直近3年のオフシーズンでは、移籍市場の中心となる大物フリーエージェント(FA)が存在した。最初はアーロン・ジャッジ、続いて大谷翔平、そして昨年はフアン・ソトだった。
もちろんカイル・タッカーは素晴らしい選手だが、今回は前述の3人に匹敵するマーケットの軸となる存在はいない。ただし、選手層の厚さという点では、今年の市場は見どころが多い。
MLB.comの46人の識者が、主要FA13人の移籍先予想を行った。以下がその結果である。
カイル・タッカー(右翼手)
1位 ドジャース(50%)
2位 ジャイアンツ(20%)
3位 ヤンキース(13%)
投票者の半数は、今年のナンバーワンFAが、今年のナンバーワンチームへ行くと予想。過去2年ほどドジャースの右翼はテオスカー・ヘルナンデスが務めてきたが、連覇中の王者は彼を左翼へ回し、タッカーを右翼に置くプランが理想的だ。
昨季は負傷により後半戦のパフォーマンスに影響が出たものの、タッカーは136試合で打率.266、出塁率.377、長打率.464、22本塁打、25盗塁、wRC+136と優秀な成績を残した。
その他の得票:カブス、レイズ、アストロズ、ブレーブス、パドレス、フィリーズ
アレックス・ブレグマン(三塁手)
1位 レッドソックス(43%)
2位 タイガース(37%)
3位 カブス(7%)
ブレグマンはレッドソックスとの契約をオプトアウトしたが、最多得票は「ボストン残留」という結果になった。昨年2月、レッドソックスと3年1億2,000万ドル(約180億円)の契約を結んだ一方で、2025年開幕前にはタイガースと「契約間近」だったと明かしており、今回こそデトロイトが射止めるという見方も多い。
31歳の三塁手は、シーズン中盤に右大腿四頭筋の張りで約6週間離脱しながらも、114試合で打率.273、18本塁打、OPS .822。守備も堅実(OAA+3)で、ロッカールームのリーダーとしての存在感も早々に確立した。
その他の得票:ヤンキース、アストロズ、マリナーズ、フィリーズ、ロイヤルズ
カイル・シュワーバー(DH)
1位 フィリーズ(67%)
2位 レッドソックス(13%)
3位 レッズ(11%)
フィリーズのデーブ・ドンブロウスキー野球運営部門社長は、今オフの最優先事項の一つがシュワーバーの再契約だと明言しており、それが実現するという予想が多い。一方で6票はレッドソックス再加入を予想。2021年にナショナルズから移籍した際には、ボストンですぐにファンの人気者となり、41試合で打率.291、出塁率.435、長打率.522を記録した。
その冬に、シュワーバーはフィリーズと4年7900万ドル(約119億円)で契約。レッズはやや伏兵的な候補だが、ワイルドカード進出直後のチームには火力が必要で、オハイオ州出身の大砲がレッズファンとして育った事実に期待した票もあるだろう。
3月で33歳となるシュワーバーは、今回はさらに大型の契約を手にする可能性が高い。2022年以降の本塁打数は187本でナ・リーグトップ。今季は56本塁打、132打点でリーグを牽引した。ハードヒット率59.6%はメジャー1位、バレル率20.8%は3位、スタットキャストのランバリューでは打者で4位だった。
その他の得票:メッツ、ジャイアンツ、タイガース
ボー・ビシェット(遊撃/二塁手)
1位 ブルージェイズ(48%)
2位 ブレーブス(13%)
2位 タイガース(13%)
頂点まであと一歩に迫ったブルージェイズは、フランチャイズの顔であるブラディミール・ゲレーロJr.と長期契約を結んでいる流れを踏まえれば、ビシェットに対しても同様の方針を取ってもおかしくない。
ビシェットは球団のファームでゲレーロJr.とともに育ち、2人は打線の中軸を担う人気者となった。投票者の約半数は再契約を予想。ビシェットはワールドシリーズでは左膝の不調を抱えながら二塁を守り、その気迫のパフォーマンスは、通算打率.294、出塁率.337、長打率.469の実績を持つ28歳のスターに対する評価を一層高め、再契約の可能性を押し上げている。
その他の得票:ドジャース、マリナーズ、ヤンキース、アストロズ、カブス、ジャイアンツ、メッツ、フィリーズ
ピート・アロンソ(一塁手)
1位 メッツ(52%)
2位 レッドソックス(22%)
3位 ジャイアンツ(13%)
メッツ以外のユニフォームを着るアロンソは想像しにくく、過半数が残留を予想している。アロンソがFA市場に出るのは2年連続で、昨年はメッツと2年5400万ドル(約81億円・2025年後にオプトアウト条項付き)で再契約した。
望んでいた長期契約を得られなかった背景には、2024年がアロンソの基準では不本意な成績だったこともある。OPSはキャリア初の.800未満(.788)、本塁打もフル出場シーズンで最低の34本にとどまった。しかし再契約後の2025年は38本塁打、OPS .871と持ち直した。
