ワールドシリーズ最初の3試合で盗塁を試みた走者を3人刺した捕手は、1993年の故ダレン・ドールトン(享年55歳)以来となる。
レイズ: レイズ打線に「好調」と呼べる選手はほとんどいない。直近17イニングで1得点、安打も7本にとどまる。今シリーズで3安打以上の選手はアランダの4安打とシンプソンの3安打だけ。ディアスは最初の2試合で無安打だったが、第3戦では2安打を放った。
救援投手陣も好調とは言い難い。シーズン中盤ならさほど目立たなかったかもしれないチーム全体の不振が、野球界最大の舞台で起きている。
ほかにファンが知っておきたいポイントは?
- ブルワーズは第3戦で本塁打なしで10得点。ワールドシリーズで本塁打を打たずに2桁得点したチームは、2014年第4戦でジャイアンツがロイヤルズに11-4で勝って以来となった。
- 現在のMLB30球団でワールドシリーズ制覇経験がないチームは、ブルワーズ、マリナーズ、パドレス、レイズ、ロッキーズの5球団。ブルワーズはあと1勝で、そのリストから抜ける。
- レイズは前回出場した2020年ワールドシリーズでも第4戦に勝利し、球団史に残る名場面を生んだ。ランディ・アロザレーナ(31)が、ブレット・フィリップス(32)のまさかの安打とドジャース守備陣の複数のミスが重なる間にサヨナラのホームを踏んだ。一躍ヒーローとなったフィリップスが、その後に両腕を広げて飛行機のように外野を駆け回った場面も有名になった。
- レイズの象徴的存在エバン・ロンゴリア(41)が第4戦の始球式を務める。第3戦ではジョー・マドン元監督(72)とジェームズ・シールズ(44)が始球式を務めた。
- 五回終了時には、MLBとがん研究支援団体「Stand Up To Cancer」が、ワールドシリーズ恒例の取り組みを実施する。選手、コーチ、審判、スタッフ、ファンが、がんの影響を受けた大切な人をたたえるメッセージを書いたカードを掲げる。
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