ウィンター・ミーティング直前、ヤンキースの補強戦略は

December 1st, 2025

「理想を言えば昨年よりも抑えたい」

ハル・スタインブレナー筆頭株主のこの発言をきっかけに、ここ数週間、ヤンキースの年俸総額をめぐって議論が起きている。昨年、3億1900万ドル(約494億円)を投じたチームは94勝を挙げたものの、10月には早々に姿を消した。

それでも、ヤンキースはヤンキース。資金力を武器にできるチームであることに変わりはない。

「9桁の契約をもう1本積む覚悟は?」と問われたブライアン・キャッシュマンGMはにやりと笑ってこう答えた。

「もちろん。金を使うのは得意だからね」

ヤンキースはフロリダで予定されている来週のウィンター・ミーティングに向けて準備を進めているが、買い物の一部はすでに始まっている。トレント・グリシャムは2202万5000ドル(約34億円)のクオリファイングオファーを受諾。ティム・ヒルとライアン・ヤーブローも再契約して投手陣を固めた。だが、やるべきことは山積みだ。

キャッシュマンGMはこう話す。

「昨年はいいチームだった。ただ、FAで何人も抜けて、同じチームではなくなった。これからどう形になるか見ていく」

チームの補強ポイント

キャッシュマンGMは、FA先発のマイケル・キングにすでに連絡を取ったと明かしているが、最大の補強ポイントはブルペンのようだ。今季のリリーフ陣は安定を欠き、FAではデビン・ウィリアムスとルーク・ウィーバーが流出している。

ブルペン防御率は4.37で、ア・リーグ15球団中11位。名物チェンジアップ「エアベンダー」を操るウィリアムす獲得も期待されたほどには機能せず、シーズン中にはデービッド・ベッドナーやカミロ・ドバルらを加えて立て直しを図り、ベドナーは22試合で防御率2.19、10セーブと安定した成績を出したが、ドバルは『伸びしろ』のある素材型の投手だ。

また、ヤンキースはコディ・ベリンジャーの運動能力と多彩さを評価し、残留に関心を示している。ただし、ベリンジャーは好成績を受けて多くの争奪戦が予想される。カイル・タッカーの代理人とも連絡を取り、両者をFA外野手の中でも最上位とみている。

さらに、アンソニー・ボルピーがシーズン開幕に間に合わないため、内野の補強も検討対象だ。現状ではホセ・カバイェロかオズワルド・カブレラが開幕で遊撃に入る見込みだ。

トレードで放出候補の選手は

ヤンキースが大きな動きを望むなら、こんな大胆な案もある。ジャズ・チザム Jr.は来季がFA前最後の年で、契約延長の話はさほど進んでいない。今季は31本塁打・31盗塁の快挙を達成しており、放出すれば相応の見返りを得られる。

より現実的なルートとしては、ジェイソン・ドミンゲスやスペンサー・ジョーンズをトレードに含めるケースだ。ベリンジャーやタッカー獲得の成否も関係してくるだろう。ドミンゲスはシーズン後半ほとんど出番がなく、再びベンチに置いておくのは得策ではない。

ジョーンズもまた同様だ。昨季マイナーでは35本塁打、OPS.933と強烈な数字を残したが、438打数179三振と空振り率の高さが課題。それでも他球団ならすでにメジャーデビューしていただろう、とキャッシュマンは認めている。

注目の若手プロスペクト

カルロス・ラグラン(球団プロスペクト2位)は、今季マイナーで24試合(23先発)で11勝8敗、防御率3.53、120イニングで168奪三振という内容で、順位を大きく上げた。

ドミニカ共和国出身で、わずか1万ドル(約155万円)で発掘された掘り出し物。身長約201センチの22歳右腕は、100マイルに届く速球に加えて制球力も向上している。レッドソックスをワイルドカードシリーズから叩き落とす快投を見せたキャム・シュリットラーのような成長曲線を描く可能性もある。

ルール5ドラフトの注目点

ヤンキースはジョーンズ、エルマー・ロドリゲス、チェイス・ハンプトンを40人枠に加え、ルール5ドラフトから保護した。だが、Pipelineで上位にランクされるプロスペクトの中には、依然としてリスクにさらされている選手もいる。

ヘンリー・ラレーン(9位)、ブロック・セルビッジ(10位)、ブレンダン・ベック(11位)、ジェイス・アビーナ(24位)、T.J.ラムフィールド(25位)、エリック・レイゼルマン(26位)、ハリソン・コーエン(30位)らが該当する。

MLBの最新ニュースを見逃さない!

ヤンキースの最大の問い

アーロン・ジャッジは過去4年で3度ア・リーグMVPを受賞。史上屈指の右打者であり、現役の首位打者でもある。「すべての個人タイトルと引き換えに、ワールドシリーズのリングが欲しい」という言葉は、本音だろう。

94勝でブルージェイズとア・リーグトップの勝ち星を分け合った今季、球団内には「2025年の戦力を大きく変える必要はない」という考え方もある。球団幹部は、ヤンキースとブルージェイズ、そして連覇中のドジャースとの差は、外部の予想ほど大きくないと見ている。

果たして、ジャッジの全盛期に優勝をもたらすだけの戦力は整うのか。その答えは、フロリダで行われるウィンター・ミーティングでのあらゆる動きに影響を与えることになる。