あるツインズの打者は、手を離れた瞬間は見えるのに、次の瞬間には通り過ぎていたと語る。
あるロッキーズの打者は、反応する前に本塁へ届いていたように感じたと言った。
あるブレーブスの打者は100マイル(約160.9キロ)備えていたのに、気づけばカットボールやスライダーに手を出していた。
カブスは、ほとんどのチームよりも多くジェイコブ・ミジオロウスキーと対戦。それでも、その監督はストライクゾーン高めへの速球を「誰にも打てない」と評した。フィリーズはカイル・シュワーバーがいなければ、文字通り9イニングを無安打に抑えられていた。
そして、ブルワーズのエースに最大級の賛辞を送ったのは、ヤンキースのスーパースター、アーロン・ジャッジだったかもしれない。
「103マイル(約165.8キロ)を投げる投手はいるけど、普通はもう少し時間がある。でも彼みたいに、まるで捕手のミットに“落としてくる”ような感覚だと、かなり厳しい」とジャッジは5月に話していた。
「初めての対戦を楽しみにしていた。彼の試合はたくさん見てきたし、どんな選手なのかも見ていた。本当にすごい球だよ。ブルワーズには、本当に素晴らしい若手スターがいるね」
各チームはシーズンを通してミジオロウスキーの攻略法を探し続けたが、答えはなかなか見つからなかった。右腕は防御率1.80、252奪三振、WHIP0.80、被打率.157と、いずれもメジャー最高の成績でシーズンを終了。ナ・リーグのサイ・ヤング賞の最有力候補として10月を迎える。
対戦した打者たちに何がそれほど難しいのかと聞けば、球速はあくまで1つの要素でしかないことが分かる。
「試合後、マーシーに聞かれたんだ」とフィリーズのスター、ブライス・ハーパーは6月、チームメートのブランドン・マーシュとのやり取りを明かした。
「『今まで対戦した中で、たぶん最高の投手だ』とマーシュは言っていた。それから、僕が対戦した中で最高の投手は誰かと聞かれたので、マット・ハービーと答えた。彼はリリースポイントが打者に近い速球を投げていたし、高めで伸びる速球を本格的に武器にした最初の投手の一人だった。もちろん、104マイル(約167.4キロ)となると、少し話は違ってくるけどね」
その言葉は、ミジオロウスキーが今季最高の登板を見せたあとに出たものだった。メジャーデビューからちょうど1年となる6月12日、アメリカンファミリーフィールドの観客をくぎ付けにし、打者27人に対して15奪三振、95球で完封した。
ハーパーは、ひょっとすると10月を意識していたのかもしれない。その対戦に前向きな意味を見いだしていた。
「対戦できて良かったと思う。結果がどうだったとかではなくて、実際に対戦して、どんな球なのかを見られたことが良かったんだ」と話した。
ツインズも8月9日の対戦で苦しめられた。この試合で、ミジオロウスキーは史上2番目の速さでシーズン200奪三振に到達。第1打席で103マイル(約165.8キロ)の速球を目にしたロイス・ルイスは、これまで対戦した中でも最も打つのが難しい球の一つだったと評した。
ブルックス・リーは、ミジオロウスキーが身長約201センチの体を生かして、打者の近くからボールを投じているとコメント。さらに、プレートの一塁側に立つことで、投球の角度も変わる。来る球が分かっていても、打者には対応する時間がほとんどなかった。
「手を離れたときは、よく見えていると感じるんだ。でも、次の瞬間には通り過ぎている。特にゾーンの高めだね。そこに速球を投げられたら、打つのはほとんど不可能だと感じる」とツインズのコディ・クレメンスは話した。
ツインズのデレク・シェルトン監督は、ゾーン上部付近での球の動きに注目した。打者は100マイルを超える球に対応しながら、ボールになるかストライクになるかを見極めなければならない。「おそらく、球界で最も難しい対戦の一つ」と評した。
その数週間前、ロッキーズはミジオロウスキーに先頭から7者連続三振を奪われ、最初の打者13人のうち12人が三振に倒れていた。
「正直、どんな形でもいいから何とか攻略しようと、必死にもがいていた」とロッキーズのコール・キャリッグ外野手は話した。
ミジオロウスキーはその日、100マイル以上の球を66球投げた。これは、投球追跡データの計測開始以降、1試合の最多記録だ。ただ、ロッキーズのウォーレン・シェーファー監督が見ていたのは、スピードガンだけではなかった。
「唯一無二の速球だ。あれだけ打者に近い位置でリリースして、103マイル(約165.8キロ)を投げる。反応するのは難しい。しかも、常にその球を投げてくる」とシェーファー監督は話した。
8月のブレーブス戦では、別の武器が光った。ミジオロウスキーは、幼いころから憧れていたクリス・セールとの投げ合いで6回無失点。セールも「これまで見た中で、おそらく最もすごい速球」と感銘を受けた。ブレーブスのウォルト・ワイス監督は、速球を待っていた打者に何が起きるのかを説明した。
「100マイルに備えているのに、カットボールやスライダーにも対応しなければならない。最も難しい対戦の一つだ」
カブスの鈴木誠也も、6月に対戦したあと、同様の評価を口にしていた。その夜、ミジオロウスキーはピート・クロウ=アームストロングに105.5マイル(約169.8キロ)の速球を投げ込み、2008年の計測開始以降で3位タイとなる球速を記録した。
カブスは9月2日のリグレーフィールドで、ついに攻略の糸口をつかんだ。最初の2イニングで5点を奪い、ミジオロウスキーを4回で降板に追い込み、25試合連続で続いていた自責点3以下の記録を止めた。アレックス・ブレグマンはゾーン低めのスライダーを本塁打にし、102マイル(約164.2キロ)の速球に対しても2点適時打を放った。試合前、カブスのクレイグ・カウンセル監督は突破口を挙げていた。狙うべきはゾーンの低め。高めの速球は、来ると分かっていても打つのが極めて難しいからだ。
「狙い通りに投げられたら、こちらは苦しくなる。素晴らしい投手とは、たいていそういうものだ」とカウンセル監督は話した。
その6日後、カブスは再びミジオロウスキーと対戦した。この日の右腕は最初から全開だった。103.7マイル(約166.9キロ)の速球でクロウ=アームストロングを三振に仕留めると、鈴木との対戦では104.5マイル(約168.2キロ)を記録し、6回1/3を1失点に抑えた。この日の試合で、100マイル以上の投球が今季1000球に到達した。
「それが僕の投げ方だ。相手の打者たちも、それを分かっている」とミジオロウスキーは試合後に話した。
確かに、その通りだ。ニューヨーク、フィラデルフィア、ミネソタ、コロラド、アトランタ、シカゴ、そしてメジャー全体の打者たちは今や、その速球も、投球の角度も、他の球種も理解はしている。
パドレスも独自の攻略プランを携えてやって来るだろう。だが、誰かが実際に打席に立ち、それを実行しなければならない。2026年のナ・リーグのサイ・ヤング賞受賞が確実視されるこの投手を、継続的に攻略できた者はまだいない。
