今オフのFA市場で最高の投手(選手といってもいいだろう)ついて、議論の余地はない。タリック・スクーバルが、ほかを大きく引き離している。だが、打者に限れば事情が違う。
過去4回のFA市場はアーロン・ジャッジ、大谷翔平、フアン・ソト、カイル・タッカーが目玉だった。今オフは、その水準の打者が市場にいない。
その代わり、最高の打者と期待されるだけの実績を持った、興味深い候補がそろっている。その座を争う7人について、期待できる点と懸念点を見ていこう。
以下の総合順位は、MLB.comのシニア全国担当記者マーク・フェインサンドによる、今オフのFA選手トップ30に基づく。
佐藤輝明、三塁手(総合4位)
期待できる点:村上宗隆(35本塁打)と岡本和真(33本塁打)が、ともにメジャー1年目の2026年に30本塁打を超えた。そして今年も、日本を代表する強打者が、また一人メジャーへ向かう。佐藤は、今季の日本プロ野球で打率.306、39本塁打、106打点を記録し、三冠王に輝いた。2025年にも40本塁打を放っている上、3月にようやく28歳になる。このリストで最も大きな可能性を秘めた選手かもしれない。
懸念点:佐藤にはまだMLB投手との対戦経験がなく、打撃がどこまで同じように通用するかは判断しにくい。村上と岡本は十分に適応したが、2026年は三振も多かった。佐藤も同じような課題に直面するかもしれない。長期的にどのポジションを守るかも、不確定要素だ。
鈴木誠也、右翼手(総合5位)
期待できる点:メジャーにうまく適応した日本人強打者の代表となる一人だ。2022年にカブスと5年8500万ドル(約134億1000万円)で契約して以来、派手に注目されずとも、MLBで最も安定した打者の一人であり続けてきた。過去4シーズンすべてで20本塁打以上、OPS+125以上を記録。この条件を満たす選手は、鈴木のほかに大谷、ソト、ラファエル・デバース、ブライス・ハーパーしかいない。2026年には守備でも大きく前進し、守備の得点価値を示すフィールディング・ランバリュー(FRV)でプラス7を記録した。
懸念点:鈴木は走塁に優れた選手ではなく、守備でプラスの価値を生み出したシーズンも、2026年が初めてだった。守備が以前の水準に戻れば、打撃が選手としての価値を支える必要がある。ただ、打撃のピークはすでに過ぎた可能性もある。8月に32歳となり、ハードヒット率は2023〜25年の48.6%から、2026年には38.9%へ低下した。
ランディ・アロザレーナ、左翼手(総合6位)
期待できる点:長打と足で安定して脅威となることが最大の魅力だ。2026年に6年連続の20本塁打、20盗塁を達成。同等以上の連続記録を持つ選手は、バリー・ボンズ(9年連続)、ボビー・ボンズ(7年)、ボビー・アブレイユ(7年)、ウィリー・メイズ(6年)だけだ。加えて、打撃では自己最高となるwRC+151を記録。ヨーダン・アルバレスとピート・クロウ=アームストロングに次ぎ、規定打席到達者で3位タイだった。
懸念点:2026年の成績は、これまでの実績から大きく飛躍している。従来は「良い打者」ではあっても「素晴らしい打者」とまではいえず、詳細な指標を見ると、今年の水準が今後も続くと予想できる基準には達していない。守備の弱さも懸念だ。2022~26年のFRVはマイナス33で、外野手では下から5番目だった。
ブランドン・ラウ、二塁手(総合7位)
期待できる点:昨オフ、レイズからパイレーツへトレードされると、総合的にみて自己最高のシーズンを送った。35本塁打、wRC+121に、二塁での優れた守備(FRVプラス12)が加わり、FanGraphsのWAR4.9は野手17位だった。毎年、平均以上の打撃成績を残し、30本塁打を超えるシーズンも今年で3度目。このリストにいる、ほかのMLB所属FA選手5人の合計2度を上回る。
懸念点:鈴木より43日早く生まれており、このリストで最年長。継続して出場し続けてきた訳でもなく、134試合を超えて出場したシーズンは2度しかない。2026年以前は守備評価が低く、二塁でのFRVはマイナス17だった。
ジェイク・バウアーズ、一塁手(総合11位)
期待できる点:2026年にバウアーズほど評価を上げたFA選手は、ほかにいないかもしれない。本塁打26本、打点86、打率.266、出塁率.389、長打率.484は、すべて自己最高。さらに、ナ・リーグ優勝決定シリーズ(NLCS)の最優秀選手に輝いた。特にこのリストのほかのMLB所属FA選手と比較すれば、今年の成績を支えた詳細な指標には文句をつけようがない。
懸念点:詳細な指標は2026年の飛躍を裏付けるが、それまでの実績を見ると慎重になってもおかしくない。開幕前の通算成績は打率.211、出塁率.307、長打率.365。主に控えの打者として起用され、シーズン12本塁打を超えたこともなかった。また、一塁は守備で生み出せる価値が小さく、その上、守備自体も特に優れてはいない。一塁での通算FRVはマイナス12だ。
ルイス・アライズ、二塁手(総合12位)
期待できる点:アライズはMLB随一のコンタクトヒッターで、首位打者を3度獲得。2026年も、4度目まであと一歩に迫った。守備でもFRVプラス10と最大の弱点の一つだった分野を改善した。パワーとスピードがある訳ではないため、貢献に上限はあるものの、守備の進歩を維持できれば、来年、この7人のWARでトップに立っても驚きはない。
懸念点:2026年のfWAR4.1は、2024〜25年の合計2.0の2倍以上だった。同じ活躍を再現できるかは疑問が残る。この上昇には守備の改善が大きく関わっているが、その水準も維持できるかは、まだ分からない。2019〜25年の二塁でのFRVはマイナス28で、同ポジションの最下位だった。
ジャズ・チザムJr.、二塁手(総合15位)
期待できる点:球界でも評価が大きく分かれる選手の一人だ。スプリングトレーニングでは、大谷翔平に続く「50本塁打、50盗塁」を目標に掲げたものの、それとは大きくかけ離れた一年となった。それでも、2024年開幕以降のfWAR11.8とFRVプラス15は、このリストのMLB所属選手でトップ。同期間は、年平均で約25本塁打、37盗塁を記録している。
懸念点:2026年に打撃で起きた変化を完全には無視できない。wRC+98と平均を下回り、バレル率は15%から8.2%へ、6.8ポイント低下。三振率は30%に近づいた。負傷を繰り返してきた点も気になる。2021年以降の出場は年平均116試合で、長期契約を通して健康を保ち、結果を残し続けられるかについて、球団が慎重になるだけの理由はある。