2016年にメッツから指名されたアロンソは、2019年に新人最多記録の53本塁打で新人王を獲得し、オールスター出場5回。昨年、FAになる前に7年1億5800万ドル(約237億円)の延長オファーを断っているが、結果的にメッツと再契約したことと球団での実績を踏まえると、生え抜きの球団に残るという見立てには十分な説得力がある。
その他の得票:レンジャーズ、ヤンキース、エンゼルス、パドレス
コディ・ベリンジャー(外野/一塁手)
1位 ヤンキース(54%)
2位 ジャイアンツ(11%)
3位タイ メッツ(9%)
3位タイ タイガース(9%)
ベリンジャーは本拠地で打率.302、18本塁打、OPS .909を記録。左打者としての長打力に加え、外野3ポジションと一塁を守れる柔軟性はチームにとって貴重であり、過半数の投票者が残留を予想している。
ドジャース時代の2019年MVPシーズンのようなピークには届かないかもしれないが、ヤンキースでの初年度はそれ以来最高の出来だったと言える。29本塁打、98打点、13盗塁、OPS .814。29本塁打とfWAR4.9はいずれも2017年以来の自己最高で、メジャー全体で18位タイに入った。三振率は13.7%と3年前のドジャース時代(27.3%)から大幅に改善している。
MVPシーズン以降、ベリンジャーのキャリアはまさにジェットコースターだった。2020年にはドジャースの世界一に貢献したが、成績が急降下し、2022年オフにはノンテンダーで放出。翌2023年、カブスで打率.307、26本塁打、OPS .881を記録し、ナ・リーグのカムバック賞を受賞した。
その他の得票:カブス、エンゼルス、フィリーズ、ダイヤモンドバックス
村上宗隆(一塁/三塁/DH)
1位 マリナーズ(46%)
2位 ドジャース(28%)
3位 ヤンキース(9%)
マリナーズは今オフ、一塁手ジョシュ・ネイラーと三塁手エウヘニオ・スアレスをFAで失う可能性があり、村上宗隆の長打力に強い関心を持つと見られる。日本では約75%の試合で三塁を守っており、一塁・三塁の両方をこなせるが、最大の魅力は言うまでもなく圧倒的なパワーだ。
身長188cmの左打者である村上は、NPB通算892試合で246本塁打を放ち、2022年には56本塁打で三冠王に輝いた。2025年は腹斜筋のケガに苦しんだが、わずか56試合で22本塁打、wRC+208という驚異的な数字を残した。比較対象としてはマット・オルソンやラファエル・デバースが挙げられる。
唯一の懸念は空振り率の高さだ。過去2シーズン連続で空振り率36%超を記録しており、2025年に打席数250以上の選手の中で、これより高い数値を残したのはわずか5人しかいない。それを差し引いても、MLB球団による争奪戦になることは間違いない。
その他の得票:ジャイアンツ、パドレス、アストロズ、カブス、メッツ、レッドソックス
フランバー・バルデス(左投手)
1位 ブルージェイズ(26%)
2位タイ アストロズ(20%)
2位タイ メッツ(20%)
8月時点までのバルデスは順調そのものだった。アストロズで21先発・134回を投げ、防御率2.62。しかしシーズン終盤2カ月は苦戦し、10先発で防御率6.05と大きく崩れた。
9月2日の試合で味方捕手の胸に投球を当ててしまうという奇妙な出来事を含め、終盤の不調がFA市場でどれほど影響するかは未知数だが、通算成績を考えれば依然として今オフ注目の先発投手であることに変わりはない。
投票では、アストロズやメッツを僅差で上回ったブルージェイズが最有力とされた。来年こそ戴冠を狙うブルージェイズは、先発陣の多くは2026年も残るが、マックス・シャーザー(41歳)とクリス・バシット(36歳)はFA市場へ。残るのはケビン・ゴースマン、トレイ・イェサべージ、ホセ・ベリオス、シェーン・ビーバーといずれも右腕のみだ。
2026年に32歳を迎えるバルデスは、加入すれば貴重な左腕となる。ゴロ率が高く、シーズン終盤の不調を経てもなお59.4%を維持し、依然としてリーグ屈指の打たせて取る速球が武器だ。
その他の得票:オリオールズ、カブス、カージナルス、エンゼルス、ジャイアンツ、レンジャーズ、レッドソックス、タイガース
ディラン・シース(右投手)
1位 メッツ(30%)
2位 カブス(24%)
3位 オリオールズ(11%)
シースの移籍先として12球団が票を集め、メッツがカブスをわずかに上回って1位。もしカブスが獲得すれば、29歳の右腕にとって2014年にドラフト指名された「原点」へと戻ることになる。
シースは好不調の波が大きい。2022年には184回で防御率2.20、227奪三振を記録し、ア・リーグのサイ・ヤング賞で2位。2024年にはパドレスでナ・リーグの同賞4位に入った。
一方で、2023年と2025年はいずれも防御率4.50を超え、与四球率も10%前後と安定感を欠いた。それでも三振を奪う力は健在で、2021年以降500イニング以上を投げた82投手の中で、9回あたりの三振数11.3はブレイク・スネル(11.8)に次いでメジャー2位。さらに、この5年間で160イニング以上を毎年投げたのはシース、ケビン・ゴースマン、ホセ・ベリオスの3人のみだ。
その他の得票:エンゼルス、ブルージェイズ、ジャイアンツ、フィリーズ、レッドソックス、アストロズ、パドレス、レンジャーズ、タイガース
ルイス・アライズ(内野手)
1位 エンゼルス(28%)
2位 レンジャーズ(15%)
3位 パドレス(13%)
アライズは現代野球では珍しいミート重視で三振を嫌うタイプの打者で、その特徴が移籍先の予想に幅を持たせている。今回の投票でも他のFA選手とは異なり、8球団が複数票を得る接戦となったが、7票を超えたのはエンゼルスのみだった。
エンゼルスで一塁、二塁、またはDHと、どのように起用されるかは明確でないが、2025年にメジャー最多の三振数を記録したチーム事情を考えれば、彼のミート力は大きな魅力となる。
3度のオールスター選出を誇るアライズにとっての課題は、三振の少なさではなく、過去6年間のような総合的な打撃力を取り戻せるかどうかだ。サンディエゴでの初のフルシーズンとなった2025年は、ナ・リーグで2年連続最多安打(181本)を記録したものの、打率は.314から.292に落ち、4年連続の首位打者は逃した。打率と出塁率(.327)はともにキャリア最低で、長打率も2年連続で.392にとどまった。
その他の得票:ジャイアンツ、マリナーズ、レイズ、ロッキーズ、ヤンキース、ブルージェイズ、ブルワーズ、ダイヤモンドバックス、マーリンズ、レッドソックス、タイガース、ツインズ
エウヘニオ・スアレス(三塁手)
1位 マリナーズ(39%)
2位 エンゼルス(15%)
3位 ブルージェイズ(7%)
3位 ロイヤルズ(7%)
トレード期限で古巣シアトルに復帰したスアレスについて、MLB.comの投票者の約4割はマリナーズ残留と予想。愛されるベテランは2022〜23年にマリナーズでプレーし、翌オフにダイヤモンドバックスへ移籍したが、2025年トレード期限直前に再びシアトルへ戻り、チームのポストシーズンでの躍進に貢献した。
マリナーズは昨季、エンゼルスを上回る本塁打数を記録した3チームのうちの1つであり、49本塁打を放ったスアレスが西海岸を南下してアナハイムへ向かう展開も面白い。一方、本塁打数でMLB26位に沈んだロイヤルズにとっては、彼のパワーがより切実に求められるだろう。
問題は、昨夏のトレード以降に成績が落ち込んだ34歳と、マリナーズがどの程度再契約に前向きかである。ダイヤモンドバックスでは106試合で36本塁打、OPS .897を記録したが、マリナーズ復帰後は53試合で13本塁打、OPS .682にとどまった。それでも、2018年以降の本塁打数261本は全MLBで6位に位置し、今も屈指の長距離砲であることに変わりはない。
その他の得票:ダイヤモンドバックス、レッドソックス、タイガース、メッツ、フィリーズ、パイレーツ、アスレチックス、ブルワーズ、カージナルス、レッズ、ヤンキース
エドウィン・ディアス(右投手)
1位 メッツ(70%)
2位 ドジャース(13%)
2位 ヤンキース(13%)
3年前、メッツはディアスと5年1億200万ドル(約153億円・2025年後にオプトアウト条項付き)の契約を結んだ。そして今回、彼がその権利を行使したことで、再びメッツに残るのかが注目されている。投票者の大多数は「イエス」と答えた。
2022年オフと同様、ディアスは最高のタイミングで市場に出た。2025年は自身3度目のオールスターに選出され、66回1/3で28セーブ、防御率1.63、98奪三振と圧倒的な数字を残した。
ワールドベースボールクラシック(WBC)での膝の負傷により2023年を全休し、翌2024年は防御率3.52、27のセーブ機会で7度の失敗という直近2年間からの復活を証明する一年となった。
その他の得票:オリオールズ、レンジャーズ
J.T.リアルミュート(捕手)
1位 フィリーズ(74%)
2位 レンジャーズ(13%)
3位 レッドソックス(4%)
リアルミュートはフィリーズで7シーズンを過ごし、チームの成功を支える中心選手となってきた。したがって、35歳を迎える来季も残留を予想する票が全体の4分の3を占めたのは驚きではない。
再び世界一を狙うフィリーズにとって、同格の捕手候補が球団内外にほとんどいない現状では、信頼の厚いベテランを手放す選択は難しいだろう。
近年は打撃成績が下降傾向にあり、2025年のOPS .700、OPS+91はいずれも2015年マーリンズでの新人年以降で最低だった。
それでも3度のオールスター捕手は依然としてチームの柱であり、34歳の今季も捕手としての先発試合数(132試合)と守備イニング(1,151回1/3)でメジャー最多を記録した。
その他の得票:エンゼルス、パドレス、ツインズ、ヤンキース